講演情報

[15-O-L013-04]通所リハビリテーション中の持続した座位行動の実態

*高尾 耕平1、小出 純子1、村上 達典2、石垣 智也3 (1. 大阪府 社会医療法人慈薫会 介護老人保健施設大阪緑ヶ丘、2. 大阪河崎リハビリテーション大学、3. 名古屋学院大学)
PDFダウンロードPDFダウンロード
本研究の目的は、通所リハビリテーション利用中における、利用者の座位行動(以下、座位Bout)の実態を明らかにすることである。通所リハビリテーションの利用者34名に対し、来所時から帰宅まで身体活動量計を装着し、座位Boutを計測した。結果は、30-60分未満および60分以上の座位Boutの回数は、共に中央値が1回であり、連続した座位Boutの頻度は多くなかった。サーキットトレーニング等の取り組みが肯定的に作用したと考えた。
【はじめに】 
世界保健機関(WHO)は、2020年に「身体活動・座位行動のガイドライン」を公表し、定期的な身体活動は、心血管疾患、2型糖尿病、特定のがんなどの非感染性疾患(NCDs)の予防と管理のための重要な要因であることを示している。また、身体活動は、認知機能の低下やうつ病・不安の症状の予防など、精神的な健康にも有益であり、健康的な体重の維持や幸福感にも寄与することを報告している。このガイドラインでは、65歳以上の高齢者や、慢性疾患を有する成人および高齢者、障害のある成人に対して、1)中強度(3.0-5.9METs)の有酸素性の身体活動を少なくとも150-300分/週、または高強度(6.0METs以上)の有酸素性の身体活動を少なくとも75-150分/週、または中強度と高強度の身体活動の組み合わせによる同等の身体活動を行うこと、2)座位行動(1.5METs以下の活動)の時間を減らし、座位時間を身体活動(強度は問わない)に置き換えることの2つを推奨している。それを受け、厚労省は、2024年に「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表するとともに、一般国民の身体活動・運動の普及啓発を目的とした「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」を検討中である。その中で、今より10分多く身体を動かす「プラス・テン」と、30分に3分ほどは立ち上がる「ブレイク・サーティー」の啓発を目指している。
一般的に、高齢者は座位時間が延長しやすく、特に心身に障害を持つ要介護または要支援認定者は、その傾向が強くなると言える。通所リハビリテーションは、その役割の一つとして、自宅では不活発な生活になりがちな利用者に対し、利用時間中は活動的に過ごすように働きかけることが挙げられる。ただ、利用時間が7-8時間といった長時間の利用であれば座位行動の機会もあり、一定時間以上持続する座位行動(以下,座位Bout)が多くなる可能性がある。よって、通所リハビリテーション利用中に、座位Boutがどの程度生じているかを把握することは重要である。
そこで本研究の目的は、通所リハビリテーション利用中における、利用者の座位Boutの実態を明らかにすることである。
【方法】
対象者は、当通所リハビリテーションの利用者34名(平均年齢85.2±5.9歳、女性24名、要支援1:2名、要支援2:5名、要介護1:9名、要介護2:15名、要介護3:3名)とした。対象者となる包含基準は、1)デイルーム内の移動手段が歩行で、歩行補助具を使用しない独歩、あるいは歩行補助具を使用して自立または見守りや一部介助であること。2)1日利用型(9:00-16:00)の利用者であること、の2条件とした。
座位Boutの測定には、加速度センサを内蔵した身体活動量計(Active style PRO HJA-750C、オムロンヘルスケア社)を使用した。来所時から帰宅まで身体活動量計を装着して計測し、入浴時間を除く10時から15時までの計測データを採用した。座位Boutは2-30分未満、30-60分未満、60分以上の3種類を設定し、それぞれの回数を利用者ごとに計測データを用いて解析した。なお、リハビリテーションは個別リハビリ20分と、マシントレーニング6種各10分で構成されるサーキットトレーニングを基本とした。
なお、本研究は所属する倫理審査委員会の承認を得て実施し、対象者にはオプトアウトにより同意を得た。
【結果】
2-30分未満座位Bout回数の中央値は10回(0-9回:15名(44.1%)、10-19回:15名(44.1%)、、20-29回:4名(11.8%))、30分-60分未満座位Bout回数の中央値は1回(0回13名(38.2%)、1回11名(32.4%)、2回7名(20.6%)、3回3名(8.8%))、60分以上座位Bout回数の中央値は1回(0回10名(29.4%)、1回14名(41.2%)、2回9名(26.5%)、3回1名(2.9%))であった。
【考察】 
本研究の結果から、30-60分未満および60分以上の座位Boutの回数は、共に中央値が1回であり、通所リハビリテーション利用中は、連続した座位活動の頻度は多くないと言える。これは、当事業所で取り入れているサーキットトレーニングにより、個別リハビリテーションやマシントレーニングを受けるために移動する機会があることで、立ち上がる頻度を増やすことができていることが、肯定的に作用したと思われる。また、デイルームとリハビリテーションルームが約40m離れた場所にあり、歩行により往復する機会があることも、その一助になったと考える。一方で、60分以上座位Boutの回数が3回の者が1名認められた。この1名は、サーキットトレーニングに対して消極的であり、マシントレーニングの種目が3種目と少なく、またデイルームでは、脳トレのプリント課題や、新聞を読むなどの座位行動が多い利用者であった。つまり、デイルームで過ごす時間が長くなると、座位Boutが増加しやすくなる可能性がある。
今後は、サーキットトレーニングに消極的な利用者にも参加しやすい働きかけや、デイルームでも座位行動が中断されるような仕組み作りの検討が必要である。さらに、利用者に対して、座位Boutの減少が健康にとって有益であることの教育や、それを実践するための具体的な方法の提案を行い、利用者が通所リハビリテーション利用中だけでなく、自宅での生活においても取り組めることも、通所リハビリテーションの役割として目指していくべきと考える。