講演情報
[15-O-L012-05]利用者と家族を繋ぐカレンダープロジェクト
*海老原 綾人1、佐々木 由佳2、柴 隆広3、河原 典子2、秋澤 尚実1、浦野 友彦3 (1. 栃木県 介護老人施設 マロニエ苑、2. 居宅介護支援事業所マロニエ苑、3. 学校法人国際医療福祉大学病院 老年病科)
当通所リハビリテーションでは作業療法の一環で、利用者と作成した季節の壁紙を写真に収め作成する「カレンダープロジェクト」に取り組んでいる。作業工程では利用者の主体性を引き出す制作会議の実施や個々の心身機能に合わせた分業の工夫をしている。また、カレンダーにし配布することで家族にも見える形になり、利用者の更なる達成感や家族との会話が増える等の効果が得られているので事例を踏まえながら紹介する。
「はじめに」
当通所リハビリテーションでは作業療法(以下、OT)の一環で、季節の壁紙を作成し、できあがったものを写真に収めカレンダーにして配布する「カレンダープロジェクト」がある。この活動により通所の活動が利用者・家族に見える形になり、利用者の更なる達成感や、家族との会話が増える等の効果が見られたので活動の詳細を報告する。
【活動紹介】
「カレンダープロジェクト」では季節のテーマに沿って貼り絵や塗り絵、スタンピング等により掲示物を作成し、施設で掲示するとともに制作物を記録として収めカレンダーにして配布している。当施設ではこの活動を10年以上行っていて好評を頂いている。また、制作活動には多数の利用者に参加しているが、参加しない人も毎年恒例のカレンダーに興味を持ち、出来栄えにご意見や感想をいただくなど、利用者・スタッフ間のコミュニケーションに繋がっている。
【方法】制作会議:2か月に1度会議には5~10人で行い、季節のトピックをあげてもらって制作物を決定する。
利用者間で話し合いが上手く進まない時にOTは季節を連想するワードで誘導する。例えば「外に咲いている花はなんですか?」「ピンクの花が咲いていますがそれはなんですか?」など季節の植物に繋がるものやその月の行事等をヒントとして出していく。そこで出たアイデアをもとに利用者間の意見が多かったものや利用者間で共感が多かったものなどで制作物を決定する。
制作:制作は10~15人ほどで行っている。各自の能力に差がある時には分業にしたり、利用者一人一つ作品を作り、個々の作品を組み合わせることで一つの形にしたりするなど工夫をすることで各々の達成感が得られるようにしている。
カレンダーづくり:制作物を施設に掲示するとともに写真に収める。写真を使用し壁掛けのカレンダーをパソコンで作成し、コピーしたものをまとめスタッフが手作りのカレンダーに仕上げる。活動全体の様子:制作に取り組んでいる利用者は女性が多く、世間話などをしながらコミュニケーションをとっている。直接的な制作活動に関わらなくても、外部から声掛けなどをして活動を気にかけてくれる男性利用者が多い。中にはカレンダー配布後には紙をめくりやすいように「切り取り線があった方がいい」とご意見を寄せてくれる方もおり、カレンダーづくりに活かされている。
【事例紹介】
一般情報:A氏、80代女性、要介護1で通所を週2回利用している。娘夫婦と3人暮らし。
病歴:ANCA関連血管炎により末期腎不全である。夜間帯に腹膜透析を行っている。MMSEは12/30点で通所利用した時のエピソードも覚えていられなかった。日常生活動作は一部介助が必要な状況であった。FIMは合計点103点(運動項目76点・認知項目27点)であった。経過:通所利用の目的としては健康状態の変化により心身機能の低下の恐れがあるため機能を維持し、在宅生活を継続するために利用していた。病状が悪化にするに伴って利用中の様子は疲労感が強く傾眠傾向となっていった。元々穏やかな性格ではあるが、徐々に険しい顔つきも見られるようになり、移動手段も杖歩行から車椅子になっていた。
制作時の様子とその後:制作時は覚醒が良く、周りの他利用者と会話をしながら取り組んでいた。周りの利用者も同性ということもあり気さくに声を掛け合いA氏にも笑顔が見られる場面もあった。しかし、認知機能が低下しているために制作に参加したことは覚えていない。そのような状況の中、カレンダープロジェクトの一環で毛糸で作ったクリスマスツリーのオーナメントとクリスマスカードづくりを行った。カードには日頃の家族への思いを綴り “いつもありがとう”と書くことが出来た。帰宅する際にオーナメントとクリスマスカードを持ち帰り主たる介護者である娘に渡した。娘は「ありがとうございます。嬉しいです。A氏が活動を行えていることも分かり良かったです。」と話されて嬉し涙を流していた。その後カレンダーが完成し、一年間制作で関わってくれていた旨も添えてカレンダーを配布した。その後もご家族より喜びの声が聞かれた。
考察
通所リハ通いの場であるために、施設内での活動が十分にご家族に伝わらないこともある。その中で制作物を写真にとり見える形で配布することは活動紹介や利用者の頑張りを伝える方法となっていると考えられた。今回の事例ではA氏の病状が進行によりできることが徐々に失われていく家族の不安に対して、通所での頑張る様子や普段口にしないA氏の気持ちを家族に伝えることが出来た。それにより家族に安心感を与え家族間の関係をより良くすることに繋がったと考えられた。
