講演情報
[15-O-L011-06]加算の活用でHOPEの実現を目指す天王寺へ買い物に行くために
*田窪 志帆1 (1. 大阪府 介護老人保健施設アロンティアクラブ)
「天王寺へ買い物に行きたい」というHOPEを持つ症例を担当した。短期集中リハビリテーション実施加算と生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定し、HOPE実現を目指した。身体機能や精神面の一進一退となったが、1人で病院に行く目標を間に挟むことで本氏の自身や意欲向上に繋がった。同行者がいるものの、天王寺に行くことが出来た。いくつかの課題は残っている為、1人で行ける様引き続き支援をしていく。
【はじめに】
当通所リハビリテーション(以下、デイケア)を利用し、開始時より「天王寺へ買い物に行きたい」というHOPEがあった症例を担当した。利用当初より短期集中リハビリテーション実施加算を経て、生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定し、HOPE実現を目指した為ここに報告する。
【症例】
本症例は、腰椎椎間板炎と診断された70代の女性である。既往歴は、両変形性膝関節症である。入院し抗生剤治療後、Th12-15の固定術、L2/3の洗浄術を施行した。回復期病棟にてリハビリテーション加療後、自宅退院された。X年Y月に当デイケアを利用開始し、週2回短期集中リハビリテーション実施加算を算定し3カ月間リハビリテーションを実施した。その後、「電車に乗って天王寺へ行きたい」というHOPEを実現する為、生活行為向上リハビリテーション実施加算を開始した。なお、発表にあたり、利用者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し、本氏から書面にて同意を得た。
【経過と結果】
今回、本症例が当デイケアを開始し、短期集中リハビリテーション実施加算にて身体機能の向上を目標にしたY+2月までを第1期、生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定し、1人で病院に行くことを目標にしたY+3~5月を第2期、天王寺まで1人で行くことを目標にしたY+5~7月を第3期と設定した。
第1期のADLは、独居であり身の回りのことは概ね自立していた。洗濯や掃除は、週2回訪問介護にて行っていた。また、ほぼ毎日のように近くのスーパー(約400m)へ買い物に行っていた。FAIは15点であった。身体機能面はシルバーカー歩行にて5m歩行が6.8秒、TUGが17.6秒。片脚立位は右5.6秒、左3.3秒であった。ダーメンコルセットを着用するも、腰痛を認めていた。リハビリテーションの内容は、疼痛コントロールをしつつ筋力増強訓練やバランス訓練を中心に行った。
第2期の身体機能面は5m歩行が6.8秒、TUGが17秒であり何れも独歩にて可能であった。片脚立位も右11秒、左18秒と向上を認めていた。6分間歩行試験は、歩行器にて170m可能であった。HOPEの実現に向けて、まずはかかりつけの病院まで電車を利用して次回受診日の約3ヵ月後までに1人で行く事を目標とし、同行する計画を立てた。同行1回目は、現状評価をする為セラピスト1名と学生1名で行った。電車に乗る事が久しぶりであり、終始気分が高揚し話し続けていた。その為、今後1人で行く事を想定した行動が出来ていなかった。また、シルバーカーを持ち上げて電車へ乗車する際にややふらつきを認めた。駅から病院までは、比較的安定して歩行可能であったが歩行者や車等周囲への配慮が不十分であった。以降、デイケアではシルバーカーの持ち上げ訓練やバランス訓練、屋外歩行訓練を行い、道順やEVの位置を確認した。同行2回目は、セラピスト1名にて同行した。前回の反省にて、出来るだけ話をせず1人で行っている想定で実施した。道中ポイントとなる場所をスマートフォンにて写真を撮り、道順を覚えられるように促した。電車へ乗車する際のシルバーカーの持ち上げはふらつきなく可能であった。電車乗車中は、すぐに乗り換えが出来る様に立ったままで行くと本氏より提案があった。シルバーカーを支持し、壁にもたれることで安定して保持可能であった。屋外歩行の際も以前より周囲に注意を向けることが可能であった。この日以降、リハビリテーション中に写真を見返しながら道順の確認を行い、乗換駅の確認をした。受診日までの間は妹と2人で1回、1人で1回練習を行った。最終的に1人で受診することが出来た。
