講演情報

[15-O-H004-01]尊厳を意識したケアを目指して尊厳を守るという視点をもった排泄支援への取り組み

*山本 俊介1、新垣 塁1、土谷 裕子1 (1. 神奈川県 介護老人保健施設リハビリポート横浜さかえ)
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初歩的な事柄ではあるが、いま一度排泄支援における羞恥心・プライバシーに配慮した支援を行ない、尊厳に対する職員の意識の変化が現れるのか研究した取り組みを報告する。研究の前後に排泄支援の意識についてアンケートを実施し比較した。結果、意識変化の回答も多々見られた。バッグや新聞紙などの導入が分かりやすく意識づけに繋がったことが考えられる。
【はじめに】
介護支援において排泄ケアは最もプライベートで、羞恥心を伴う行為である。しかし、リハビリポート横浜さかえ(ユニット型)では職員間や入居者様に対し排泄に関して他者にも聞こえるような大きな声で会話をしている事や排泄用品を他者にも見える状態で手に持ちながら排泄支援に入る姿も見られ「誰がオムツの使用者なのか」など他人に気付かれないように配慮するということが出来ていなかった。
今回、排泄ケアにおける羞恥心・プライバシーに配慮した排泄ケアへの取り組み、個別での排泄支援を行う事で尊厳に対する職員の意識の変化と排泄への関わりを行うにあたり排泄パターン、排泄用品の見直しにも取り組む。
【研究方法】
 研究前後で職員に向けて排泄支援意識についてアンケートの実施
 必要物品の購入と実施手段の作成
 対象者の排泄パターン調査、適切な排泄用品の見直し
【対象】
 リハビリポート横浜さかえスタッフ
入居様A様 88歳女性 介護度2 日中トイレ誘導 誘導時パッド内失禁多く見られる。
入居様B様 83歳女性 介護度4 日中トイレ誘導 9時・16時の誘導時パッド内失禁多くみられる。
【期間】
令和5年4月~令和5年8月まで
4月 研究前に職員に向けての排泄支援意識についてのアンケートを作成する。
   2階ユニットと3階ユニットから入居者様1名ずつを対象として選出する。
5月 職員向けのアンケートの実施、集計する。   対象者の日勤帯の排泄パターンを調査し、結果から排泄用品と排泄時間を見直す。
   必要物品の購入、意識して排泄支援を行なう為の実施手順の作成を行う。
6月 アンケート結果の発信
   対象者の見直し後、排泄支援の実施。
   実施手順から、排泄支援時に居室へ訪室する際は排泄用品が見えないようにバッグを使用する。
   2階ユニットは自立の方以外の居室トイレからバケツを撤去する。
   排泄関連の会話を他者に聞こえないようにする。ゴミ袋を持ち運ぶ際もバッグを使用する。
7月 見直した排泄パターンについて再調査、必要に応じ排泄時間を調整する。
   研究後職員向けのアンケートを実施。
【結果】
 アンケート
(1)排泄介助の声掛けは他者に聞こえますか?
   取組前 はい 64% いいえ 36%
   取組後 はい 43% いいえ 57%
(2)排泄の有無に関しての会話が他者にきこえますか?
   取組前 はい 73% いいえ 27%
   取組後 はい 14% いいえ 86%
(3)汚れたオムツ類や衣類等を持ち運ぶ際は他者から見えますか?
   取組前 はい 100%
    取組後 はい 29% いいえ 71%
(4)使用する前のオムツ類を持ち運ぶ際は他者から見えますか?
   取組前 はい 90% いいえ 10%
   取組後 はい 43% いいえ 57%
(5)排泄ゴミの袋を持ち運ぶ時に食堂にいる方に見えないよう配慮していますか?
   取組前 はい 64% いいえ 36%
   取組後 はい 100%
(6)トイレに排泄後の物品を置くことで居室内に臭いが漂っていませんか?
   取組前 はい 50% いいえ 50%
   取組後 はい 86% いいえ 14%
(7)現在の排泄時間は利用者様のリズムに合っていると思いますか?
   取組前 はい 64% いいえ36%
   取組後 はい 29% いいえ71%

   B様 尿汚染回数
   取組前 13回
   取組後  1回
【考察】
ケアにおいてはアンケートを通し業務改善を行ったところ、尊厳に対する意識が向上したと考えられる。A様は研究途中ADL低下に伴い実施出来なかったが、B様においては誘導時間を調整したところ午後の失禁回数が減った為、B様の排泄リズムに近づく事が出来たと考えられる。アンケートにおいて、利用者様のリズムに合っているかに対して研究後にいいえが増えた理由として、実施前後に体制が変わったことで対応できない事などがあった為と考えられる。
【まとめ】
排泄ケアは最もプライベートで羞恥心を伴うケアであり、特に配慮が必要にもかかわらず職員の意識が低かったため、配慮が足りていなかった。研究を通して配慮の大切さを再確認することで尊厳に対する職員の意識向上に繋がった。
【参考文献】
「ユニットケアの食事・入浴・排泄ケア」 人権を守る介護ハンドブック
 編者 市川 禮子