講演情報

[15-O-H004-04]施設における排泄委員会の役割と効果

*宮本 聖奈子1、百瀬 瑠美1、岩原 加奈子1、牧 和典1 (1. 長野県 ロングライフ塩尻)
PDFダウンロードPDFダウンロード
当施設では、根拠に基づく排泄ケアの実施、業務の標準化・効率化を目指して「排泄委員会」を立ち上げた。外部アドバイザーの支援の下、委員が利用者毎の「オムツの選択」「着用方法・漏れの実際」を評価しスタッフに指導を行った。委員会の立ち上げから5年が経過し、利用者個々のケア課題を明確にできるようになり、有効事例が経験できたので報告する。
施設における排泄委員会の役割と効果
医療法人元山会 介護老人保健施設 ロングライフ塩尻   
岩原加奈子・百瀬瑠美・牧和典・大沢秀子・冨永早苗・宮本聖奈子
アドバイザー ユニ・チャーム 千野利恵
1 はじめに
当施設では、根拠に基づく排泄ケアの実施、業務の標準化・効率化を目指して「排泄委員会」を立ち上げ、活動してきた。委員会の活動内容は委員が対象者毎に「オムツの選択」や「着用方法・漏れの実際など」を評価し、外部アドバイザーの支援の下、スタッフに指導と排泄業務の標準化を目標に活動した。委員会立ち上げから5年が経過し、ケアの課題を明確にできるようになる等、成果が得られ、有効事例も経験できたので報告する。

2 委員会立ち上げ前の課題
1)排泄ケアが職員個々のやり方にゆだねられており、アセスメントにつながる記録がされていない、方法の違いに対しスタッフに不安が生じる
2)多職種連携は図りにくい
3)夜間の尿漏れ、便漏れが多くなり職員の業務負担につながっている
4)在宅復帰のための取り組みへの意識の差があり統一されていない
5)会議の時間を作れないことが多く定期的な会議開催が行えなかった

3 委員会の実際
1)毎月定例開催とした
2)排泄記録をアセスメント可能なフォーマットに変更した
3)排便にブリストルスケールを導入した
4)委員会内容は現状の課題を抽出し、該当する利用者に対する事例検討を行い改善策を提案、実施評価することになった

4 有効事例紹介
事例1
I様 男性 84歳 脳梗塞・再発性肺炎・老人性掻痒症

【課題】
1) I様は右片麻痺による拘縮が強く、拘縮による左脚の内転状態で、漏れ予防をするためのオムツの当て方を工夫しにくく、尿漏れ便漏れが多い方だった。排便時はその都度全更衣、陰部洗浄、おむつ全取り換えなどフルコースで行うが、だらだらと続く便の為スキントラブルを起こしやすい状況にあった。
2)元々便秘傾向であったがイレウスの疑いがあるということで毎日ピコスルファート22滴飲まれていた。便のコントロールが出来ず泥状便から水様便になってしまいオムツ交換の度に便漏れ、全更衣をしなければいけない状態になり皮膚状態も悪くなった。

【方法】 
1)尿量の測定・オムツ汚染状況チェック表の記載・ブリストルスケールで便の性状の確認・水分の摂取量の確認
2)ピコスルファートの中止。ミヤBM整腸剤の開始。皮膚状態の悪化傾向あり、オムツ交換の度に陰部洗浄を行い皮膚状態の改善を行った。また、委員会開催時にユニ・チャーム担当アドバイザーよりペクチンに含まれる食物繊維についての情報がありペクチンが含まれた紅茶にトロミ剤を加えた飲用を実施した。

【結果】
1)水分摂取量の確認と尿量の確認が出来たことで使用するパットの選定することが出来た。オムツ汚染状況表からどのように漏れるのかわかり漏れてしまいがちな場所に脱脂綿などを入れ漏れないようにする対策が出来た。排泄記録をアセスメント可能なフォーマットにしブリストルスケールを使うことで便の性状が把握しやすく排泄業務の統一を促すことができ業務の標準化を図ることが出来た。
2)ピコスルファートを中止し整腸剤に変更したが便の性状に変化が見られなかった。アドバイザーから情報を頂き実施した紅茶の飲用効果がみられたようで、水様便が減り形を伴う便に変わっていった。また、浣腸で排便を促す日も出てきた。 R3年8月から開始R5年5月 体調不良により入院され評価終了となる。

事例2
O様 女性 79歳 うっ血性心不全・高血圧・日弁膜性心房細動・甲状腺腫・下肢低温火傷
自宅にて低温火傷を受傷され入院。ADLの低下あり。在宅ではほぼ独居となってしまう為R4年4月に入所。入所時はオムツ対応だったがリハビリにて立位安定したため、日中はトイレ誘導へ変更した。尿・便意は曖昧でパット内に失禁あり。定時のトイレ誘導から開始した。排泄動作は下衣を上げ下げすることに介助を要した。徐々に尿・便意を訴えるようになり入所から約2か月後にはパットへの失禁が減り排泄動作も自立。

【課題】
1)夜間トイレに行くことはなく尿量が多い為、1000cc吸収のパットを使用していた。
2)在宅復帰困難の課題があり、以下を目標とした。・昼夜ともにパットの交換が自分でできる・夜間の尿量が多い為、漏れが無いようにする。

【方法】
1)夜間の尿量の測定・オムツ汚染状況チェック表の記載。水分の摂取量の確認。使用パットがあっているか等検証をした。
2)パット交換の方法等をレクチャー、当てる位置等を声掛けや見守りをしながらご自身で当てる練習をしてもらった。

【結果】
当初は夜間のオムツ交換について職員が対応していたが、委員会でパットの評価をし、自分で当てられる簡単装着(テープ付きパット)に変更、後ろ漏れが多いので、パットを後ろの方面に充てる様その都度促してみた。徐々に慣れてくると、職員の見守り無しにうまく充てられるようになり、在宅復帰が可能な状態になった。在宅復帰後は当施設のショートを利用していただくので、在宅での状況をご本人から聞き取るなどし、適宜アドバイスができている。

5 結果・考察
1)外部アドバイザーと協働することにより、新たな知識方法を習得でき、活用できた。
2)委員会という場を設定したことで、情報を共有し評価しスタッフに周知する機会ができ、それまで抱えていた不安が解消され、業務の標準化を図ることが出来た。
3)データが見える化され、自分たちの行動を客観的に評価できる体制(委員会)は重要かつ効果的と思われる。
4)排泄ケアは漏れなければ良いという考え方から大きめのパットを当てていれば良いとされていたが排泄ケアの標準化が図られ根拠の伴う評価が出来、排泄ケアの改善に取り組むことが出来た。またオムツの軽量化がすすみ、コスト面に関しても大きく改善することが出来た。