講演情報
[15-O-L011-04]動的活動性向上を目的とした通所リハビリの取り組み集団体操から自主訓練の意識づけを図る
*望月 悦子1、鈴木 大輔1、楯 陽子1、矢田 崇之1、榊原 里奈1、高木 美弥妃1 (1. 静岡県 介護老人保健施設静岡徳洲苑)
当通所リハビリにおいて、余暇時間の活動性は個人差が大きく、より個別性のあるリハビリの提供のため、自主的な動的活動の強化が課題と感じていた。リハビリにて集団体操を取り入れ、活動にどのような変化があるかを調査した。結果、動的活動時間の向上や身体機能の改善の効果がみられた。集団体操を行ったことで利用者の交流の場が拡大、意欲が改善し行動変容に繋がったことで、動的活動時間や身体機能の改善が得られたと考えた。
【目的】
当通所リハビリテーションでは、個別訓練を中心としたリハビリを提供し、余暇時間に声かけにてパワーリハビリマシンを利用した自主訓練や歩行訓練等の動的活動を促していた。しかし、自主訓練が可能な利用者でも余暇時間は塗り絵等のテーブルでの静的な卓上作業活動が中心となる場合もあり、動的活動時間には個人差が大きかった。当通所リハビリは定員18名、担当セラピスト1名と小規模の体制で行っており、限られた人員や時間の中でADLやIADLの改善を目指した、より質の良いリハビリを提供するため、余暇時間の活用と動的活動時間の向上が課題と感じていた。
そこで、運動機会を増加させ自主訓練の意識づけや習慣づけを図ることで、余暇時間の活動が変化し、動的活動時間が増加できるのではないかと考え、リハビリの一環として小集団での集団体操を取り入れた。集団体操やサーキットトレーニング等の効果として身体機能改善効果があることは多くの報告がなされているが、活動性の変化についての報告は少ない。集団体操が身体機能だけでなく自主的な動的活動にどのような変化があるかを調査した。
【方法】
対象は当通所リハビリ利用者のうち、自主訓練が可能な18名(男性4名、女性14名)とした。平均年齢は84.2歳、長谷川式認知機能評価は23.1点(±6.9)、日常生活自立度(Barthel Index)は84.4点(±14.4点)であった。
集団体操は、4~5名の小集団に分けて実施し、座位での四肢筋力訓練(肩関節屈曲、体幹側屈・回旋・前傾、股関節屈曲、膝関節伸展、足関節背屈・底屈)、起立動作訓練、立位バランス訓練等の全身運動を、利用時間中に1回約20分間実施した。また、個別リハビリは集団体操とは別に実施し、集団体操やリハビリ以外の時間は引き続き声かけでの自主訓練の促しを行った。自主訓練は多職種にて利用者毎の身体機能やリスクに合わせて内容を検討、注意点等を情報共有し声掛けや見守りを行った。
活動時間の評価については卓上動作や物理療法、読書、他利用者との談話等の静的活動と自主的な歩行訓練やマシントレーニングの実施等の動的活動に分け、通所リハビリ利用時間の行動を検者が目視にて観察評価し時間を計測した。集団体操や個別リハビリ、入浴やトイレ等の時間は省き、余暇活動時間における活動について評価を行った。また、活動時間のデータは利用者毎に2日分計測し、平均値を用いた。身体機能の評価項目は左右握力、大腿四頭筋筋力、通常および最大10m歩行速度、TUGとした。実施期間は4月~6月の3ヶ月間とし、介入前後での各評価項目を比較し、身体機能評価の統計解析は対応あるt検定を用いた。
【結果】
介入前後にて、通所リハビリ利用中の平均静的活動時間は106分から57.5分に減少(卓上作業-33分、物理療法-3分、読書-6分、談話-8分)、中央値も108分から60分に減少した。平均動的活動時間は35分から51分に増加(歩行訓練+6分、マシントレーニング+10分)、中央値も21分から56分に増加した。身体機能評価は右握力が+1.29kg、左握力が+1.32kg、大腿四頭筋筋力が+3.6kg、通常10m歩行速度が-2.06秒、最大10m歩行速度が-2.11秒、TUGが-2.15秒と全項目において平均値が改善し、このうち左右握力、大腿四頭筋筋力、TUGに有意差が認められた(T<0.05)
【考察】
通所リハビリにて集団体操を取り入れることで、余暇時間の動的活動時間が増加し、身体機能も改善されるという結果が得られた。特に中央値の向上が大きく、これまで動的活動時間は個人差が大きかったが、集団体操実施後は多くの対象者が積極的に取り組むようになったことが示された。
この要因として、利用者の行動変容が一因だと考えた。集団体操の場をリハビリ訓練スペースで行うことで、これまでテーブル周囲で行われていた利用者同士でのコミュニケーションがテーブルだけでなく、リハビリ訓練スペース周囲でも行われる様子が認められた。セラピストや利用者同士での交流が活発となり、リハビリや自主訓練に関する会話を行う等、コミュニケーションを取りながら自主訓練を行うことが多くなった。集団体操自体の効果としては、先行研究が示す通り筋力訓練の特異性の原理や反復性の原則から筋力を中心に改善が得られた。交流の場の拡大を主とした環境の変化が利用者の行動変容を促し、マシントレーニング等の自主的な動的活動時間の増加したことで、3ケ月の短期間でも有意に身体機能改善効果が表れたと考えた。
