講演情報
[15-O-H004-07]ブラックボックスを分析し排泄ケアに活かす
*南本 奈緒子1、南本 進也1、大橋 一男2、御所脇 秀子2、圓尾 真奈美3 (1. 京都府 介護老人保健施設 香東園やましな、2. 花王(株) ヒューマンヘルスケア研究所、3. 花王プロフェッショナル・サービス(株) メディカルサポートグ)
当施設はユニット型老健で、個々に合わせたケアを進めている。トイレ誘導するがタイミングが合わず、トイレでの排尿の成功率が低い利用者に、花王が開発した「おむつセンサー」と施設の「観察記録」を用いて、排泄パターンを把握してトイレ誘導の時間帯を決め実施した。また、便秘に対して下剤服用と坐薬を使用していたが、オリゴ糖と食物繊維を摂取したことで、便秘が改善した事を報告する。
1.はじめに
日常生活において、排泄支援は生活の質に繋がる重要なケアである。
排泄は自尊心や羞恥心、身体的・精神的に大きな影響を与える。花王が開発した「おむつセンサー」と施設の「観察記録」を用いて、排泄パターンを把握し、排泄時に合わせたトイレ誘導が出来るように検証した。また、便秘に対しオリゴ糖や食物繊維を摂取することで、便秘が改善できるか検証した。
2.目的
おむつセンサーによるデータと施設の「観察記録」を用いて、排泄パターンを把握し、トイレ誘導の時間をチーム全体で統一。トイレで排泄出来るようになる。また、便秘で下剤の服用と坐薬を挿入しても排便できない状況に対し、オリゴ糖や食物繊維を摂取することで、便秘改善を目指す。
3.対象者
86歳の女性。要介護4。アルツハイマー型認知症。両下肢浮腫(特に左)
便秘(下剤・坐薬使用し-5.6日目の排便)
倫理的に本人・家族の同意が得られている。
4.方法・実施期間
倫理的配慮においては、施設内の倫理委員会の許可を受けた上で進めた。個人情報の取り扱いは個人情報保護法に準じ厳守し、本人の拒否や精神面での変化があれば直ちに試験を中止することに同意を得て研究を行った。
4-1)おむつセンサーと施設の「観察記録」を用いてデータを取る。
2クール実施し、取組前と後を検証し、効果を見る。
(1)センサー装着・実施。小型のセンサーをセンサーシート付き尿とりパッドに取り付け実施。(入浴時は外す)
(2)センサー装着実施した結果の検証を行い、排泄支援を見直し、実施。
(3)再度おむつセンサーを装着し、検証。
1回目
(1)2022年6月22日~6月29日 (3日間のデータを使用)
(2)2022年7月11日 データを元にトイレ誘導の時間・排泄支援について話し合い、取り組んでいく。
(3)2022年8月 2日 (2)の結果を検証。
2回目
(1)2022年8月8日~8月11日 (3日間のデータを使用)
(2)2022年9月2日 1回目で取り組んだ内容が効果あったのか前回と今回のデータを見ながら検証。
4-2)オリゴ糖・食物繊維
2022年6月22日~
オリゴ糖:10時・15時の水分提供時
食物繊維:昼食時の汁物に混ぜ提供
5.結果
5-1)データを元に現状の把握
1回目
日中は排尿量少なく、夜間帯に排尿回数・排尿量が多いことが分かった。
夜間帯(就寝時~起床時)最高で1300gの排尿を確認した日もあった。失禁で衣類交換する日もあり。身体が寝返りで左右に傾いている際にパッドがズレ漏れた可能性あり。夜間帯のパッドの見直し(1400cc→1700cc吸水パッド)を行った。
足の浮腫も日中に排尿がない事と関係性があるのではないかと考え、日中に排尿があるよう、足の水分(足の浮腫)が体に戻るように日中のケアの見直し、夜間の排尿量を減らすことを検証した。
(足浴、30分程の臥床(その時に足の全体が20度くらい上がるように工夫)、座位時にも足の拳上、足の運動)
2回目
排尿回数が夜間帯から日中へと変化している。
夜間帯の尿量も1日目1050g、2日目515g、3日目845g
夜間帯に衣類交換をすることはなかった。
今回の結果で夜間帯パッドを1700cc→1100cc吸水用に変更。
足の浮腫も軽減している。
