講演情報
[15-O-L016-02]短期集中リハビリ期間にADLを向上させる要因を探せ!~ADL点数の推移と複数の要因との関連について~
*坂東 大地1 (1. 岐阜県 社会福祉法人 三縁の会 介護老人保健施設 サットヴァの園)
我々は、ADLの向上を目的に短期集中リハビリを実施している。しかし、ADLの向上がみられない利用者もみえる為、ADL点数の推移とその変化に影響をもたらす要因を調査した。複数の要因を調査した結果、栄養状態、食事摂取量、認知力、帰宅願望においてADL改善の有無と関連がみられるものはなかった。しかし、家族と在宅復帰へ向けての具体的な目標が有る利用者の方が、有意にADLが改善していた。
【はじめに】
我々は、日常生活動作(以下、ADL)の向上を目的とした短期集中リハビリを実施している。しかしながら、3か月間の短期集中リハビリ実施後でもADLの点数に向上のみられない利用者もみえる。今回我々はADL点数の推移を調査し、その変化に影響を与える要因がないか調査した。
【対象と方法】
令和6年4月現在の入所者の内、過去3年間に短期集中リハビリを実施した35名を対象とした。
入所時の点数が95点以上(入浴一部介助で95点)の方1名は対象外とした。
『調査A』
ADLの評価はBarthel Indexを使用。入所時と3か月経過後の点数を比較し、変化の有無を調査した。
(Barthel Index:日常生活動作の自立度を10個の項目で評価する指標。)
『調査B』
1)栄養(アルブミン値)2)食事摂取量 3)認知力(HDS-R)4)利用者の帰宅願望の有無 5)在宅復帰計画の有無※をそれぞれ調査し、さらに『調査A』の結果との関連の有無を調査した。
※在宅復帰計画:家族に在宅復帰への希望があり、トイレ動作自立等の明確な目標がある。
【結果】
『調査A』
ADL点数の変化の有無を調査した。
・改善有り(以下、改善有り群)は18名(52.9%)。
・改善無し(以下、改善無し群)は16名(47.1%)だった。
この結果を「A」とする。
『調査B』
B1)改善有り群の方が、アルブミン値が高いかと考え、調査した。
全体のアルブミン値は2.6~4.1(平均3.3)。
・改善有り群は2.6~4.1(平均3.3)。
・改善無し群は2.6~4.1(平均3.3)と、両群に大きな差は無し。
「A」とアルブミン値との関連は認めなかった。
B2)食事摂取量が良好なほどADLが改善するかと考え、調査した。
・食事摂取量が良好な方は28名で、その内14名(50%)がADL改善。
・食事摂取量が不良な方は6名で、その内4名(66.7%)がADL改善と、両者に明確な差は無し。
「A」と食事摂取量との関連は認めなかった。
B3)改善有り群の方が、認知力が高いかと考え、調査した。
全対象者の認知力は4~29点(平均19点)。
・改善有り群は4~29点(平均20点)。
・改善無し群は6~29点(平均19点)と、両群に明確な差は無し。
「A」と認知力との関連は認めなかった。
B4)利用者の帰宅願望が有る方が、ADLが改善するかと考え、調査した。
・帰宅願望有りは18名。その内9名(50%)がADL改善。
・帰宅願望無しは16名。その内9名(56.3%)がADL改善と、両者に明確な差は無し。
「A」と帰宅願望の有無に関連は認めなかった。
B5)具体的な目標が有る方が、ADLが改善するかと考え、調査した。
・在宅復帰計画有りは6名。その内5名(82.4%)がADL改善。
・在宅復帰計画無しは28名。その内13名(46.4%)がADL改善。
両者に明確な差がみられた。しかし、対象者が少なく有意差はみられなかった為、過去3年間に短期集中リハビリを実施した75名(現入所者と退所の方を含む)に対象を拡大し、追跡調査した。
【結果(追跡調査)】
『調査A』
・ADL点数に改善有りは44名(58.7%)。
・改善無しは31名(41.3%)だった。
『調査B』
B5)具体的な目標がある方が、ADLが改善するのかを追跡調査した。
・在宅復帰計画有りは22名。その内17名(77.3%)がADL改善。
・在宅復帰計画無しは53名。その内27名(50.9%)がADL改善。
在宅復帰計画有りの方が、有意にADLが改善すると言える。
(有意水準5%でカイ二乗検定を行った。x2(1)=4.45、p=0.035)
【まとめ・考察】
調査Aでは、ADL点数の変化の有無を調査した。短期集中リハビリを実施していく中で、約6割の方がADLが向上することが分かった。調査Bでは、ADL点数の改善の有無に影響を与える要因がないかを調査・分析した。アルブミン値、食事摂取量、認知力、帰宅願望において、ADL点数の改善の有無と関連がみられるものはなかった。しかし、家族に在宅復帰への希望があり明確な目標が有る方は、無い方よりもADLの点数が有意に改善した。在宅復帰への目標があることにより、リハビリ時に実際の在宅環境を意識した内容の訓練を実施することができる。また、リハビリ訓練時の内容を介護職員と共有し生活の中で実践していく事により、それ自体がADLの訓練になっている。改善状況に合わせて段階的に練習を行っていくことが出来る為、ADLの向上が可能になると考えた。また、在宅復帰計画が無く長期的に施設利用が見込まれる方の場合、ADL上で安全面や介護時間の短縮を求めて速やかに一部介助を継続する傾向がある反面、「これが出来たら家に帰れる」という目標がある方は、動作に時間がかかろうとも口頭指示や見守りにて自己にて動作を行い、自立度が上がっていくという事例もある。これらの事から在宅復帰計画がある方が、よりADL改善に繋がると示唆された。
