講演情報

[15-O-H004-06]質の高い排泄管理を目指して~トイレセンサー導入の試み~

*安原 尚美1 (1. 岡山県 医療法人福嶋医院介護老人保健施設いるかの家リハビリテーションセンター)
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施設において排泄確認に難渋する例は少なくない。自立している利用者が排便確認できない理由で下剤投与を行うことに疑問を持ち、質の高い排泄管理を目指してトイレセンサー導入を試みた。導入後、排泄状況が明らかになり下剤投薬回数が減少した。対象者の誤認証や記録不十分な事例があり課題もある。効果検証の結果、トイレセンサーは自立度の高い利用者の排泄管理を行う手段の一つとして有効である。
[はじめに]
排泄管理は健康状態を把握するために重要であり、排便回数だけでなく便量や性状、排便パターンを把握、分析することが必要となる。しかしながら、排泄行為は人間の尊厳や羞恥心に大きく影響するものであり、特に排泄自立度の高い利用者の排便確認は難渋する。
当施設の排泄記録方法は排泄自立者においては自己申告を主とし、申告がない者に対しては1日1回聞き取り調査を行ない記録している。当施設入所者53名(男性20名、女性33名)の排泄記録を1か月間分析したところ、比較的自立度の高い者(寝たきり度JもしくはAランク以上、かつ認知症高齢者の日常生活自立度IもしくはIIに該当する者)は全体の約3割を占めており、そのうち3~5日間排便確認ができないものは4割を占めていた。排泄が3日間以上確認できない者に対して下剤投与を行ない管理している現状にある。
日頃の業務を行う中で、比較的自立している利用者が下剤を定期内服しているにも関わらず、排便確認できない理由で下剤投与を行うことに疑問を持ち、質の高い排泄管理を目指してトイレセンサー導入を試みた。
[目的]
自立度の高い入所者に対してトイレセンサーを導入し排泄管理の改善効果を検証し考察する。また、排泄管理が可能となった一例を経験したので報告する。
[方法]
・トイレセンサーについて
トイレセンサーは、介護施設において入所者の尊厳を守りながら介護職員の排泄管理に関わる業務負担を軽減するシステムで、トイレに設置したセンサーが入所者の排泄を自動で検知・通知をし、効率的な利用者の見守りと排泄記録の自動化を行うものである。
[結果]
・排便回数はトイレセンサー導入後に増加し、排泄記録が不十分であったことが明らかになった。
・排泄状況の把握が可能となり、過剰な下剤投与回数が減少した。
・対象の排泄に関するQOL向上につながった。
・対象者の誤認証により、記録が不十分な事例が発生した。
・対象者の事前登録手順の不具合で正確な記録管理ができない事例が発生した。
≪症例紹介≫
年齢:88歳
性別:男性
介護度:要介護1
既往歴:足凍傷(H30)、手凍傷(H30)、硬膜下血腫(R4)
認知症自立度 IIa、寝たきり度 A1、HDS-R 8点
[方法]
1,サニタリートイレセンサー導入前後の排泄記録の比較を行う。
センサー導入前A期(サニタリートイレセンサー導入前 1か月間)
   センサー導入後B期(サニタリートイレセンサー導入後 1か月間)
 排泄回数はセンサー導入前A期に比べセンサー導入後B期で増加した。また、センサー導入後B期の記録より、症例の排便パターンは日中に多く、少量~中等度の便量で頻回に排泄していることが明らかになった。センサー導入後は排便記録が明確になり下剤投薬回数は著明に減少した。
 2,サニタリートイレセンサー導入前後の日常生活状況の比較
・センサー導入前A期
排便確認に難渋し、職員が確認しようとすると拒み憤慨していた。排便確認が3日以上できない場合は下剤投与するも便失禁することが多く、汚染した下着を脱ぎ捨て裸で過ごす頻度が多かった。
・センサー導入後B期
 排便の確認が可能となり下剤投与の回数が減少したことで、便失禁の回数が減り憤慨することが減少した。
[考察]
トイレセンサーは自立度の高い利用者において質の高い排泄管理を行うための手段になりうるが、事前登録の手順不具合や顔認証の誤認により記録不十分な点が課題である。消化管疾患などを有しており便性状の視診が必要な場合などは直接目視で確認する必要がある。腸音の確認や腹部の触診も行いながらトイレセンサーを利用することで自立度の高い入所者や排泄確認に難渋する利用者を対象に業務の効率化や排泄管理が行える。