講演情報
[15-O-L013-05]デイケア利用開始1年後のTUG改善に影響する因子の検討
*和氣 洋享1、塩田 伸也1、長岡 友里1、幸崎 凌1、久保 沙矢香1、名越 映理子1 (1. 香川県 三豊総合病院企業団介護老人保健施設わたつみ苑)
TUGの改善に影響を及ぼす因子を明らかにすることを目的として、当施設デイケア利用者で除外基準に該当しなかった22名を、利用開始1年後にTUGが改善していた改善群と非改善群に2群し調査した。その結果、改善群で利用開始3ヶ月後の体重変化率が有意に高く、そのCut off値は2.6%と示された。3ヶ月後に2.6%の体重増加を目標に栄養管理を行いながら、リハビリテーションを提供していくことが重要と思われた。
【背景】
Timed Up and GO Test(以下TUG)は高齢者の移動能力を評価する検査として信頼性、妥当性が確認されている検査方法であり、簡便であることからも通所リハビリテーション(以下デイケア)を含め広く用いられている。また先行研究から転倒リスクの増加や歩行自立が困難となるCut off値が多数示されており、TUGの改善は歩行能力を維持し在宅生活を継続するという側面において重要と思われる。しかしデイケア利用者においてTUGの改善に影響する因子の検討をした報告は少ない。そこで今回は当施設デイケア利用者を対象にTUGの改善に影響を及ぼす因子について検討した。
【対象と方法】
対象は2021年1月から2022年12月までの2年間で当施設デイケアの利用を開始し、1年以上利用継続できた48名の内、利用開始時または1年以内に歩行困難となった10名、利用開始時のTUGが13.5秒未満であった10名、データ欠損のあった6名を除外した22名とした。それらを、開始時と比較し1年後のTUGに10%以上の改善がみられた改善群(7名)と、改善が見られなかった非改善群(15名)に2群し、比較検討を行った。また2群間比較にて有意差を認めた変数に関して、1年後のTUG改善の有無を従属変数として多重ロジスティック回帰分析(AICによるステップワイズ法)を行い、抽出された変数に関してROC曲線を用いてCut off値を算出した。
【結果】
2群間比較(改善群vs非改善群):開始時の年齢、性別、基礎疾患、服薬数、歩行形態、認知症の有無などには有意差を認めなかったが介護度に有意差を認めた(要支援1/2/要介護1/2/3/4/5:0/1/4/0/1/1/0vs6/4/5/0/0/0/0人:P<0.05)。また開始時、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後の握力、MMSE、Barthel Indexにはそれぞれ2群間で有意差を認めなかった。TUGに関しては開始時、3ヶ月後、6ヶ月後には2群間で有意差を認めなかったが、1年後に有意差を認めた(15.3vs23.0秒:P<0.05)。また開始時と比較した握力の変化率に関しては、6ヶ月後に2群間で有意差を認め(21.7vs0.0%:P<0.05)、体重の変化率に関しては1ヶ月後(1.9vs-0.6%:P<0.05)、3ヶ月後(6.0vs0.4%:P<0.05)、6ヶ月後(9.2vs2.4%:P<0.05)にそれぞれ2群間で有意差を認めた。
多変量解析:独立変数を年齢、性別、認知症の有無、開始時歩行形態、6ヶ月後の握力変化率、1ヶ月後および3ヶ月後の体重変化率として解析を行ったところ3ヶ月後の体重変化率が抽出された(P:0.022、オッズ比:2.19、95%IC:1.32-5.46)。
Cut off値:ROC曲線にて1年後のTUG改善の有無に対する3ヶ月後の体重変化率の最適Cut off値は2.6%(AUC:0.94)が算出され、感度は100%、特異度は86.7%であった。
【考察】
今回の結果からデイケア利用開始3ヶ月後の体重変化率が1年後のTUGの改善に影響する可能性が示唆され、特に3ヶ月後に2.6%の体重増加を目標に栄養管理を行っていくことが重要と考えられた。
高齢者は様々な要因により食事摂取量が低下し低栄養状態に陥りやすいとされ、低栄養はフレイルやサルコペニア、身体機能やQOLの低下、生命予後の悪化を招くとされている。一般的に、栄養状態の指標として体重やBMIが広く用いられ、その増加を栄養管理の目標とすることが多いが、目標とする具体的な増加量や達成までの期間の設定は不明瞭なことも多い。今回の結果はデイケアでの栄養管理における目標設定の一助となると思われた。