今回の調査では、集団体操を行う事で動的活動時間の増加や身体機能が改善されるという結果が得られた。これは交流の場が拡大し利用者全体の意欲が向上、動的活動時間が増加したことによる相乗効果によるものと考えた。しかし、集団体操は実施しても積極的に交流に参加する様子が認められず、動的活動時間の向上に繋がらなかった対象者も存在した。コミュニケーションは個人要素が強く出やすく、利用者の社交性に合わせたアプローチ方法の検討が必要と考えた。今後、集団体操や積極的な自主訓練の流れを定着させることで、セラピストはより個別性を高めた訓練を提供し、ADLやIADLの改善、ひいてはリハビリの質の向上に繋げていきたいと考えた。
当通所リハビリテーションでは、個別訓練を中心としたリハビリを提供し、余暇時間に声かけにてパワーリハビリマシンを利用した自主訓練や歩行訓練等の動的活動を促していた。しかし、自主訓練が可能な利用者でも余暇時間は塗り絵等のテーブルでの静的な卓上作業活動が中心となる場合もあり、動的活動時間には個人差が大きかった。当通所リハビリは定員18名、担当セラピスト1名と小規模の体制で行っており、限られた人員や時間の中でADLやIADLの改善を目指した、より質の良いリハビリを提供するため、余暇時間の活用と動的活動時間の向上が課題と感じていた。
そこで、運動機会を増加させ自主訓練の意識づけや習慣づけを図ることで、余暇時間の活動が変化し、動的活動時間が増加できるのではないかと考え、リハビリの一環として小集団での集団体操を取り入れた。集団体操やサーキットトレーニング等の効果として身体機能改善効果があることは多くの報告がなされているが、活動性の変化についての報告は少ない。集団体操が身体機能だけでなく自主的な動的活動にどのような変化があるかを調査した。
【方法】
対象は当通所リハビリ利用者のうち、自主訓練が可能な18名(男性4名、女性14名)とした。平均年齢は84.2歳、長谷川式認知機能評価は23.1点(±6.9)、日常生活自立度(Barthel Index)は84.4点(±14.4点)であった。
集団体操は、4~5名の小集団に分けて実施し、座位での四肢筋力訓練(肩関節屈曲、体幹側屈・回旋・前傾、股関節屈曲、膝関節伸展、足関節背屈・底屈)、起立動作訓練、立位バランス訓練等の全身運動を、利用時間中に1回約20分間実施した。また、個別リハビリは集団体操とは別に実施し、集団体操やリハビリ以外の時間は引き続き声かけでの自主訓練の促しを行った。自主訓練は多職種にて利用者毎の身体機能やリスクに合わせて内容を検討、注意点等を情報共有し声掛けや見守りを行った。
活動時間の評価については卓上動作や物理療法、読書、他利用者との談話等の静的活動と自主的な歩行訓練やマシントレーニングの実施等の動的活動に分け、通所リハビリ利用時間の行動を検者が目視にて観察評価し時間を計測した。集団体操や個別リハビリ、入浴やトイレ等の時間は省き、余暇活動時間における活動について評価を行った。また、活動時間のデータは利用者毎に2日分計測し、平均値を用いた。身体機能の評価項目は左右握力、大腿四頭筋筋力、通常および最大10m歩行速度、TUGとした。実施期間は4月~6月の3ヶ月間とし、介入前後での各評価項目を比較し、身体機能評価の統計解析は対応あるt検定を用いた。
【結果】
介入前後にて、通所リハビリ利用中の平均静的活動時間は106分から57.5分に減少(卓上作業-33分、物理療法-3分、読書-6分、談話-8分)、中央値も108分から60分に減少した。平均動的活動時間は35分から51分に増加(歩行訓練+6分、マシントレーニング+10分)、中央値も21分から56分に増加した。身体機能評価は右握力が+1.29kg、左握力が+1.32kg、大腿四頭筋筋力が+3.6kg、通常10m歩行速度が-2.06秒、最大10m歩行速度が-2.11秒、TUGが-2.15秒と全項目において平均値が改善し、このうち左右握力、大腿四頭筋筋力、TUGに有意差が認められた(T<0.05)
【考察】
通所リハビリにて集団体操を取り入れることで、余暇時間の動的活動時間が増加し、身体機能も改善されるという結果が得られた。特に中央値の向上が大きく、これまで動的活動時間は個人差が大きかったが、集団体操実施後は多くの対象者が積極的に取り組むようになったことが示された。
この要因として、利用者の行動変容が一因だと考えた。集団体操の場をリハビリ訓練スペースで行うことで、これまでテーブル周囲で行われていた利用者同士でのコミュニケーションがテーブルだけでなく、リハビリ訓練スペース周囲でも行われる様子が認められた。セラピストや利用者同士での交流が活発となり、リハビリや自主訓練に関する会話を行う等、コミュニケーションを取りながら自主訓練を行うことが多くなった。集団体操自体の効果としては、先行研究が示す通り筋力訓練の特異性の原理や反復性の原則から筋力を中心に改善が得られた。交流の場の拡大を主とした環境の変化が利用者の行動変容を促し、マシントレーニング等の自主的な動的活動時間の増加したことで、3ケ月の短期間でも有意に身体機能改善効果が表れたと考えた。
今回の調査では、集団体操を行う事で動的活動時間の増加や身体機能が改善されるという結果が得られた。これは交流の場が拡大し利用者全体の意欲が向上、動的活動時間が増加したことによる相乗効果によるものと考えた。しかし、集団体操は実施しても積極的に交流に参加する様子が認められず、動的活動時間の向上に繋がらなかった対象者も存在した。コミュニケーションは個人要素が強く出やすく、利用者の社交性に合わせたアプローチ方法の検討が必要と考えた。今後、集団体操や積極的な自主訓練の流れを定着させることで、セラピストはより個別性を高めた訓練を提供し、ADLやIADLの改善、ひいてはリハビリの質の向上に繋げていきたいと考えた。