講演情報
[15-O-L017-01]リハビリ、口腔、栄養の多職種協働による一体的取組
*永井 雄大1 (1. 島根県 介護老人保健施設仁寿苑)
リハビリ、栄養、口腔の一体的取り組みについて、栄養評価をアウトカムとして、リハビリの視点で考察した。我々の通所リハビリにおけるリハビリマネジメント加算B-2算定利用者においても、栄養状態は改善し、効果的なリハビリを提供することができた。専門職連携チームの機能強化が健康アウトカムの改善を通じて利用者の生活の質向上につながることが我々のチームでも明らかとなった。今後も本取り組みを戦略的に進めたい。
【はじめに】
リハビリテーション(以下リハビリ)、栄養、口腔の取組は一体となって運用されることで、より効果的な自立支援・重度化予防につながることが期待されている。令和3年度介護報酬改定以降、当通所リハビリにおいても口腔・栄養スクリーニングに基づく栄養マネジメント・口腔衛生/嚥下機能強化を含めた専門職連携リハビリ・個別機能訓練、栄養管理、口腔管理に係る実施計画書を活用している。今回、その主アウトカムとして栄養に着目しリハビリの視点から報告する。
【定義】
「低栄養状態」とは、栄養素の摂取が生体の必要量より少ないときに起こる体の状態で、健康に生きるために必要な量の栄養素が摂れていないこと。(e-ヘルスネット)
【研究方法】
研究方法として、令和3年~令和5年の通所リハビリ利用者に対して管理栄養士が実施した栄養評価を分析し、その実態を調査する。対象者は、リハビリマネジメント加算B-2算定者とする。
【結果】
当事業所における利用者のリハビリマネジメント加算B-2の取得状況は令和3年度が96.6%、令和4年度が95.3%、令和5年度が94.5%であった。その特徴は、LIFE事業所フィードバックデータによる全国値との比較において、BMIは高水準である一方で後期高齢者割合が高かった。食事摂取量の影響を受けやすく体重減少につながりやすい傾向があった。低栄養リスク者の割合は、同11.6%、9.0%、8.6%と年々減少した。
【考察】
専門職連携実施計画書を活用することにより、日常の職種間の情報連携の頻度が増え、入所者の新たな課題やニーズを早期に把握し共有できるようになった。とりわけ、利用者ごとの栄養状態、口腔・嚥下機能および食事摂取量や食形態を配慮した栄養管理上の課題の把握、状態変化に関するチーム意識が向上し、ケアプランで共通した目標の設定が可能となり達成に向けての行動を統合化できたことが低栄養リスクの改善に有用であった。
【セラピストとしての課題】
今回の結果から次の3つの課題を抽出し、今後のリハビリに関する取り組みに活かすこととした。
1)評価の標準化と電子化
2)高齢者の運動処方の設定
3)高齢者の食事栄養支援
【今後の取り組み】
1)評価の標準化と電子化
所内チーム連携はもちろん、医療と介護の連携推進の観点からも理学療法標準評価等ADL・IADL評価の標準化と正確性の強化に取り組む必要がある。低栄養による筋肉量減少を評価する指標では、下腿周囲径が簡便な評価である一方で、当所利用者の特徴のように高齢、BMI高値の場合にはその影響を受けやすい。したがって、リハビリの効果判定のためにも、筋力量の増減を電子的・客観的に把握できる下肢筋力測定器を使用した筋力評価の導入が望ましいと思われる。
2)高齢者の運動処方の設定
低栄養ではリハビリ効果は得られない。また、持久力増強訓練は栄養改善を阻害する可能性があるとの報告もある。FITTの原則に基づき運動処方・リハビリ計画を立てる際に、機能維持あるいは機能改善を目的とするリハビリに関わらず、栄養摂取状況も踏まえた栄養評価に連動して、運動強度(METs等)を設定する必要がある。
3)高齢者の食事栄養支援
少子高齢化が進む当地域では、高齢者の低栄養の要因のうち、社会的要因の悪化が加速している。これに対し、我々は、医科歯科連携のもと管理栄養士主体で邑智郡食事栄養支援協議会を設立し、とりわけ高齢者の食事栄養支援について活動してきた。リハビリ、栄養、口腔の取組は一体となって運用されることで、より効果的な自立支援・重度化予防が可能になることから、支援活動においてもセラピストがリハビリの視点で関与していくことによりフレイルの予防・改善に貢献しなければならない。
【まとめ】