第3期に入り、病院へ1人で行くようになって以降、何度も行く事が出来ており、活動量が増えていた。一方、活動量が増えると同時に、外出後や当デイケア利用時には腰痛の増加や疲労を訴える事が多くなった。身体機能面や精神面の低下も認めたものの、一進一退しながらも外出する機会が増える事で徐々に本氏の自信やHOPE実現に向けた意欲が高まっていった。身体機能面は、独歩にて5m歩行が6.5秒、TUGが15.3秒であった。片脚立位は、右3.2秒左26秒であった。6分間歩行試験は、歩行器にて200m歩行可能であり、生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定する前に比べて、身体機能の向上傾向を認めている。FAIは22点と、介入当初に比べて7点向上した。その後、セラピスト1名と学生2名の同行にて、 HOPEである天王寺まで行くことが出来た。入院前はよく行かれていた為、乗換方法や行きたい店までの道順は把握されておりスムーズに行く事が出来た。助言はほとんどせず、周囲への配慮や耐久性も十分であった。しかし、長時間歩くと血圧が高値になる事や人通りが多い事に関する恐怖感がある等の課題が残った。その為、今後は病院付近にある商店街やスーパーに行き、長時間の歩行や人通りが多い所に慣れて行く事とした。残り1ヵ月の生活行為向上リハビリテーション加算の算定期間にて課題を解消し、最終1人で行くことが出来るよう引き続き支援していく。
【考察】
本症例のように、入院や手術を契機にADLが低下し、廃用症候群等の機能障害を呈したまま自宅退院を強いられるケースは珍しくない。興味関心等のHOPEに加えて元々の日課が困難な状況において、今回のような短期集中リハビリテーション実施加算及び生活行為向上リハビリテーション実施加算の組み合わせが非常に有効であると考えられる。概ね長期的な期間をもって、計画的かつ段階的な目標設定が出来たため、身体機能や精神面の一進一退となる状況においても柔軟に対応が出来た。その中で、スモールステップで目標をクリアしていく事で自信や意欲向上に繋がった。また、ご家族様の支援があったことも目標達成に至った理由と考える。
当通所リハビリテーション(以下、デイケア)を利用し、開始時より「天王寺へ買い物に行きたい」というHOPEがあった症例を担当した。利用当初より短期集中リハビリテーション実施加算を経て、生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定し、HOPE実現を目指した為ここに報告する。
【症例】
本症例は、腰椎椎間板炎と診断された70代の女性である。既往歴は、両変形性膝関節症である。入院し抗生剤治療後、Th12-15の固定術、L2/3の洗浄術を施行した。回復期病棟にてリハビリテーション加療後、自宅退院された。X年Y月に当デイケアを利用開始し、週2回短期集中リハビリテーション実施加算を算定し3カ月間リハビリテーションを実施した。その後、「電車に乗って天王寺へ行きたい」というHOPEを実現する為、生活行為向上リハビリテーション実施加算を開始した。なお、発表にあたり、利用者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し、本氏から書面にて同意を得た。
【経過と結果】
今回、本症例が当デイケアを開始し、短期集中リハビリテーション実施加算にて身体機能の向上を目標にしたY+2月までを第1期、生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定し、1人で病院に行くことを目標にしたY+3~5月を第2期、天王寺まで1人で行くことを目標にしたY+5~7月を第3期と設定した。
