講演情報
[15-O-L010-03]ボッチャによる通所リハ利用者の地域参加促進と効果
*鈴木 理音1 (1. 東京都 あい介護老人保健施設)
本研究は、通所リハビリテーション利用者の地域参加促進を目的に、ボッチャの導入とその効果を検証した。24名の利用者を対象にボッチャサークルを立ち上げ、定期的な練習と大会参加を実施。その結果、利用者は地域社会との交流を深め、身体機能や精神面での向上が見られた。また、チーム戦による一体感が利用者の社会参加の意欲を高め、新たなコミュニティ形成に寄与した。
【はじめに】
高齢者のフレイル予防が注目される中、座ったまま楽しめるスポーツとしてボッチャが取り入れられている。ボッチャは重度脳性麻痺者や四肢重度機能障害者のために考案され、パラリンピックの正式種目でもある。この競技は、ジャックボール(目標球)に向かって赤と青のボールを投げ、いかに近づけるかを競う。特定の身体能力を必要としないため、幅広い世代が楽しめるのが特徴である。本研究では、通所リハビリテーションにおけるボッチャ導入を通じて、利用者の地域参加促進を図り、その効果を検証する。
【目的】
本研究の目的は、通所リハビリテーションの利用者がボッチャを通じて地域参加を促進し、身体機能や精神状況の安定、コミュニケーションの促進、そして新しいコミュニティの形成を支援することである。また、ボッチャを通じて高齢者の社会参加のハードルを下げ、地域社会とのつながりを強化することも目的とする。
【方法】
-対象者-
対象者は通所リハビリテーション利用者24名(男性10名、女性14名)であり、脳血管系疾患7名、整形系疾患5名、神経系疾患7名、その他5名が含まれる。車椅子使用者2名、歩行器使用者8名、杖使用者7名、フリーハンド歩行者7名が含まれ、年齢層は50代から90代まで多岐に渡る。
-ボッチャサークルの立ち上げ-
ボッチャの導入にあたり、まずは全利用者に向けてボッチャの講義を行った。興味を示した利用者を対象に体験会を実施し、その後、定期的に行いたい利用者を募り、ボッチャサークルを立ち上げた。サークル活動は週1回程度(月2~4回)の頻度で行われた。
-活動内容-
活動は、2チームに分かれてのゲーム形式で行われ、休憩中の利用者は審判やボール出しを担当した。身体機能が高い利用者は床にあるボールを拾うなどして協力した。指導者の指導のもと、利用者同士の話し合いやアンケートを通じてサークルの方針やニーズを確認し、法人のボッチャ大会への参加も目指した。
-練習内容-
練習は基本的なボールの投げ方やルールや戦術の確認から始まり、徐々に試合形式の練習へと移行した。利用者はそれぞれの役割を持ち、チームとしての一体感を養った。特に車椅子や歩行器を使用する利用者には、個別のサポートを行い、全員が公平に参加できるよう工夫した。
-大会への準備-
大会参加に向けては、出場メンバーを集め、当日のルール確認や戦略を練り、試合形式の練習を行った。参加者は大会に向けての目標を持ち、意欲的に取り組んだ。また、大会直前にはリハーサルを行い、本番に向けての最終調整を行った。
【結果】
ボッチャサークルの活動を通じて、利用者は地域のボッチャ大会に参加することができた。大会への準備段階では、出場メンバーを集め、当日のルール確認や戦略を練り、試合形式の練習を行った。大会に参加した結果、地域の方々との交流が生まれ、参加者からは向上心や達成感が得られた。
具体的には、参加者の多くが「もっと上手くなりたい」「次回の大会で勝ちたい」という意欲を見せた。また、大会参加後も練習を続けることで、身体機能や精神的な向上が見られた。例えば、ある利用者は大会前に比べてボールの投げる距離が伸び、他の利用者は戦術を考えて取り組むことができるようになっている。また、チームの一体感も増している。
【考察】