5-2)日中のトイレ誘導の時間の検討
1回目
6:00(ベッド上)、8:00、12:00、15:00、18:00に排泄ケア行っていたが、その時間帯は排尿のない日が多かった。おむつセンサーのデータを元にトイレ誘導時の間帯と、早朝6時のベッド上でのパッド交換を中止し、全てトイレ誘導に変更した。
起床時・7時半頃、10:00、12:00、寝る前・18:30~19時頃
2回目
排尿が日中へ移行していっている。
データに合わせ時間帯変更する。7:00、11:00、14:00、17:15
5-3)排便
1回目
起床時、毎食後にトイレ誘導し、便座に座ること、またオリゴ糖と食物繊維の提供を習慣化し、取り組んだ。
-2日目で下剤服用、-3日目で坐薬を挿入し排便確認できるようになった。便失禁や多量汚染なし。
2回目
ほぼ毎日普通便が出ている。トイレ誘導で便座に座り、自身でお腹に力を入れ排便できるようになった。
6.考察
データを元に検証し、ケアを見直し実施することで、Sさんの排泄状況は大きく変化した。
1回目のデータ分析で日中に排尿がないこと、夜間帯に排尿が多い事、就寝中身体が左右に傾きパッドがズレ衣類汚染の原因になっていた事等、介入しているが見えていない部分をおむつセンサーと「観察記録」のデータから把握することができた。
日中に排尿があるように排泄支援を変更した結果、2回目の検証では日中に排尿が確認できた。排泄支援で取り組んだ事が日中の排尿、夜間排尿量減少、足の浮腫軽減に繋がったと考えられる。また夜間排尿が減り適切なパッドを選択したことで、尿漏れもなくなった。
便秘症も起床時と毎食後にトイレ誘導し、便座に座る事を習慣化した事や、オリゴ糖と食物繊維を毎日摂取したことで、自然排便へと繋がったと考えられる。
おむつセンサーと施設の「観察記録」と合わせてデータ化することで根拠をもって課題を把握し、チームで統一したケアを実施することができたと考えられる。
7.結論
おむつセンサーと施設の「観察記録」を用いてブラックボックスを分析し、根拠に基づき支援を実施した事、オリゴ糖や食物繊維を摂取した事は、排泄支援を見つける事に成功したと言える。
参考文献
オリゴ糖 ・食物繊維 e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
フラクトオリゴ糖4つの働き フラクトオリゴ糖|株式会社 明治 (meiji.co.jp)
日常生活において、排泄支援は生活の質に繋がる重要なケアである。
排泄は自尊心や羞恥心、身体的・精神的に大きな影響を与える。花王が開発した「おむつセンサー」と施設の「観察記録」を用いて、排泄パターンを把握し、排泄時に合わせたトイレ誘導が出来るように検証した。また、便秘に対しオリゴ糖や食物繊維を摂取することで、便秘が改善できるか検証した。
2.目的
おむつセンサーによるデータと施設の「観察記録」を用いて、排泄パターンを把握し、トイレ誘導の時間をチーム全体で統一。トイレで排泄出来るようになる。また、便秘で下剤の服用と坐薬を挿入しても排便できない状況に対し、オリゴ糖や食物繊維を摂取することで、便秘改善を目指す。
3.対象者
86歳の女性。要介護4。アルツハイマー型認知症。両下肢浮腫(特に左)
便秘(下剤・坐薬使用し-5.6日目の排便)
倫理的に本人・家族の同意が得られている。
4.方法・実施期間
倫理的配慮においては、施設内の倫理委員会の許可を受けた上で進めた。個人情報の取り扱いは個人情報保護法に準じ厳守し、本人の拒否や精神面での変化があれば直ちに試験を中止することに同意を得て研究を行った。
4-1)おむつセンサーと施設の「観察記録」を用いてデータを取る。
2クール実施し、取組前と後を検証し、効果を見る。
(1)センサー装着・実施。小型のセンサーをセンサーシート付き尿とりパッドに取り付け実施。(入浴時は外す)
(2)センサー装着実施した結果の検証を行い、排泄支援を見直し、実施。
(3)再度おむつセンサーを装着し、検証。
1回目
