講演情報
[15-O-L015-03]有効なコミュニケーションツールを求めて
*鈴木 称津貴1 (1. 奈良県 介護老人保健施設アンジェロ)
当施設の利用者様に対し、目標達成に向けた課題を細分化したツールを使用し現状を可視化できる環境でリハビリテーションをチームにて取り組んだところ、日々の変化がリアルタイムで家族様と共有できるものとなり、より細やかに在宅に向けての課題や不安に寄り添いながらの在宅復帰に向けた取り組みが可能となった。
【はじめに】
介護老人保健施設(以下、老健)を利用する高齢者のほとんどは日常生活に何らかの困難さ、不便さを抱えている。住み慣れた自宅で自分らしく暮らしていくために、課題の改善または現在の能力の維持を目的にリハビリテーションに取り組んでいる。インテークをもとに利用者様本人や家族様と面談し、その情報をもとに多職種でカンファレンスを開催し、必要な課題を具体的に挙げ、多職種がそれぞれの専門性を活かしながらチームとなって目標達成に向けて取り組んでいる。日々の様子は電子カルテにて職員間でその情報を共有し、定期的にカンファレンスを実施、その内容を利用者様家族へお伝えし、職員と家族様がチームとなって利用者様の面会に来られる家族様に対し、その都度、可能な限り変化をお伝えしようと努力している。しかし逐一リアルタイムでご家族様に伝えることは難しい。日々どのようなリハビリを行い、どのようなことを意識して利用者が過ごされているかについてより利用者家族に対して伝えられる有効な方法はないかと考え検討した。
【方法】
利用者様の目標達成に向けたリハビリ過程を細分化し、今後の過程とそのために取り組むべき内容を明示した用紙(以下、目標用紙)を、利用者様が日常生活で目につくところへ設置した。目標設定方法として利用しやすい5つの成功因子を現したSMARTを参考にし、実施する回数などを具体的に提示することで課題の遂行度、達成度が客観視出来るよう作成した。長期目標(12週間)に向けた短期目標(4週間)をさらに細分化し2週間ごとに達成度を評価し、継続または新たな短期目標を設定しなおし経過を追った。また、利用者様家族には面会に来られた際に説明させて頂いた。
【対象】
当施設に入所されており、在宅復帰を目指す4名を対象とした。また目標達成のフィードバックが理解できるようHDS-R5点以下は除外とし、上記の取り組みを実施した。
【結果】
利用者様は拒否なく目標達成に向けた取り組みを実施し、概ね短期目標を達成し次の目標に移行できた。また、目標用紙を設置する事により利用者様の自立度の変化の過程や、日々の努力を利用者様家族に知って頂くことができた。さらに、取り組みを実施していく中で家族様による利用者様への声掛けもポジティブな変化を認めており、今回の取り組みに対する新たな可能性が見いだせた。
【考察】
今回の取り組みにより、利用者様家族にリハビリテーションの過程について目標用紙を通してより細やかに知って頂くことができた。他にも、利用者様への言葉がけや行動に変化が見られた。
面会にくる家族様は、利用者様の姿を確認すると挨拶とともに「リハビリ頑張っている?」という声掛けがよく見受けられる。その発言はリハビリによる利用者様のADL改善・向上を期待する家族様からすれば当然である。しかし、家族様が利用者様のリハビリの頑張り具合、つまり目標達成に向けた取り組みの細かな進捗状況を把握できていないことによる不安の現れとも考えられる。家族様が面会に来られ、目標の用紙について説明をしたところ「こんな風にリハビリテーションって進んでいくのですね。」との反応とともに「頑張っているね」と利用者様に対し疑問符ではなく肯定的な声かけが見受けられるようになった。その声掛けに対し嬉しそうな表情をされた利用者様の姿をみて、今まで以上にその過程を共有する必要性を実感した。同時に、目標用紙を使用することにより日々の進捗具合を細かく知ることとなり利用者様の目標に向けた日々の“頑張り”を共有する一助となる可能性が見いだせた。