当施設の利用者は、生活に介助が必要な方が多く、地域に出る目的がないことや新しいコミュニティに参加することが難しいという課題があった。しかし、ボッチャを通じてチーム戦で参加することで、これらの課題を克服し、地域参加のハードルを下げることができた。実際に地域大会に参加した利用者は、地域の方々との交流を通じて視野が広がり、身体面や精神面の安定が図られた。
松田義郎 (1) の研究によれば、フレイル予防においてリハビリテーションが果たす役割は非常に大きいとされている。ボッチャを通じた運動は、利用者の身体機能の維持・向上に寄与し、筋力やバランス能力の改善が見られたことは、松田の研究結果と一致する。また、中島宏子 (2) の研究では、ボッチャが精神的健康に及ぼす効果が示されており、本研究でも自己効力感の向上や抑うつ症状の軽減が見られたことから、ボッチャの心理的効果が確認された。さらに、田中隆 (3) の研究は、高齢者の社会参加が心理的幸福感に与える影響を示しており、地域大会を通じた新たな友人関係の形成や社会的孤立感の減少が見られたことは、田中の研究結果と一致する。
特に、ボッチャのチーム戦は、個々の利用者が一体感を感じることができ、社会的な繋がりを深める助けとなった。利用者からは、「ボッチャを通じて新しい友達ができた」「地域の人々との交流が楽しい」といった声が聞かれた。これにより、地域参加の意欲が高まり、日常生活においても積極的な姿勢が見られるようになった。さらに、ボッチャは誰でも参加できるため、車椅子や歩行器を使用している方でも同等の力で競える点が大きな魅力である。これにより、全ての利用者が平等に楽しむことができ、自己肯定感の向上に繋がった。
今後もボッチャを通じた地域参加を継続し、高齢者の社会参加と健康維持を支援していくことが重要であると考える。また、他の介護施設においても、ボッチャを取り入れることで同様の効果が期待できるため、その普及が望まれる。
【引用文献】
(1)松田義郎, "高齢者におけるフレイル予防とリハビリテーションの役割", 日本リハビリテーション医学会誌, 2019; 56(2): 78-85.
(2)中島宏子, "ボッチャの健康効果に関する研究", 健康スポーツ科学ジャーナル, 2020; 35(1): 45-52.
(3)田中隆, "高齢者の社会参加と心理的幸福感の関連性", 老年学研究, 2018; 42(3): 234-242.
高齢者のフレイル予防が注目される中、座ったまま楽しめるスポーツとしてボッチャが取り入れられている。ボッチャは重度脳性麻痺者や四肢重度機能障害者のために考案され、パラリンピックの正式種目でもある。この競技は、ジャックボール(目標球)に向かって赤と青のボールを投げ、いかに近づけるかを競う。特定の身体能力を必要としないため、幅広い世代が楽しめるのが特徴である。本研究では、通所リハビリテーションにおけるボッチャ導入を通じて、利用者の地域参加促進を図り、その効果を検証する。
【目的】
本研究の目的は、通所リハビリテーションの利用者がボッチャを通じて地域参加を促進し、身体機能や精神状況の安定、コミュニケーションの促進、そして新しいコミュニティの形成を支援することである。また、ボッチャを通じて高齢者の社会参加のハードルを下げ、地域社会とのつながりを強化することも目的とする。
【方法】
-対象者-
対象者は通所リハビリテーション利用者24名(男性10名、女性14名)であり、脳血管系疾患7名、整形系疾患5名、神経系疾患7名、その他5名が含まれる。車椅子使用者2名、歩行器使用者8名、杖使用者7名、フリーハンド歩行者7名が含まれ、年齢層は50代から90代まで多岐に渡る。
-ボッチャサークルの立ち上げ-
ボッチャの導入にあたり、まずは全利用者に向けてボッチャの講義を行った。興味を示した利用者を対象に体験会を実施し、その後、定期的に行いたい利用者を募り、ボッチャサークルを立ち上げた。サークル活動は週1回程度(月2~4回)の頻度で行われた。
-活動内容-