(1)2022年6月22日~6月29日 (3日間のデータを使用)
(2)2022年7月11日 データを元にトイレ誘導の時間・排泄支援について話し合い、取り組んでいく。
(3)2022年8月 2日 (2)の結果を検証。
2回目
(1)2022年8月8日~8月11日 (3日間のデータを使用)
(2)2022年9月2日 1回目で取り組んだ内容が効果あったのか前回と今回のデータを見ながら検証。
4-2)オリゴ糖・食物繊維
2022年6月22日~
オリゴ糖:10時・15時の水分提供時
食物繊維:昼食時の汁物に混ぜ提供
5.結果
5-1)データを元に現状の把握
1回目
日中は排尿量少なく、夜間帯に排尿回数・排尿量が多いことが分かった。
夜間帯(就寝時~起床時)最高で1300gの排尿を確認した日もあった。失禁で衣類交換する日もあり。身体が寝返りで左右に傾いている際にパッドがズレ漏れた可能性あり。夜間帯のパッドの見直し(1400cc→1700cc吸水パッド)を行った。
足の浮腫も日中に排尿がない事と関係性があるのではないかと考え、日中に排尿があるよう、足の水分(足の浮腫)が体に戻るように日中のケアの見直し、夜間の排尿量を減らすことを検証した。
(足浴、30分程の臥床(その時に足の全体が20度くらい上がるように工夫)、座位時にも足の拳上、足の運動)
2回目
排尿回数が夜間帯から日中へと変化している。
夜間帯の尿量も1日目1050g、2日目515g、3日目845g
夜間帯に衣類交換をすることはなかった。
今回の結果で夜間帯パッドを1700cc→1100cc吸水用に変更。
足の浮腫も軽減している。
5-2)日中のトイレ誘導の時間の検討
1回目
6:00(ベッド上)、8:00、12:00、15:00、18:00に排泄ケア行っていたが、その時間帯は排尿のない日が多かった。おむつセンサーのデータを元にトイレ誘導時の間帯と、早朝6時のベッド上でのパッド交換を中止し、全てトイレ誘導に変更した。
起床時・7時半頃、10:00、12:00、寝る前・18:30~19時頃
2回目
排尿が日中へ移行していっている。
データに合わせ時間帯変更する。7:00、11:00、14:00、17:15
5-3)排便
1回目
起床時、毎食後にトイレ誘導し、便座に座ること、またオリゴ糖と食物繊維の提供を習慣化し、取り組んだ。
-2日目で下剤服用、-3日目で坐薬を挿入し排便確認できるようになった。便失禁や多量汚染なし。
2回目
ほぼ毎日普通便が出ている。トイレ誘導で便座に座り、自身でお腹に力を入れ排便できるようになった。
6.考察
データを元に検証し、ケアを見直し実施することで、Sさんの排泄状況は大きく変化した。
1回目のデータ分析で日中に排尿がないこと、夜間帯に排尿が多い事、就寝中身体が左右に傾きパッドがズレ衣類汚染の原因になっていた事等、介入しているが見えていない部分をおむつセンサーと「観察記録」のデータから把握することができた。
日中に排尿があるように排泄支援を変更した結果、2回目の検証では日中に排尿が確認できた。排泄支援で取り組んだ事が日中の排尿、夜間排尿量減少、足の浮腫軽減に繋がったと考えられる。また夜間排尿が減り適切なパッドを選択したことで、尿漏れもなくなった。
便秘症も起床時と毎食後にトイレ誘導し、便座に座る事を習慣化した事や、オリゴ糖と食物繊維を毎日摂取したことで、自然排便へと繋がったと考えられる。
おむつセンサーと施設の「観察記録」と合わせてデータ化することで根拠をもって課題を把握し、チームで統一したケアを実施することができたと考えられる。
7.結論
おむつセンサーと施設の「観察記録」を用いてブラックボックスを分析し、根拠に基づき支援を実施した事、オリゴ糖や食物繊維を摂取した事は、排泄支援を見つける事に成功したと言える。
参考文献
オリゴ糖 ・食物繊維 e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
フラクトオリゴ糖4つの働き フラクトオリゴ糖|株式会社 明治 (meiji.co.jp)