第1期のADLは、独居であり身の回りのことは概ね自立していた。洗濯や掃除は、週2回訪問介護にて行っていた。また、ほぼ毎日のように近くのスーパー(約400m)へ買い物に行っていた。FAIは15点であった。身体機能面はシルバーカー歩行にて5m歩行が6.8秒、TUGが17.6秒。片脚立位は右5.6秒、左3.3秒であった。ダーメンコルセットを着用するも、腰痛を認めていた。リハビリテーションの内容は、疼痛コントロールをしつつ筋力増強訓練やバランス訓練を中心に行った。
第2期の身体機能面は5m歩行が6.8秒、TUGが17秒であり何れも独歩にて可能であった。片脚立位も右11秒、左18秒と向上を認めていた。6分間歩行試験は、歩行器にて170m可能であった。HOPEの実現に向けて、まずはかかりつけの病院まで電車を利用して次回受診日の約3ヵ月後までに1人で行く事を目標とし、同行する計画を立てた。同行1回目は、現状評価をする為セラピスト1名と学生1名で行った。電車に乗る事が久しぶりであり、終始気分が高揚し話し続けていた。その為、今後1人で行く事を想定した行動が出来ていなかった。また、シルバーカーを持ち上げて電車へ乗車する際にややふらつきを認めた。駅から病院までは、比較的安定して歩行可能であったが歩行者や車等周囲への配慮が不十分であった。以降、デイケアではシルバーカーの持ち上げ訓練やバランス訓練、屋外歩行訓練を行い、道順やEVの位置を確認した。同行2回目は、セラピスト1名にて同行した。前回の反省にて、出来るだけ話をせず1人で行っている想定で実施した。道中ポイントとなる場所をスマートフォンにて写真を撮り、道順を覚えられるように促した。電車へ乗車する際のシルバーカーの持ち上げはふらつきなく可能であった。電車乗車中は、すぐに乗り換えが出来る様に立ったままで行くと本氏より提案があった。シルバーカーを支持し、壁にもたれることで安定して保持可能であった。屋外歩行の際も以前より周囲に注意を向けることが可能であった。この日以降、リハビリテーション中に写真を見返しながら道順の確認を行い、乗換駅の確認をした。受診日までの間は妹と2人で1回、1人で1回練習を行った。最終的に1人で受診することが出来た。
第3期に入り、病院へ1人で行くようになって以降、何度も行く事が出来ており、活動量が増えていた。一方、活動量が増えると同時に、外出後や当デイケア利用時には腰痛の増加や疲労を訴える事が多くなった。身体機能面や精神面の低下も認めたものの、一進一退しながらも外出する機会が増える事で徐々に本氏の自信やHOPE実現に向けた意欲が高まっていった。身体機能面は、独歩にて5m歩行が6.5秒、TUGが15.3秒であった。片脚立位は、右3.2秒左26秒であった。6分間歩行試験は、歩行器にて200m歩行可能であり、生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定する前に比べて、身体機能の向上傾向を認めている。FAIは22点と、介入当初に比べて7点向上した。その後、セラピスト1名と学生2名の同行にて、 HOPEである天王寺まで行くことが出来た。入院前はよく行かれていた為、乗換方法や行きたい店までの道順は把握されておりスムーズに行く事が出来た。助言はほとんどせず、周囲への配慮や耐久性も十分であった。しかし、長時間歩くと血圧が高値になる事や人通りが多い事に関する恐怖感がある等の課題が残った。その為、今後は病院付近にある商店街やスーパーに行き、長時間の歩行や人通りが多い所に慣れて行く事とした。残り1ヵ月の生活行為向上リハビリテーション加算の算定期間にて課題を解消し、最終1人で行くことが出来るよう引き続き支援していく。
【考察】
本症例のように、入院や手術を契機にADLが低下し、廃用症候群等の機能障害を呈したまま自宅退院を強いられるケースは珍しくない。興味関心等のHOPEに加えて元々の日課が困難な状況において、今回のような短期集中リハビリテーション実施加算及び生活行為向上リハビリテーション実施加算の組み合わせが非常に有効であると考えられる。概ね長期的な期間をもって、計画的かつ段階的な目標設定が出来たため、身体機能や精神面の一進一退となる状況においても柔軟に対応が出来た。その中で、スモールステップで目標をクリアしていく事で自信や意欲向上に繋がった。また、ご家族様の支援があったことも目標達成に至った理由と考える。