リハビリ、栄養、口腔の一体的取り組みについて、栄養評価をアウトカムとして、リハビリの視点で考察し、報告した。介護保険制度ではこれらによって、効果的な自立支援・重度化予防につながることが期待されている。今回、我々の通所リハビリにおけるリハビリマネジメント加算B-2算定利用者に対する一体的取り組みにおいても、栄養状態は改善し、効果的なリハビリを提供するための必要条件が担保された。専門職連携機能の強化が健康アウトカムの向上、ひいては利用者の生活の質向上につながることが我々のチームでも明らかとなり、今後も上記課題に対する取り組みを戦略的に進めたい。
リハビリテーション(以下リハビリ)、栄養、口腔の取組は一体となって運用されることで、より効果的な自立支援・重度化予防につながることが期待されている。令和3年度介護報酬改定以降、当通所リハビリにおいても口腔・栄養スクリーニングに基づく栄養マネジメント・口腔衛生/嚥下機能強化を含めた専門職連携リハビリ・個別機能訓練、栄養管理、口腔管理に係る実施計画書を活用している。今回、その主アウトカムとして栄養に着目しリハビリの視点から報告する。
【定義】
「低栄養状態」とは、栄養素の摂取が生体の必要量より少ないときに起こる体の状態で、健康に生きるために必要な量の栄養素が摂れていないこと。(e-ヘルスネット)
【研究方法】
研究方法として、令和3年~令和5年の通所リハビリ利用者に対して管理栄養士が実施した栄養評価を分析し、その実態を調査する。対象者は、リハビリマネジメント加算B-2算定者とする。
【結果】
当事業所における利用者のリハビリマネジメント加算B-2の取得状況は令和3年度が96.6%、令和4年度が95.3%、令和5年度が94.5%であった。その特徴は、LIFE事業所フィードバックデータによる全国値との比較において、BMIは高水準である一方で後期高齢者割合が高かった。食事摂取量の影響を受けやすく体重減少につながりやすい傾向があった。低栄養リスク者の割合は、同11.6%、9.0%、8.6%と年々減少した。
【考察】
専門職連携実施計画書を活用することにより、日常の職種間の情報連携の頻度が増え、入所者の新たな課題やニーズを早期に把握し共有できるようになった。とりわけ、利用者ごとの栄養状態、口腔・嚥下機能および食事摂取量や食形態を配慮した栄養管理上の課題の把握、状態変化に関するチーム意識が向上し、ケアプランで共通した目標の設定が可能となり達成に向けての行動を統合化できたことが低栄養リスクの改善に有用であった。
【セラピストとしての課題】
今回の結果から次の3つの課題を抽出し、今後のリハビリに関する取り組みに活かすこととした。
1)評価の標準化と電子化
2)高齢者の運動処方の設定
3)高齢者の食事栄養支援
【今後の取り組み】
1)評価の標準化と電子化
所内チーム連携はもちろん、医療と介護の連携推進の観点からも理学療法標準評価等ADL・IADL評価の標準化と正確性の強化に取り組む必要がある。低栄養による筋肉量減少を評価する指標では、下腿周囲径が簡便な評価である一方で、当所利用者の特徴のように高齢、BMI高値の場合にはその影響を受けやすい。したがって、リハビリの効果判定のためにも、筋力量の増減を電子的・客観的に把握できる下肢筋力測定器を使用した筋力評価の導入が望ましいと思われる。
2)高齢者の運動処方の設定
低栄養ではリハビリ効果は得られない。また、持久力増強訓練は栄養改善を阻害する可能性があるとの報告もある。FITTの原則に基づき運動処方・リハビリ計画を立てる際に、機能維持あるいは機能改善を目的とするリハビリに関わらず、栄養摂取状況も踏まえた栄養評価に連動して、運動強度(METs等)を設定する必要がある。
3)高齢者の食事栄養支援
少子高齢化が進む当地域では、高齢者の低栄養の要因のうち、社会的要因の悪化が加速している。これに対し、我々は、医科歯科連携のもと管理栄養士主体で邑智郡食事栄養支援協議会を設立し、とりわけ高齢者の食事栄養支援について活動してきた。リハビリ、栄養、口腔の取組は一体となって運用されることで、より効果的な自立支援・重度化予防が可能になることから、支援活動においてもセラピストがリハビリの視点で関与していくことによりフレイルの予防・改善に貢献しなければならない。
【まとめ】
リハビリ、栄養、口腔の一体的取り組みについて、栄養評価をアウトカムとして、リハビリの視点で考察し、報告した。介護保険制度ではこれらによって、効果的な自立支援・重度化予防につながることが期待されている。今回、我々の通所リハビリにおけるリハビリマネジメント加算B-2算定利用者に対する一体的取り組みにおいても、栄養状態は改善し、効果的なリハビリを提供するための必要条件が担保された。専門職連携機能の強化が健康アウトカムの向上、ひいては利用者の生活の質向上につながることが我々のチームでも明らかとなり、今後も上記課題に対する取り組みを戦略的に進めたい。