講演情報
[15-O-L011-02]通所リハにおけるお休みを減らす新たな取り組み「3本の矢」作戦による利用者様と職員の意識向上
*幅 将夫1 (1. 千葉県 介護老人保健施設フェルマータ船橋)
1-2時間型(以下短時間デイとする)の通所リハビリでお休みを減らす事を目的とし新たな取り組みを3か月」行ないその結果を報告する。実施期間は2024年7月~9月とする。内容はスタンプラリー・フロアBGM変更・リハビリ開始前のトーク、準備体操とする。利用者様が目標に近づくための環境づくりを考え実践したので報告する。
【背景】
当施設は1998年開設。2012年に「在宅強化型」を取得し船橋市内にある老健14施設のうち、老健で短時間デイだけで運営しているのは当施設のみとなる。
短時間デイは1-2時間で(1)10:30~11:30(2)13:15~14:15(3)14:30~15:30の1日3回転。1回定員32名。1日96名定員である。
当施設はリハビリテーションに特化した短時間デイとして運営を行っている。運営開始直後の2015年は1日30名弱の利用者数であったが、2017年には一日80名を超える利用者様が利用となり、1日の稼働率は80%を達成するまでに至った。2020年のコロナウィルスによる緊急事態宣言、老健入所者によるクラスター発生に伴い受入れ人数を制限し感染対策を行いながら運営を継続してきたが稼働率60%前半まで落ちることとなった。
【目的】利用者の目標、夢の達成の為にお休みを減らす新たな取り組みを行ない、利用者様と職員の意識向上において一定の成果が出たので報告する。
【方法】近年の稼働率の推移の調査とお休み理由の詳細な精査を行い職員間で課題の抽出を行った。『目標』『コミュニケーション』『回想』の角度から(1)スタンプラリー(2)BGMの変更(3)開始前のトーク準備体操を「3本の矢」作戦として実施した。
≪稼働率の推移≫コロナ禍前の2019年とコロナ禍の2020年、コロナが第5類となった以降の2024年との比較当施設の稼働率の目標は70%。2019年7月は稼働率80.9%コロナ禍の2020年7月には稼働率64.7%まで落ち込み直近の2024年4月では69.3%である。
≪お休みする理由≫体調不良、入院、受診、私用
・私用の中でも突発的な当日キャンセルは約29%を占める(2024年4月と5月の平均)
上記に対して行ってきたお休みに対するアプローチ
・体調不良でお休みが続く場合フォローを含め、こまめな電話連絡で体調確認を行う。
・定期受診が重なる場合利用日、利用時間の変更を勧める。
・入院が長期化する場合ケアマネジャーを通して一か月ごとの状態の確認。
・私用のお休みの場合利用者様との会話で可能な限り、お休みする理由を伺い都合の良い時間での振替を提案する。上記のようにお休みの対策ではなく、お休みをした後の対応を中心に行ってきた。
【結果】
【1】スタンプラリー利用者様:「スタンプを全部押してもらえるように頑張るわ」と声があった。一か月の自分の利用回数が目に見える為、積極的に振替を行うようになった。職員:どの職員にも一人ひとりの出席が一目で分かる為、振替を勧める、励ましの言葉が必然と出るようになった。
【2】フロア内BGM変更利用者の世代に合わせた1970年台をベースに誰もが知っているヒット曲とし、利用者同士や職員との会話の接点となり「コミュニケーション」が図れるようにした。人生の中でもポイントになる時期を回想する瞬間となり「あの頃のように歩きたい」と気持ちが前向きに。リハビリに通うたびに「回想」「記憶力」「コミュニケーション」が増す場所と考えた。利用者:自分の生活歴などを職員と話すことで共感してもらえたと満足度が上がった。職員:音楽を通して利用者様と会話をする機会が増えた。利用者の背景を再認識する機会となった。
【3】リハビリ開始前のトーク・準備運動利用者:トークや体操に集中し、立ち上がって体操する方もいた。リハビリへ気持ちを向けることが出来た。職員:利用者が集中しているため、振替のご案内や普段の生活の中で注意する事など日々のトピックスを伝えることが出来た。
【考察】利用開始直後は目標達成に向け意欲的だった利用者も月日の経過とともに、気持ちの維持が難しくなってくる。家族の思いが優先で利用開始となった利用者もいる。それらの利用者に対して、
(1)目の前に小さな目標を提示し、目標達成の喜びを味わっていただく事。
(2)認知症・独居・身体状況・日常生活における不安を訴え通所が困難になっている状況に対し、傾聴しコミュニケーションが図れる事。
(3)お休みの電話、リハビリに来所された際の会話・対応がどの職員も変わらず同じ温度での対応している事が必要ではないか?今回のお休みを無くすためのアイデアはあくまで枝葉であり、リハビリに来る事が楽しくなる事を目的としたが根幹ではない。職員が同じ情報量で同じ熱量で対応を継続していくことが、お休みを少なくしていくための基本的実践だと考える。今までこうした対応を苦手としていた職員も、積極的に取り組みに参加する姿もあり職員側にとっても大きな意識向上がみられた。
【展望】デイケアを利用する目的はあくまでも利用者様自身のADL向上。その先にある夢や希望に近づく事であり在宅生活における不安材料を軽減させるためのリハビリである。継続したリハビリを行うことが利用開始時に立てた目標に近づく一番の近道である。利用者様のリハビリに対する気持ちを維持させ続けることが、短時間デイケアの介護職員の仕事の一つと考える。私たちデイケア介護職員に出来ることは利用者が夢に近づくための環境づくり、心配り、働きかけだと感じる。
