講演情報

[15-O-S001-02]能登半島地震災害ボランティア活動報告~活動を通して思い・感じたこと~

*山田 枝織1、川原 哲生1、高橋 勇太1、三島 聖史1 (1. 岐阜県 松波総合病院 介護老人保健施設)
PDFダウンロードPDFダウンロード
本年1月1日に、石川県能登半島で発生した地震に係る全老健災害相互支援プロジェクトBに基づき、1.5次避難所であるいしかわ総合スポーツセンターに、当施設より3職種3日間ボランティア活動に入った。現地状況が不透明な中での派遣への不安感、事前情報との差異発生での活動を通して感じた問題点と、今後の災害発生時における活動支援体制について考えるきっかけとしたい。
【はじめに】2024年1月1日、石川県能登半島で最大震度7の地震が発生、「令和6年能登半島地震」と命名された。今回、全老健災害相互支援プロジェクト(DMSP)プロジェクトBにおけるボランティア職員の応援派遣要請に基づき、2月5日~2月9日にかけ参加する機会を得た。参加した職種は介護職・看護職・リハビリ職から各1名であり、各専門職を活かした業務を想定していた。しかしながら、現場で指示された業務は介護業務であり想定外であった。今回、ボランティア応援要請時から参加までを振り返り、さらに半年以上が経過した現状、今後発生が想定される東南海地震発生時の応援体制について、参加者として又は調整を図った事務側としての思いや経験について報告する。
【派遣先概要と活動内容】 
派遣先:1.5次避難所(いしかわ総合スポーツセンター)1月8日開設 
派遣先概要:メインアリーナ→要配慮の方等 テント数約150棟 [今回3名が担当] 
      サブアリーナ →軽度の介護が必要な方 車椅子・食事介助が必要 
      マルチパーパス→重度の介護が必要な方 医療依存度が高くDMATなど医師常駐 
活動時間:日勤(8時~20時)・夜勤(20時~8時)の2交代制(12時間)勤務 
活動内容:毎食の配下膳が必要な方への介入、特別食の準備と提供と確認
     入浴(シャワー浴)・排泄の誘導や声掛けによる介入と確認
     認知機能が低下している避難者の定期的な所在確認と情報共有
     介護チーム内、他の医療チーム等との情報交換・共有
【派遣先等の現状と考察】
・人の温かさ:避難所での避難者同士のコミュニティが形成され、そこには相互扶助の精神が見られた。避難者とボランティア間のコミュニケーションは互いに気遣い、ボランティア同士は互いの価値観を尊重し活動していた。このため、避難所にいる全員が穏やかに過ごすための人間関係を肌で感じることができた。
・専門職以外での活動:派遣者が避難所に行くまで、どこで、どのような活動を行うのか、分からない状況であった。このため、介護職でない専門外の者が、突然介護職としての活動を指示されたため、専門職としての能力を充分に発揮することができなかった。
・多職種間の情報共有不足:被災者支援のために多職種が活動を行っていたが、各々が持っている避難者の情報をひとつにまとめ共有することが困難であった。支援が途切れないよう同職チーム内の日々の引継ぎに精一杯で、多職種で情報を共有する余裕が無かった。
・その他の情報不足:当初、避難所等での寝泊まりを指示されていた。しかし、現地受付で宿泊先を確保するよう指示を受けた。
・ストレス:現地の状況が不明なことによる緊張感、長時間労働と慣れない環境下での業務による身体の疲労等強いストレスを感じた。
・違和感:スポーツセンター内の3施設が避難所となっているが、トレーニングルームやプールは一般市民が利用されている。
・情報源:法人内のDMAT隊、居宅介護支援員の派遣チームからの情報、岐阜県老健協会内での情報が命綱であった。
・感染対策:新型コロナウイルス・ノロウイルス等の感染者対策ができておらず、ボランティアの感染するリスクが大であった。
【まとめ】
今回、ボランティアに参加することで避難所の現状を知る機会となった。私たちが派遣された1.5次避難所は開設から1ヶ月が経過しており、コミュニティが確立し始めており、活動しやすい状況になっていたことは、これまでの避難所運営の効果と考えられる。しかしながら、ボランティア活動の集約団体が県なのか全老健なのか各種専門職団体なのか明確となっていないため、支援協力をしたくともできない状態があり、歯がゆい思いをしたのは私たちだけであろうか。また、発生直後の混乱次期であればやむを得ないと思うが、1ヶ月以上たった後で派遣先の勤務内容や宿泊状況等の情報が不足していることは、ボランティア意欲を無くす要因ともなる。また、介護報酬改定や新入職員の入職時期と重なったことは、4月以降のボランティア大幅減となったと思う。1.5次避難所を開設した当初は、ある程度の日数で2次避難所に移ることを想定されていたが、地震による被害を受けた地域が能登半島という高い高齢化率を背景に介護施設などの受け入れ先がなかなか見つからず、1週間以上滞在するケースが多数発生していた。このため一時的な避難が想定外に長期化したことで避難者の多くが要介護化し、様々な問題が発生したと考えられる。現に災害関連死者数が熊本地震のそれを上回ったとの報道がされている。いつ発生するかわからない東南海地震に備え、自治体・医療機関・高齢者施設・各種団体を一元化し、指揮系統を明確化することで、情報の集約化が可能と思う。今回の体験を一人でも多くの人たちと共有し、まずは介護老人保健施設が一丸となって災害に備える必要があると強く感じた。