セラピストが利用者様の家族とリハビリ中に接する機会は意識しているものの他職種と比較し作りにくいのが現状であった。普段のリハビリの様子や過ごされている様子など動画を使用して適宜お伝えするように工夫はしている。その上で目標用紙を取り入れることで日々の取り組みとともに利用者様の達成度、次の目標への進捗度が家族様にとっても一目瞭然となりより細やかな情報伝達の一助となった。
我々セラピストはカンファレンスでの目標設定のもと、電子カルテを用いながら日々の変化を多職種と連携しながら達成に向けて取り組んでいる。家族様とはどうか。出来る限り面会中の家族様とお会いし、リハビリテーションの経過や今後の展望について家族様から自宅復帰のために必要な細やかなニーズなども聴取している。また、時間の経過に伴い生まれてくる今後への不安や家族様の想いなど、その時々で得られる情報を多職種で共有して利用者、家族様とともに進めていく過程はとても重要である。しかし職員間のように日々の様子をリアルタイムで共有することは難しい。目標用紙の設置により経過の詳細が可視化されることで、家族様も日々の状況をより理解することができ、現在の問題点について、関わる職員とほぼリアルタイムで共有することができるようになった。また不安な思いなどが生じた際には、その思いに寄り添い、解決に向けた動きを迅速に行う事が可能となった。
【まとめ】
今回の取り組みにより、家族様とセラピストのコミュニケーションが如何に大切かということが事例を通して確認できた。また、目標用紙の設置によりコミュニケーション不足を解消できる可能性が見いだせた。更に、利用者様のリハビリテーションの過程の詳細、達成度が明確となることで、在宅生活の再開に対する不安の軽減にも繋がった。何よりも、在宅復帰に向けて利用者様、家族様とともに取り組むという本来の在り方でより実践できるようになったことは大きな利点であった。
引き続き面会に来られる家族様との時間を大切にするとともに、目標用紙というツールを用いて、利用者様の経過を可視化し、利用者様の頑張りを家族様と共に共有し安心して在宅生活が再開できるよう多職種と連携して取り組んでいきたい。
介護老人保健施設(以下、老健)を利用する高齢者のほとんどは日常生活に何らかの困難さ、不便さを抱えている。住み慣れた自宅で自分らしく暮らしていくために、課題の改善または現在の能力の維持を目的にリハビリテーションに取り組んでいる。インテークをもとに利用者様本人や家族様と面談し、その情報をもとに多職種でカンファレンスを開催し、必要な課題を具体的に挙げ、多職種がそれぞれの専門性を活かしながらチームとなって目標達成に向けて取り組んでいる。日々の様子は電子カルテにて職員間でその情報を共有し、定期的にカンファレンスを実施、その内容を利用者様家族へお伝えし、職員と家族様がチームとなって利用者様の面会に来られる家族様に対し、その都度、可能な限り変化をお伝えしようと努力している。しかし逐一リアルタイムでご家族様に伝えることは難しい。日々どのようなリハビリを行い、どのようなことを意識して利用者が過ごされているかについてより利用者家族に対して伝えられる有効な方法はないかと考え検討した。
【方法】
利用者様の目標達成に向けたリハビリ過程を細分化し、今後の過程とそのために取り組むべき内容を明示した用紙(以下、目標用紙)を、利用者様が日常生活で目につくところへ設置した。目標設定方法として利用しやすい5つの成功因子を現したSMARTを参考にし、実施する回数などを具体的に提示することで課題の遂行度、達成度が客観視出来るよう作成した。長期目標(12週間)に向けた短期目標(4週間)をさらに細分化し2週間ごとに達成度を評価し、継続または新たな短期目標を設定しなおし経過を追った。また、利用者様家族には面会に来られた際に説明させて頂いた。
【対象】