休まず利用する事で利用者様自身が疼痛緩和やADL向上を実感できること。夢に近づいたと感じること。リハビリテーションの介入はないが、リハビリの必要性・重要性を感じていただける環境づくりを介護職の役割として一同で共有していきたい。
当施設は1998年開設。2012年に「在宅強化型」を取得し船橋市内にある老健14施設のうち、老健で短時間デイだけで運営しているのは当施設のみとなる。
短時間デイは1-2時間で(1)10:30~11:30(2)13:15~14:15(3)14:30~15:30の1日3回転。1回定員32名。1日96名定員である。
当施設はリハビリテーションに特化した短時間デイとして運営を行っている。運営開始直後の2015年は1日30名弱の利用者数であったが、2017年には一日80名を超える利用者様が利用となり、1日の稼働率は80%を達成するまでに至った。2020年のコロナウィルスによる緊急事態宣言、老健入所者によるクラスター発生に伴い受入れ人数を制限し感染対策を行いながら運営を継続してきたが稼働率60%前半まで落ちることとなった。
【目的】利用者の目標、夢の達成の為にお休みを減らす新たな取り組みを行ない、利用者様と職員の意識向上において一定の成果が出たので報告する。
【方法】近年の稼働率の推移の調査とお休み理由の詳細な精査を行い職員間で課題の抽出を行った。『目標』『コミュニケーション』『回想』の角度から(1)スタンプラリー(2)BGMの変更(3)開始前のトーク準備体操を「3本の矢」作戦として実施した。
≪稼働率の推移≫コロナ禍前の2019年とコロナ禍の2020年、コロナが第5類となった以降の2024年との比較当施設の稼働率の目標は70%。2019年7月は稼働率80.9%コロナ禍の2020年7月には稼働率64.7%まで落ち込み直近の2024年4月では69.3%である。
≪お休みする理由≫体調不良、入院、受診、私用
・私用の中でも突発的な当日キャンセルは約29%を占める(2024年4月と5月の平均)
上記に対して行ってきたお休みに対するアプローチ
・体調不良でお休みが続く場合フォローを含め、こまめな電話連絡で体調確認を行う。
・定期受診が重なる場合利用日、利用時間の変更を勧める。
・入院が長期化する場合ケアマネジャーを通して一か月ごとの状態の確認。
・私用のお休みの場合利用者様との会話で可能な限り、お休みする理由を伺い都合の良い時間での振替を提案する。上記のようにお休みの対策ではなく、お休みをした後の対応を中心に行ってきた。
【結果】
【1】スタンプラリー利用者様:「スタンプを全部押してもらえるように頑張るわ」と声があった。一か月の自分の利用回数が目に見える為、積極的に振替を行うようになった。職員:どの職員にも一人ひとりの出席が一目で分かる為、振替を勧める、励ましの言葉が必然と出るようになった。
【2】フロア内BGM変更利用者の世代に合わせた1970年台をベースに誰もが知っているヒット曲とし、利用者同士や職員との会話の接点となり「コミュニケーション」が図れるようにした。人生の中でもポイントになる時期を回想する瞬間となり「あの頃のように歩きたい」と気持ちが前向きに。リハビリに通うたびに「回想」「記憶力」「コミュニケーション」が増す場所と考えた。利用者:自分の生活歴などを職員と話すことで共感してもらえたと満足度が上がった。職員:音楽を通して利用者様と会話をする機会が増えた。利用者の背景を再認識する機会となった。
【3】リハビリ開始前のトーク・準備運動利用者:トークや体操に集中し、立ち上がって体操する方もいた。リハビリへ気持ちを向けることが出来た。職員:利用者が集中しているため、振替のご案内や普段の生活の中で注意する事など日々のトピックスを伝えることが出来た。
【考察】利用開始直後は目標達成に向け意欲的だった利用者も月日の経過とともに、気持ちの維持が難しくなってくる。家族の思いが優先で利用開始となった利用者もいる。それらの利用者に対して、
(1)目の前に小さな目標を提示し、目標達成の喜びを味わっていただく事。
(2)認知症・独居・身体状況・日常生活における不安を訴え通所が困難になっている状況に対し、傾聴しコミュニケーションが図れる事。
(3)お休みの電話、リハビリに来所された際の会話・対応がどの職員も変わらず同じ温度での対応している事が必要ではないか?今回のお休みを無くすためのアイデアはあくまで枝葉であり、リハビリに来る事が楽しくなる事を目的としたが根幹ではない。職員が同じ情報量で同じ熱量で対応を継続していくことが、お休みを少なくしていくための基本的実践だと考える。今までこうした対応を苦手としていた職員も、積極的に取り組みに参加する姿もあり職員側にとっても大きな意識向上がみられた。
【展望】デイケアを利用する目的はあくまでも利用者様自身のADL向上。その先にある夢や希望に近づく事であり在宅生活における不安材料を軽減させるためのリハビリである。継続したリハビリを行うことが利用開始時に立てた目標に近づく一番の近道である。利用者様のリハビリに対する気持ちを維持させ続けることが、短時間デイケアの介護職員の仕事の一つと考える。私たちデイケア介護職員に出来ることは利用者が夢に近づくための環境づくり、心配り、働きかけだと感じる。
休まず利用する事で利用者様自身が疼痛緩和やADL向上を実感できること。夢に近づいたと感じること。リハビリテーションの介入はないが、リハビリの必要性・重要性を感じていただける環境づくりを介護職の役割として一同で共有していきたい。