まとめ
「カレンダープロジェクト」は当施設では定着した活動として複数の利用者が参加しているが、カレンダー自体はスタッフが作成している。
今後の展開としては利用者が全行程において参入できるようにしていき、利用者が主役の「カレンダープロジェクト」にしていきたい。
当通所リハビリテーションでは作業療法(以下、OT)の一環で、季節の壁紙を作成し、できあがったものを写真に収めカレンダーにして配布する「カレンダープロジェクト」がある。この活動により通所の活動が利用者・家族に見える形になり、利用者の更なる達成感や、家族との会話が増える等の効果が見られたので活動の詳細を報告する。
【活動紹介】
「カレンダープロジェクト」では季節のテーマに沿って貼り絵や塗り絵、スタンピング等により掲示物を作成し、施設で掲示するとともに制作物を記録として収めカレンダーにして配布している。当施設ではこの活動を10年以上行っていて好評を頂いている。また、制作活動には多数の利用者に参加しているが、参加しない人も毎年恒例のカレンダーに興味を持ち、出来栄えにご意見や感想をいただくなど、利用者・スタッフ間のコミュニケーションに繋がっている。
【方法】制作会議:2か月に1度会議には5~10人で行い、季節のトピックをあげてもらって制作物を決定する。
利用者間で話し合いが上手く進まない時にOTは季節を連想するワードで誘導する。例えば「外に咲いている花はなんですか?」「ピンクの花が咲いていますがそれはなんですか?」など季節の植物に繋がるものやその月の行事等をヒントとして出していく。そこで出たアイデアをもとに利用者間の意見が多かったものや利用者間で共感が多かったものなどで制作物を決定する。
制作:制作は10~15人ほどで行っている。各自の能力に差がある時には分業にしたり、利用者一人一つ作品を作り、個々の作品を組み合わせることで一つの形にしたりするなど工夫をすることで各々の達成感が得られるようにしている。
カレンダーづくり:制作物を施設に掲示するとともに写真に収める。写真を使用し壁掛けのカレンダーをパソコンで作成し、コピーしたものをまとめスタッフが手作りのカレンダーに仕上げる。活動全体の様子:制作に取り組んでいる利用者は女性が多く、世間話などをしながらコミュニケーションをとっている。直接的な制作活動に関わらなくても、外部から声掛けなどをして活動を気にかけてくれる男性利用者が多い。中にはカレンダー配布後には紙をめくりやすいように「切り取り線があった方がいい」とご意見を寄せてくれる方もおり、カレンダーづくりに活かされている。
【事例紹介】
一般情報:A氏、80代女性、要介護1で通所を週2回利用している。娘夫婦と3人暮らし。
病歴:ANCA関連血管炎により末期腎不全である。夜間帯に腹膜透析を行っている。MMSEは12/30点で通所利用した時のエピソードも覚えていられなかった。日常生活動作は一部介助が必要な状況であった。FIMは合計点103点(運動項目76点・認知項目27点)であった。経過:通所利用の目的としては健康状態の変化により心身機能の低下の恐れがあるため機能を維持し、在宅生活を継続するために利用していた。病状が悪化にするに伴って利用中の様子は疲労感が強く傾眠傾向となっていった。元々穏やかな性格ではあるが、徐々に険しい顔つきも見られるようになり、移動手段も杖歩行から車椅子になっていた。
制作時の様子とその後:制作時は覚醒が良く、周りの他利用者と会話をしながら取り組んでいた。周りの利用者も同性ということもあり気さくに声を掛け合いA氏にも笑顔が見られる場面もあった。しかし、認知機能が低下しているために制作に参加したことは覚えていない。そのような状況の中、カレンダープロジェクトの一環で毛糸で作ったクリスマスツリーのオーナメントとクリスマスカードづくりを行った。カードには日頃の家族への思いを綴り “いつもありがとう”と書くことが出来た。帰宅する際にオーナメントとクリスマスカードを持ち帰り主たる介護者である娘に渡した。娘は「ありがとうございます。嬉しいです。A氏が活動を行えていることも分かり良かったです。」と話されて嬉し涙を流していた。その後カレンダーが完成し、一年間制作で関わってくれていた旨も添えてカレンダーを配布した。その後もご家族より喜びの声が聞かれた。
考察
通所リハ通いの場であるために、施設内での活動が十分にご家族に伝わらないこともある。その中で制作物を写真にとり見える形で配布することは活動紹介や利用者の頑張りを伝える方法となっていると考えられた。今回の事例ではA氏の病状が進行によりできることが徐々に失われていく家族の不安に対して、通所での頑張る様子や普段口にしないA氏の気持ちを家族に伝えることが出来た。それにより家族に安心感を与え家族間の関係をより良くすることに繋がったと考えられた。
まとめ
「カレンダープロジェクト」は当施設では定着した活動として複数の利用者が参加しているが、カレンダー自体はスタッフが作成している。
今後の展開としては利用者が全行程において参入できるようにしていき、利用者が主役の「カレンダープロジェクト」にしていきたい。