講演情報
[15-O-H004-05]排泄における日常生活支援トイレ動作の向上を目指して
*高榮 有来1、大藪 里都子1、伊林 幸子1 (1. 大阪府 介護老人保健施設ヴァンベール)
排泄介助方法の見直しを行い、どの利用者にどの支援が効果的なのか傾向を見出せたため報告する。パッドの変更・動作ポスターの掲示・声掛け・動作を待つの4つの支援を日勤・夜勤帯共に実施。その結果、B1・B2ではパッドの交換と夜勤帯での成功率が上昇し、IIa~IIIaではポスター掲示や声替えにより効果を得られた。ADL別・認知度別で支援の効果を認めたが、排尿障害別では個別支援が効果的であることが分かった。
【はじめに】
排泄支援加算の新設以降、当施設でも取り組みを行ってきた。カンファレンスを行い利用者の支援計画を立案し、実施・評価を行っている。排泄支援において個別支援を行うことは必要不可欠と考えるが、排泄には多くの日常生活動作が含まれ、1日の排尿回数は5~7回と言われている。その為私たち介護士が普段実施している一般的な排泄介助方法を見直すことでも排泄支援に貢献できるのではないかと考え、取り組みを行った。その中でどのような利用者にどのような支援が効果的なのか傾向を見出すことができたため、その結果を報告する。
【目的】
見直した排泄介助方法が、どのような利用者に効果があるのかを明確にする
【方法】
[研究期間]令和5年10月~12月
[対象者]38名
排泄支援アセスメントで要支援判定者
障害高齢者の日常生活自立度(以下、ADLとする):A1・A2・B1・B2
認知症高齢者の日常生活自立度(以下、認知度とする):クリア・I・IIa・IIb・IIIa・IIIb
[評価動作項目]「認定調査員テキスト2009改定版の定義による」に準じ評価
・排尿動作 1)下衣下げ 2)下衣上げ 3)排尿
・陰部清拭
・トイレの水洗
・尿取りパッドの交換
[評価方法]できる・声掛けにてできる・できない の3項目
[評価時間帯]日勤帯・夜勤帯
[取り組み方法]
1)支援前評価
2)支援内容の検討
・日勤帯はテープ付きバッドに変更
・排尿動作の順番をポスターで掲示
・介助する前に声掛けを行う
・利用者様の動作を待つ
3)支援内容を2週間実施
4)支援後評価
5)評価結果をADL別、認知度別、尿失禁タイプ別に分けて、評価方法3項目別に集計
6)分析
*評価は各利用者とも不定期で2回評価日を設定し実施
【倫理的配慮】
研究対象利用者には研究の目的・方法・個人情報とプライバシーへの配慮について、口頭で説明し同意を得た。
【結果】
1)ADL別
B1では下衣下げ:63.6%が74.6%、下衣上げ:68.8%が80.2%、排泄:97.2%が98.8%、陰部清拭:75%が100%、トイレ水洗:89.9%が96.9%、パッド交換:31.3%が48.2%。B2では下衣下げ:30.5%が35.4%、下衣上げ:17.4%が21.7%、排泄:84.5%が86%、陰部清拭:49%が59.7%、トイレ水洗:41.3%が44.1%、パッド交換:1.1%が6.5%と、B1・B2では全ての評価項目で成功率の上昇を認めた。日勤・夜勤帯別では、夜勤帯においても全ての項目で実施率の上昇を認めた。特にB1の日勤帯のパッド交換の「できた」が33.3%から60%と26.7%の改善を認めた。
2)認知度別
Iでは下衣下げ:38.9%が40.5%、下衣上げ:33.3%が40.5%、排泄:100%が100%、陰部清拭:66.7%が100%。IIaでは下衣下げ:52.1%が53.8%、下衣上げ:39.7%が42.2%、排泄:84.6%が88%、陰部清拭:58.6%が69.7%。IIbでは下衣下げ:76%が80%、下衣上げ:73.3%が80%、排泄:92%が100%、陰部清拭:90.8%が100%。IIIaでは下衣下げ:13.9%が33.3%、下衣上げ:12%が14.9%、排泄:81.4%が91.3%、陰部清拭:30.8%が41.7%と、I~IIIaで、下衣の上げ下げ・排泄・陰部清拭で成功率の上昇を認めた。IIaでは下衣上げ下げ・陰部清拭・トイレの水洗において、「声掛けにてできる」の成功率が日勤・夜勤帯共に上昇を認めた。IIb・IIIaでは「声掛けにてできる」の効果は認めなかった。