当施設では全ての利用者に対し管理栄養士が介入しており、低栄養のリスク評価や食事指導、毎月の体重測定などを実施することで利用者の栄養状態の把握に努めている。またその情報をカンファレンスやリハビリテーション会議などを通じて他職種はもちろん本人や家族とも共有し、利用者ごとの栄養状態に応じたリハビリテーションを提供することで、栄養状態の改善や身体機能の向上を目指している。今回の結果をもとに明確な目標を設定し、それを共有していくことで利用者本人のデイケアへのモチベーション向上にもつながるだけでなく、デイケア職員間や本人、家族との連携も促すことができ、より質の高いケアの提供に寄与していく可能性が考えられた。
Timed Up and GO Test(以下TUG)は高齢者の移動能力を評価する検査として信頼性、妥当性が確認されている検査方法であり、簡便であることからも通所リハビリテーション(以下デイケア)を含め広く用いられている。また先行研究から転倒リスクの増加や歩行自立が困難となるCut off値が多数示されており、TUGの改善は歩行能力を維持し在宅生活を継続するという側面において重要と思われる。しかしデイケア利用者においてTUGの改善に影響する因子の検討をした報告は少ない。そこで今回は当施設デイケア利用者を対象にTUGの改善に影響を及ぼす因子について検討した。
【対象と方法】
対象は2021年1月から2022年12月までの2年間で当施設デイケアの利用を開始し、1年以上利用継続できた48名の内、利用開始時または1年以内に歩行困難となった10名、利用開始時のTUGが13.5秒未満であった10名、データ欠損のあった6名を除外した22名とした。それらを、開始時と比較し1年後のTUGに10%以上の改善がみられた改善群(7名)と、改善が見られなかった非改善群(15名)に2群し、比較検討を行った。また2群間比較にて有意差を認めた変数に関して、1年後のTUG改善の有無を従属変数として多重ロジスティック回帰分析(AICによるステップワイズ法)を行い、抽出された変数に関してROC曲線を用いてCut off値を算出した。
【結果】
2群間比較(改善群vs非改善群):開始時の年齢、性別、基礎疾患、服薬数、歩行形態、認知症の有無などには有意差を認めなかったが介護度に有意差を認めた(要支援1/2/要介護1/2/3/4/5:0/1/4/0/1/1/0vs6/4/5/0/0/0/0人:P<0.05)。また開始時、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後の握力、MMSE、Barthel Indexにはそれぞれ2群間で有意差を認めなかった。TUGに関しては開始時、3ヶ月後、6ヶ月後には2群間で有意差を認めなかったが、1年後に有意差を認めた(15.3vs23.0秒:P<0.05)。また開始時と比較した握力の変化率に関しては、6ヶ月後に2群間で有意差を認め(21.7vs0.0%:P<0.05)、体重の変化率に関しては1ヶ月後(1.9vs-0.6%:P<0.05)、3ヶ月後(6.0vs0.4%:P<0.05)、6ヶ月後(9.2vs2.4%:P<0.05)にそれぞれ2群間で有意差を認めた。
多変量解析:独立変数を年齢、性別、認知症の有無、開始時歩行形態、6ヶ月後の握力変化率、1ヶ月後および3ヶ月後の体重変化率として解析を行ったところ3ヶ月後の体重変化率が抽出された(P:0.022、オッズ比:2.19、95%IC:1.32-5.46)。
Cut off値:ROC曲線にて1年後のTUG改善の有無に対する3ヶ月後の体重変化率の最適Cut off値は2.6%(AUC:0.94)が算出され、感度は100%、特異度は86.7%であった。
【考察】
今回の結果からデイケア利用開始3ヶ月後の体重変化率が1年後のTUGの改善に影響する可能性が示唆され、特に3ヶ月後に2.6%の体重増加を目標に栄養管理を行っていくことが重要と考えられた。
高齢者は様々な要因により食事摂取量が低下し低栄養状態に陥りやすいとされ、低栄養はフレイルやサルコペニア、身体機能やQOLの低下、生命予後の悪化を招くとされている。一般的に、栄養状態の指標として体重やBMIが広く用いられ、その増加を栄養管理の目標とすることが多いが、目標とする具体的な増加量や達成までの期間の設定は不明瞭なことも多い。今回の結果はデイケアでの栄養管理における目標設定の一助となると思われた。
当施設では全ての利用者に対し管理栄養士が介入しており、低栄養のリスク評価や食事指導、毎月の体重測定などを実施することで利用者の栄養状態の把握に努めている。またその情報をカンファレンスやリハビリテーション会議などを通じて他職種はもちろん本人や家族とも共有し、利用者ごとの栄養状態に応じたリハビリテーションを提供することで、栄養状態の改善や身体機能の向上を目指している。今回の結果をもとに明確な目標を設定し、それを共有していくことで利用者本人のデイケアへのモチベーション向上にもつながるだけでなく、デイケア職員間や本人、家族との連携も促すことができ、より質の高いケアの提供に寄与していく可能性が考えられた。