講演情報

[15-O-L017-03]実習生の受け入れ あり?なし?

*木俵 拓夢1 (1. 愛媛県 済生会西条老人保健施設いしづち苑)
PDFダウンロードPDFダウンロード
実習生の受け入れについて職員にアンケート調査を実施したので報告を行う。結果より、98.2%の職員が実習生の受け入れに賛成であった。実習生を受け入れることで、職員の知識技術の向上・再確認できる機会となり、また、新たな人材確保へ繋がるチャンスがあり、メリットが多いと考える。引き続き、老人保健施設でのリハビリテーションの特徴や良さを実習生に対して発信していく必要性を感じている。
【はじめに・目的】
わが国での理学療法士の養成が始まってから50年を超え、現在では養成施設が250校余りとなり、1学年の定員数は14,000人を超える時代となった。2019年「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」(以下:指定規則)の一部が改正され、臨床実習時間数の見直し・臨床実習の在り方・臨床実習指導者の要件・臨床実習の構成等について明記された。今回指定規則改正以降、初めていしづち苑(以下:当苑)にて理学療法士実習生(以下:実習生)を受け入れる機会を得た。今後の実習生の受け入れについて当苑職員に対してアンケート調査を実施し、得られた結果を参考に課題と今後の展望について報告を行う。
【方法】
実習終了後、当苑職員(介護職・看護職・リハビリ職・事務職)に対し、当苑で導入しているクラウド型ビジネスチャットツールLINE WORKSによるアンケート機能を使用し、今後の実習生の受け入れについてアンケート調査を実施した。55名(介護職31名、看護職12名、リハビリ職7名、事務職5名)から回答を得た。
【事前準備】
事前準備として養成校の臨床実習指導者会議へ参加し、昨今大きな問題となっている各種ハラスメント内容への対応・対策について、特に学習・理解を深めた。臨床実習指導者会議で得た内容・情報については実習開始前に他のスタッフに情報共有を行った。
【結果】
<今後の実習生の受け入れについて>
よい54名(98.2%)よくない1名(1.8%)
(よい理由・意見(一部))
・学生さんの受け入れはスタッフにも利用者にも良い刺激になる。
・ご利用者が興味を持ち、職員共々刺激となるため。
・未来の理学療法士の学生さんの勉学の手助けをすることは良いことだと思う。自分も実習でお世話になった。
・自分の知識の整理や再確認にもなるため。
・学生を受け入れることで、現在提供している内容がより根拠に基づいたものであるか、振りかえる機会が得られるため。
・職員自身が指導や教育の役割を勉強できる機会でもあり、地域の教育機関との協力関係を構築することができるため。
・今後の人材確保に繋がると思うため。
・就職先として考えてもらえる可能性が上がる。
・学校とのパイプ作りができ、新規採用が期待できる。
(よくない理由・意見(一部))
・実習指導者担当は業務がかなり多忙になる。
<実習期間について>(よいと答えた方(53名)のみ解答)
・期間はこだわらない31名(58.5%)
・今回と同じ2週間程度19名(35.8%)
・もう少し長い期間8週間程度2名(3.8%)
・見学程度3日程度1名(1.9%)
【考察】
今回当苑で2週間の評価実習、1名の実習生受け入れた。アンケート結果・意見より、当苑で今後の実習生の受け入れについて、多くの職員より前向きな意見が聞かれた。また、実習生を受け入れることで、今後当苑への就職や人材確保に繋がる意見もあった。実習後の採用は、施設側・学生側双方のメリットが多いと考える。理由として、施設側は予め実習での様子がわかり、優秀な人材を確保できることが考えられ、学生側は施設の設備や雰囲気、スタッフの働き方等がわかるため、理想と現実のギャップは少なく、早期離職の予防になると考える。また、学生時代の実習経験は、とても印象に残りやすく就職活動に繋がることが多い。直接働いているリハスタッフとの触れ合い、職場の雰囲気を感じてもらう機会は実習生だけでなく当苑スタッフにとっても有意義な時間であったと考える。
実習期間については、期間はこだわらない(31名)、今回と同じ2週間程度(19名)を合わせると94%を超える結果で、リハスタッフも相違ない結果であった。結果から、当面当苑では今回と同じ期間(2週間程度)の実習を受け入れていくことが適切ではないかと考える。今後リハスタッフが増員された場合など体制に変化があった場合には再度検討を行う余地があると考える。
一方2019年指定規則の一部改正にて臨床実習指導者の要件が明記され、免許を受けた後5年以上業務に従事した者であり、かつ、厚生労働省が指定した臨床実習指導者講習会等を修了した者と厳格化された。また、臨床実習の1単位の時間数を「1単位を40時間以上の実習をもって構成することとし、実習時間外に行う学修等がある場合には、その時間も含め45時間以内」に見直す記載がされた。そのため、実習指導者は、業務時間内に自身の業務+実習生指導を終える必要がある。しかし、実習生指導の中には技術的な指導だけではなく、フィードバックも含まれる。このことからアンケートの意見の中には、実習指導者に対する業務内容・負担に関する問題も聞かれた。今後受け入れの際には、実習指導者だけでなくリハスタッフも実習生に助言等を行い、可能な限りその場・その日で問題解決できるよう実習生を支援していく体制が必要であると考える。
【結語・まとめ】
老人保健施設の特徴である生活をトータルにみて支援することができること、理学療法士として利用者に対し、広い視野でアプローチができること、老人保健施設の良さを実習生に対して発信していく必要性を感じている。
最後に、今回の実習が無事に終えることができたのは、実習生の受け入れに対し、全面的に支援・協力をしてくれたおかげである。今後当苑で実習生を受け入れることで、職員の知識技術の向上・再確認できる機会となり、また、新たな人材確保へ繋がるチャンスがあり、当苑へのメリットが多いと考える。可能な範囲で実習生の受け入れを継続し、最終的には、実習生・職員がお互いにプラスとなるような実習をしていきたいと考える。
【参考文献】
臨床実習教育の手引き(第6版)公益社団法人日本理学療法士協会
専門リハビリテーション 第19巻:63-68(2020年)坂上昇
理学療法士作業療法士学校養成指定規則の改正について