講演情報

[15-O-L014-03]利用者のやる気支援とフロアリハビリ

*中森 雄一1 (1. 神奈川県 介護老人保健施設リハビリケア湘南かまくら)
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当施設は在宅復帰に向けて身体機能維持の一環として、集団体操や機能訓練を行っている。一人ひとりにかける時間には限りがあり、目標に向かって満足のいく施設生活を過ごしているのか常々疑問に感じている。住み慣れた家に早く帰りたいという利用者の思いと、より良い生活をしていただきたいという職員の思いを重ね、利用者希望の支援、余暇活動の充実、フロアリハビリの継続から個別ケア強化を目指した事例の取り組みを報告する。
【はじめに】
 在宅復帰に向けて一番の課題となっているのは「トイレに行ける、排泄が1人でできる」ということである。利用者本人の希望、家族からの確認・要望として上がることが多い。限られた時間の中から目標に対しリハビリ職が直接介入する機能訓練は1日に20分程度である。本来生活リハビリといわれるフロアリハビリは機能訓練を24時間にわたり日常生活の中で展開することで更に自立した生活を獲得することが望ましい。そこには日常生活を支えている介護職の支援が最も大きいと言える。
 しかしながら日常生活動作がリハビリの一環であるという認識はあるものの、個別性を踏まえたタイムリーに生活リハビリを提供することは難しい。更に利用者からは「暇を持て余している、やることがない」等、ご本人からの積極的なリハビリに関しての発言・行動が少ない。
 そこで、現状の中でいかに利用者のやる気を引き出しリハビリの継続ができるか取り組むこととした。

【目的】
フロアリハビリへの意識を向上し、24時間いつでもリハビリ実施
レクリエーションを通して利用者の趣味思考を把握
継続可能なリハビリの構築し施設生活を充実したものにする

 事例
82歳男性 要介護3 入所期間 約3か月
本人意向 自宅に帰りたい
好きなこと テレビ(野球視聴) ラジオ鑑賞 新聞を読む
性格 自分のことは自分で行いたい
傷病名 認知症 胸椎圧迫骨折 腰椎圧迫骨折 前立腺がん

 課題
筋力低下しない トイレ動作時のふらつきをなくす 階段の上り降りが出来る 臥床時間を減らす 認知機能の低下による事故リスクの低減

【方法】
1.各部署の担当職員が希望、課題に関する情報収集を行う
 何気ない会話の中から利用者の趣味思考を抽出しきっかけ作りに活用
2.LIFE・個別ケアシート作成
3.フロアリハビリ会議 月1回開催
4.個別機能訓練を週に4日、認知機能訓練を週に1日(手すりや歩行器の移動や階段昇降 計算ドリル)
5.自主的なフロアリハビリを促す。1回10~15分程度、週に2回程度実施(口腔体操・ラジオ体操の参加・立ち座りの訓練・かかと上げ・足踏み・歩行練習)
6.毎回排せつ動作確認・自尊心の配慮と手すりの使い方
7.レクリエーションとしてボッチャ・モルックを活用 投げる・歩く・しゃがむといった適度な運動になり、集中力を養い点数計算など脳トレとしての効果が期待される。

【結果】
・予定期間通り退所することができた
・階段昇降ができ、ピックアップ歩行器から杖歩行になった
・ふらつきなくトイレ動作が行えるようになった
・臥床時間が減りレクリエーションに楽しく参加できた
・自主的に食事・口腔洗浄・トイレ等を行うようになった

【考察】
 取り組みにより、利用者や職員の生活リハビリに対する意識が向上し継続実施できたことがADL向上、早期退所といった効果につながったと考える。また、家族の励まし応援も大きく作用した。やる気を引き出すには、まず達成可能なゴール設定が大切で利用者本人が決めることが望ましい。支援する側は利用者の価値観や人生観、環境、生活歴、暮らしの流儀などそれぞれの価値観を理解することが重要である。個性を無視して良かれと思って支援を進めることはモチベーションの低下に繋がりかねない。否定せずにブラッシュアップする姿勢を持ち続けたい。
 自主的に行うフロアリハビリが多くの生活動作獲得の決め手となる事が再確認できたと同時に安全面への配慮やリスク管理を行う難しさを忘れてはならない。