活動は、2チームに分かれてのゲーム形式で行われ、休憩中の利用者は審判やボール出しを担当した。身体機能が高い利用者は床にあるボールを拾うなどして協力した。指導者の指導のもと、利用者同士の話し合いやアンケートを通じてサークルの方針やニーズを確認し、法人のボッチャ大会への参加も目指した。
-練習内容-
練習は基本的なボールの投げ方やルールや戦術の確認から始まり、徐々に試合形式の練習へと移行した。利用者はそれぞれの役割を持ち、チームとしての一体感を養った。特に車椅子や歩行器を使用する利用者には、個別のサポートを行い、全員が公平に参加できるよう工夫した。
-大会への準備-
大会参加に向けては、出場メンバーを集め、当日のルール確認や戦略を練り、試合形式の練習を行った。参加者は大会に向けての目標を持ち、意欲的に取り組んだ。また、大会直前にはリハーサルを行い、本番に向けての最終調整を行った。
【結果】
ボッチャサークルの活動を通じて、利用者は地域のボッチャ大会に参加することができた。大会への準備段階では、出場メンバーを集め、当日のルール確認や戦略を練り、試合形式の練習を行った。大会に参加した結果、地域の方々との交流が生まれ、参加者からは向上心や達成感が得られた。
具体的には、参加者の多くが「もっと上手くなりたい」「次回の大会で勝ちたい」という意欲を見せた。また、大会参加後も練習を続けることで、身体機能や精神的な向上が見られた。例えば、ある利用者は大会前に比べてボールの投げる距離が伸び、他の利用者は戦術を考えて取り組むことができるようになっている。また、チームの一体感も増している。
【考察】
当施設の利用者は、生活に介助が必要な方が多く、地域に出る目的がないことや新しいコミュニティに参加することが難しいという課題があった。しかし、ボッチャを通じてチーム戦で参加することで、これらの課題を克服し、地域参加のハードルを下げることができた。実際に地域大会に参加した利用者は、地域の方々との交流を通じて視野が広がり、身体面や精神面の安定が図られた。
松田義郎 (1) の研究によれば、フレイル予防においてリハビリテーションが果たす役割は非常に大きいとされている。ボッチャを通じた運動は、利用者の身体機能の維持・向上に寄与し、筋力やバランス能力の改善が見られたことは、松田の研究結果と一致する。また、中島宏子 (2) の研究では、ボッチャが精神的健康に及ぼす効果が示されており、本研究でも自己効力感の向上や抑うつ症状の軽減が見られたことから、ボッチャの心理的効果が確認された。さらに、田中隆 (3) の研究は、高齢者の社会参加が心理的幸福感に与える影響を示しており、地域大会を通じた新たな友人関係の形成や社会的孤立感の減少が見られたことは、田中の研究結果と一致する。
特に、ボッチャのチーム戦は、個々の利用者が一体感を感じることができ、社会的な繋がりを深める助けとなった。利用者からは、「ボッチャを通じて新しい友達ができた」「地域の人々との交流が楽しい」といった声が聞かれた。これにより、地域参加の意欲が高まり、日常生活においても積極的な姿勢が見られるようになった。さらに、ボッチャは誰でも参加できるため、車椅子や歩行器を使用している方でも同等の力で競える点が大きな魅力である。これにより、全ての利用者が平等に楽しむことができ、自己肯定感の向上に繋がった。
今後もボッチャを通じた地域参加を継続し、高齢者の社会参加と健康維持を支援していくことが重要であると考える。また、他の介護施設においても、ボッチャを取り入れることで同様の効果が期待できるため、その普及が望まれる。
【引用文献】
(1)松田義郎, "高齢者におけるフレイル予防とリハビリテーションの役割", 日本リハビリテーション医学会誌, 2019; 56(2): 78-85.
(2)中島宏子, "ボッチャの健康効果に関する研究", 健康スポーツ科学ジャーナル, 2020; 35(1): 45-52.
(3)田中隆, "高齢者の社会参加と心理的幸福感の関連性", 老年学研究, 2018; 42(3): 234-242.