今回調査を実施し、ADL改善に向けて、家族からの希望を確認し目標を決めていく事の重要性を再認識することができた。今後、在宅復帰計画が無い方も、トイレ動作自立など具体的に目標を決めたうえでADLの改善を目指していきたい。
我々は、日常生活動作(以下、ADL)の向上を目的とした短期集中リハビリを実施している。しかしながら、3か月間の短期集中リハビリ実施後でもADLの点数に向上のみられない利用者もみえる。今回我々はADL点数の推移を調査し、その変化に影響を与える要因がないか調査した。
【対象と方法】
令和6年4月現在の入所者の内、過去3年間に短期集中リハビリを実施した35名を対象とした。
入所時の点数が95点以上(入浴一部介助で95点)の方1名は対象外とした。
『調査A』
ADLの評価はBarthel Indexを使用。入所時と3か月経過後の点数を比較し、変化の有無を調査した。
(Barthel Index:日常生活動作の自立度を10個の項目で評価する指標。)
『調査B』
1)栄養(アルブミン値)2)食事摂取量 3)認知力(HDS-R)4)利用者の帰宅願望の有無 5)在宅復帰計画の有無※をそれぞれ調査し、さらに『調査A』の結果との関連の有無を調査した。
※在宅復帰計画:家族に在宅復帰への希望があり、トイレ動作自立等の明確な目標がある。
【結果】
『調査A』
ADL点数の変化の有無を調査した。
・改善有り(以下、改善有り群)は18名(52.9%)。
・改善無し(以下、改善無し群)は16名(47.1%)だった。
この結果を「A」とする。
『調査B』
B1)改善有り群の方が、アルブミン値が高いかと考え、調査した。
全体のアルブミン値は2.6~4.1(平均3.3)。
・改善有り群は2.6~4.1(平均3.3)。
・改善無し群は2.6~4.1(平均3.3)と、両群に大きな差は無し。
「A」とアルブミン値との関連は認めなかった。
B2)食事摂取量が良好なほどADLが改善するかと考え、調査した。
・食事摂取量が良好な方は28名で、その内14名(50%)がADL改善。
・食事摂取量が不良な方は6名で、その内4名(66.7%)がADL改善と、両者に明確な差は無し。
「A」と食事摂取量との関連は認めなかった。
B3)改善有り群の方が、認知力が高いかと考え、調査した。
全対象者の認知力は4~29点(平均19点)。
・改善有り群は4~29点(平均20点)。
・改善無し群は6~29点(平均19点)と、両群に明確な差は無し。
「A」と認知力との関連は認めなかった。
B4)利用者の帰宅願望が有る方が、ADLが改善するかと考え、調査した。
・帰宅願望有りは18名。その内9名(50%)がADL改善。
・帰宅願望無しは16名。その内9名(56.3%)がADL改善と、両者に明確な差は無し。
「A」と帰宅願望の有無に関連は認めなかった。
B5)具体的な目標が有る方が、ADLが改善するかと考え、調査した。
・在宅復帰計画有りは6名。その内5名(82.4%)がADL改善。
・在宅復帰計画無しは28名。その内13名(46.4%)がADL改善。
両者に明確な差がみられた。しかし、対象者が少なく有意差はみられなかった為、過去3年間に短期集中リハビリを実施した75名(現入所者と退所の方を含む)に対象を拡大し、追跡調査した。
【結果(追跡調査)】
『調査A』
・ADL点数に改善有りは44名(58.7%)。
・改善無しは31名(41.3%)だった。
『調査B』
B5)具体的な目標がある方が、ADLが改善するのかを追跡調査した。
・在宅復帰計画有りは22名。その内17名(77.3%)がADL改善。
・在宅復帰計画無しは53名。その内27名(50.9%)がADL改善。
在宅復帰計画有りの方が、有意にADLが改善すると言える。
(有意水準5%でカイ二乗検定を行った。x2(1)=4.45、p=0.035)
【まとめ・考察】
調査Aでは、ADL点数の変化の有無を調査した。短期集中リハビリを実施していく中で、約6割の方がADLが向上することが分かった。調査Bでは、ADL点数の改善の有無に影響を与える要因がないかを調査・分析した。アルブミン値、食事摂取量、認知力、帰宅願望において、ADL点数の改善の有無と関連がみられるものはなかった。しかし、家族に在宅復帰への希望があり明確な目標が有る方は、無い方よりもADLの点数が有意に改善した。在宅復帰への目標があることにより、リハビリ時に実際の在宅環境を意識した内容の訓練を実施することができる。また、リハビリ訓練時の内容を介護職員と共有し生活の中で実践していく事により、それ自体がADLの訓練になっている。改善状況に合わせて段階的に練習を行っていくことが出来る為、ADLの向上が可能になると考えた。また、在宅復帰計画が無く長期的に施設利用が見込まれる方の場合、ADL上で安全面や介護時間の短縮を求めて速やかに一部介助を継続する傾向がある反面、「これが出来たら家に帰れる」という目標がある方は、動作に時間がかかろうとも口頭指示や見守りにて自己にて動作を行い、自立度が上がっていくという事例もある。これらの事から在宅復帰計画がある方が、よりADL改善に繋がると示唆された。
今回調査を実施し、ADL改善に向けて、家族からの希望を確認し目標を決めていく事の重要性を再認識することができた。今後、在宅復帰計画が無い方も、トイレ動作自立など具体的に目標を決めたうえでADLの改善を目指していきたい。