当施設に入所されており、在宅復帰を目指す4名を対象とした。また目標達成のフィードバックが理解できるようHDS-R5点以下は除外とし、上記の取り組みを実施した。
【結果】
利用者様は拒否なく目標達成に向けた取り組みを実施し、概ね短期目標を達成し次の目標に移行できた。また、目標用紙を設置する事により利用者様の自立度の変化の過程や、日々の努力を利用者様家族に知って頂くことができた。さらに、取り組みを実施していく中で家族様による利用者様への声掛けもポジティブな変化を認めており、今回の取り組みに対する新たな可能性が見いだせた。
【考察】
今回の取り組みにより、利用者様家族にリハビリテーションの過程について目標用紙を通してより細やかに知って頂くことができた。他にも、利用者様への言葉がけや行動に変化が見られた。
面会にくる家族様は、利用者様の姿を確認すると挨拶とともに「リハビリ頑張っている?」という声掛けがよく見受けられる。その発言はリハビリによる利用者様のADL改善・向上を期待する家族様からすれば当然である。しかし、家族様が利用者様のリハビリの頑張り具合、つまり目標達成に向けた取り組みの細かな進捗状況を把握できていないことによる不安の現れとも考えられる。家族様が面会に来られ、目標の用紙について説明をしたところ「こんな風にリハビリテーションって進んでいくのですね。」との反応とともに「頑張っているね」と利用者様に対し疑問符ではなく肯定的な声かけが見受けられるようになった。その声掛けに対し嬉しそうな表情をされた利用者様の姿をみて、今まで以上にその過程を共有する必要性を実感した。同時に、目標用紙を使用することにより日々の進捗具合を細かく知ることとなり利用者様の目標に向けた日々の“頑張り”を共有する一助となる可能性が見いだせた。
セラピストが利用者様の家族とリハビリ中に接する機会は意識しているものの他職種と比較し作りにくいのが現状であった。普段のリハビリの様子や過ごされている様子など動画を使用して適宜お伝えするように工夫はしている。その上で目標用紙を取り入れることで日々の取り組みとともに利用者様の達成度、次の目標への進捗度が家族様にとっても一目瞭然となりより細やかな情報伝達の一助となった。
我々セラピストはカンファレンスでの目標設定のもと、電子カルテを用いながら日々の変化を多職種と連携しながら達成に向けて取り組んでいる。家族様とはどうか。出来る限り面会中の家族様とお会いし、リハビリテーションの経過や今後の展望について家族様から自宅復帰のために必要な細やかなニーズなども聴取している。また、時間の経過に伴い生まれてくる今後への不安や家族様の想いなど、その時々で得られる情報を多職種で共有して利用者、家族様とともに進めていく過程はとても重要である。しかし職員間のように日々の様子をリアルタイムで共有することは難しい。目標用紙の設置により経過の詳細が可視化されることで、家族様も日々の状況をより理解することができ、現在の問題点について、関わる職員とほぼリアルタイムで共有することができるようになった。また不安な思いなどが生じた際には、その思いに寄り添い、解決に向けた動きを迅速に行う事が可能となった。
【まとめ】
今回の取り組みにより、家族様とセラピストのコミュニケーションが如何に大切かということが事例を通して確認できた。また、目標用紙の設置によりコミュニケーション不足を解消できる可能性が見いだせた。更に、利用者様のリハビリテーションの過程の詳細、達成度が明確となることで、在宅生活の再開に対する不安の軽減にも繋がった。何よりも、在宅復帰に向けて利用者様、家族様とともに取り組むという本来の在り方でより実践できるようになったことは大きな利点であった。
引き続き面会に来られる家族様との時間を大切にするとともに、目標用紙というツールを用いて、利用者様の経過を可視化し、利用者様の頑張りを家族様と共に共有し安心して在宅生活が再開できるよう多職種と連携して取り組んでいきたい。