3)尿失禁タイプ別
改善を認める項目もあるが、一連の関連性は認めなかった。
【考察】
1)ADL別
取り組み前は衣類への汚染を考慮し大きいパッドを使用していたため、パッド修正や交換ができず支援が必要となっていた。テープパッドを選択することでパッド全体が視界に入り自己にて装着・修正が可能になったと考える。特にB1・B2は屋内での生活は何らかの介助を要すが、座位を保てる方であるため、見守りの元で安全を確保し、排泄の度に一連の動作を繰り返し実施しすることで動作の獲得を得られたと考える。また夜勤帯は職員数も減る為、排泄介助を行ってしまう傾向にあるが、夜勤帯も支援を継続したことで夜勤帯ですべての項目の値の上昇を認めたと考える。
2)認知度別
I~IIIaで、下衣上げ下げ・排泄・陰部清拭で成功率の上昇を認めたが、トイレ水洗・パッド交換では改善を認めない認知度もあった。トイレ水洗は水洗ボタンの認識が必要となり、パッド交換ではパッドの汚染と交換動作を理解する必要があり改善を認めなかったと考える。IIaは家庭外で日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できるとあり、忘れてしまう動作でも声掛けの支援を受けることで思い出し実施できたと考える。IIb・IIIaでは「声掛けにてできる」での改善は認めなかったが、繰り返し動作を行うとともに動作のポスター掲示をすることで下衣上げ下げ・排泄・陰部清拭での成功率を上昇させることができたと考える。
3)尿失禁タイプ別
改善を認める項目もあるが取り組みによる関連は認めなかった。失禁タイプによる支援は内服治療や骨盤低筋群トレーニング、膀胱訓練等が必要となってくる為、多職種との連携を図った個別支援により改善を認めると考える。
【結論】
B1・B2の利用者へはテープパッドへの変更と夜間帯も支援を継続することで効果を得られる。IIaの利用者へは忘れた動作に対して声掛けを行うことで効果を得られる。IIb・IIIaの利用者へは動作をポスター掲示することで効果を得られる。
排泄支援加算の新設以降、当施設でも取り組みを行ってきた。カンファレンスを行い利用者の支援計画を立案し、実施・評価を行っている。排泄支援において個別支援を行うことは必要不可欠と考えるが、排泄には多くの日常生活動作が含まれ、1日の排尿回数は5~7回と言われている。その為私たち介護士が普段実施している一般的な排泄介助方法を見直すことでも排泄支援に貢献できるのではないかと考え、取り組みを行った。その中でどのような利用者にどのような支援が効果的なのか傾向を見出すことができたため、その結果を報告する。
【目的】
見直した排泄介助方法が、どのような利用者に効果があるのかを明確にする
【方法】
[研究期間]令和5年10月~12月
[対象者]38名
排泄支援アセスメントで要支援判定者
障害高齢者の日常生活自立度(以下、ADLとする):A1・A2・B1・B2
認知症高齢者の日常生活自立度(以下、認知度とする):クリア・I・IIa・IIb・IIIa・IIIb
[評価動作項目]「認定調査員テキスト2009改定版の定義による」に準じ評価
・排尿動作 1)下衣下げ 2)下衣上げ 3)排尿
・陰部清拭
・トイレの水洗
・尿取りパッドの交換
[評価方法]できる・声掛けにてできる・できない の3項目
[評価時間帯]日勤帯・夜勤帯
[取り組み方法]
1)支援前評価
2)支援内容の検討
・日勤帯はテープ付きバッドに変更
・排尿動作の順番をポスターで掲示
・介助する前に声掛けを行う
・利用者様の動作を待つ
3)支援内容を2週間実施
4)支援後評価
5)評価結果をADL別、認知度別、尿失禁タイプ別に分けて、評価方法3項目別に集計
