講演情報

[15-O-L013-01]科学的根拠に基づいた卓球療法で予防効果の実感を~効果が分かれば心が動く、心が動けば身体が動く~

*吉国 親吾1、長縄 伸幸1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設サンバレーかかみ野)
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高齢者に対する卓球リハビリの効果に着目し卓球療法を法人全体で実施している。「活動と参加」「担い手・役割の創出」に繋がる行動変容が見られた事例や卓球を通じた地域内でのコミュニティとして活用も拡がっている事例が多数ある為報告する。現状の体力測定に加え、具体的数値がでる評価システムで効果を可視化、数値化を試みた。具体的な効果を実感して頂く事でモチベーションが向上したと考える。
【はじめに】私どもフェニックスグループは2002年岐阜県五感健康法モデル事業に採用されてから卓球療法の取り組みを開始して、今年度で22年を迎える。導入開始時より、卓球の高齢者に対するリハビリ効果に着目し、リクリエーションの一環として漫然と楽しむ事も大切であるが、その効果について科学的検証を行い、介護予防及び機能訓練の一環とする事を重点に置いている。更には、脳血管疾患の方の機能訓練の手段として卓球療法を積極的に取り入れ、利用者様自身が自分の効果が視える評価を検討、実施を試みてきた。「活動と参加」「担い手・役割の創出」に繋がる行動変容も見られた事例も多数あり地域活性に繋がっている。本大会では、その事例を紹介すると共に、今後の卓球療法を法人全体でブラッシュアップし対象者別に様々な用途で展開していく為の経過を報告する。【現況】法人スタッフの中には、日本卓球療法協会から認定される卓球療法士が多く在籍し活躍の場を広げている。卓球を行うインフラは、老人保健施設サンバレーかかみ野を拠点として市内8箇所の各通所施設に拡がり、卓球台保有台数は22台、卓球マシーンを7台揃えている。卓球療法で機能訓練をされているご利用者は法人全体で約450名であり、ボランティア様の協力を頂きながら要介護者も積極的に参加されている。また、卓球を媒介としたアウトリーチの手段として、老人保健施設サンバレーかかみ野や地域密着型複合施設プラザ&メゾンではボランティアグループによる協力を得て、学童保育の卓球体験や交流の場にもなっている。健康増進施設メディカルフィットネスQ10、総合事業通所サービス型AであるCom.Doパークサイドテラスでは卓球を通じて地域内でのコミュニティとして活用も拡がっている。【取り組み】既に、これまでの研究発表により、卓球による立位バランス能力と共に反射神経等の運動機能、精神的機能が改善することは実証済であり、現在はその根拠に基づき利用者様の身体状況やニーズに合わせて様々な用途で卓球療法を実施している。今後迎える2025年、2040年は更なる主体性のある機能訓練やリハビリテーション、そして具体的な結果が求められる時代となる。「体が楽になった」「歩きやすくなった」「動きやすくなった」といった抽象的な結果ではなく、具体的な数値や目に見える数値の変化として、歩行距離が○○m伸びた、更衣時間が○○秒短縮したなどの具体的な変化が求められる。だからこそ、現状の体力測定に加え、具体的数値がでる評価システムが必要である。その為に改めて、フットバランスシステム((株)インターリハ社製品)にて重心移動バランスの可視化、Sios(Social Independence Support Outcome Scale)にて行動変容を数値化、可視化し効果を実感して頂く事を大切にし、効果を実感して頂く取り組みを行っている。【まとめ】卓球は楽しい、手軽、運動量の調節、負担の軽さから、高齢者とスポーツという矛盾した命題を見事に解決した奇跡のスポーツである。卓球療法を法人のみならず地域という枠で確固たるものにしていく為には、卓球療法士、機能訓練指導員、介護職員等が中心となり科学的根拠を基に地域を巻き込んだ活動をしなければならない。2025年、2040年に向けて改めて卓球の方法と評価の課題を見直し、卓球療法を通じた機能回復の実感を持って頂きたいと考える。そして、日常生活の中で「主体的に活動と参加」をして頂く為には、身体の動きと意思の動きの両方が伴う事がエネルギーになると考える。効果が分かれば心が動く、心が動けば身体が動くといったモチベーション拡大の為のきっかけに卓球療法があれば幸いである。