6)分析
*評価は各利用者とも不定期で2回評価日を設定し実施
【倫理的配慮】
研究対象利用者には研究の目的・方法・個人情報とプライバシーへの配慮について、口頭で説明し同意を得た。
【結果】
1)ADL別
B1では下衣下げ:63.6%が74.6%、下衣上げ:68.8%が80.2%、排泄:97.2%が98.8%、陰部清拭:75%が100%、トイレ水洗:89.9%が96.9%、パッド交換:31.3%が48.2%。B2では下衣下げ:30.5%が35.4%、下衣上げ:17.4%が21.7%、排泄:84.5%が86%、陰部清拭:49%が59.7%、トイレ水洗:41.3%が44.1%、パッド交換:1.1%が6.5%と、B1・B2では全ての評価項目で成功率の上昇を認めた。日勤・夜勤帯別では、夜勤帯においても全ての項目で実施率の上昇を認めた。特にB1の日勤帯のパッド交換の「できた」が33.3%から60%と26.7%の改善を認めた。
2)認知度別
Iでは下衣下げ:38.9%が40.5%、下衣上げ:33.3%が40.5%、排泄:100%が100%、陰部清拭:66.7%が100%。IIaでは下衣下げ:52.1%が53.8%、下衣上げ:39.7%が42.2%、排泄:84.6%が88%、陰部清拭:58.6%が69.7%。IIbでは下衣下げ:76%が80%、下衣上げ:73.3%が80%、排泄:92%が100%、陰部清拭:90.8%が100%。IIIaでは下衣下げ:13.9%が33.3%、下衣上げ:12%が14.9%、排泄:81.4%が91.3%、陰部清拭:30.8%が41.7%と、I~IIIaで、下衣の上げ下げ・排泄・陰部清拭で成功率の上昇を認めた。IIaでは下衣上げ下げ・陰部清拭・トイレの水洗において、「声掛けにてできる」の成功率が日勤・夜勤帯共に上昇を認めた。IIb・IIIaでは「声掛けにてできる」の効果は認めなかった。
3)尿失禁タイプ別
改善を認める項目もあるが、一連の関連性は認めなかった。
【考察】
1)ADL別
取り組み前は衣類への汚染を考慮し大きいパッドを使用していたため、パッド修正や交換ができず支援が必要となっていた。テープパッドを選択することでパッド全体が視界に入り自己にて装着・修正が可能になったと考える。特にB1・B2は屋内での生活は何らかの介助を要すが、座位を保てる方であるため、見守りの元で安全を確保し、排泄の度に一連の動作を繰り返し実施しすることで動作の獲得を得られたと考える。また夜勤帯は職員数も減る為、排泄介助を行ってしまう傾向にあるが、夜勤帯も支援を継続したことで夜勤帯ですべての項目の値の上昇を認めたと考える。
2)認知度別
I~IIIaで、下衣上げ下げ・排泄・陰部清拭で成功率の上昇を認めたが、トイレ水洗・パッド交換では改善を認めない認知度もあった。トイレ水洗は水洗ボタンの認識が必要となり、パッド交換ではパッドの汚染と交換動作を理解する必要があり改善を認めなかったと考える。IIaは家庭外で日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できるとあり、忘れてしまう動作でも声掛けの支援を受けることで思い出し実施できたと考える。IIb・IIIaでは「声掛けにてできる」での改善は認めなかったが、繰り返し動作を行うとともに動作のポスター掲示をすることで下衣上げ下げ・排泄・陰部清拭での成功率を上昇させることができたと考える。
3)尿失禁タイプ別
改善を認める項目もあるが取り組みによる関連は認めなかった。失禁タイプによる支援は内服治療や骨盤低筋群トレーニング、膀胱訓練等が必要となってくる為、多職種との連携を図った個別支援により改善を認めると考える。
【結論】
B1・B2の利用者へはテープパッドへの変更と夜間帯も支援を継続することで効果を得られる。IIaの利用者へは忘れた動作に対して声掛けを行うことで効果を得られる。IIb・IIIaの利用者へは動作をポスター掲示することで効果を得られる。