講演情報
[15-O-S001-03]避難所での個別のケア、リハビリテーションの必要性災害派遣ボランティアでの活動
*徳丸 由香1 (1. 奈良県 介護老人保健施設ハビリス)
令和6年元旦に起きた能登半島地震により多くの方が被災された。今回、私は初めて災害派遣ボランティアに登録、2月中旬に避難所であるいしかわ総合スポーツセンターに介護チームの一員として訪れた。地震から約1か月半経過した被災者の環境変化に伴う心身機能の変化を身近に感じ、個別のケア、リハビリテーションの関わりが、今後の生活を前向きにスタートする為の支援の一つになると実感したので報告する。
【はじめに】
令和6年元旦に起きた能登半島地震により多くの方が被災された。今回、私は初めて災害派遣ボランティアに登録、2月中旬に避難所であるいしかわ総合スポーツセンターに介護チームの一員として訪れた。地震から約1か月半経過した被災者の環境変化に伴う心身機能の変化を身近に感じ、個別のケア、リハビリテーションの関わりが、今後の生活を前向きにスタートする為の支援の一つになると実感したので報告する。
【避難所の現状】
今回、私は災害ボランティアとして全老健災害派遣プロジェクトBに登録、マッチングし4日間という短期間であるが、派遣が決定し活動することになった。1.5次避難所であるいしかわ総合スポーツセンター内には約300~400個のテントが設置されていた。避難されている方はほとんどが高齢者であり、大半が石川県の能登半島(輪島、穴水、七尾、珠洲等)に住居を構えておられている方々であった。地震直後の1月中は300人近くの方が避難されていたが、派遣当時には100人前後に減少、若い方たちは2次避難所等へ移っておられるとの事であった。
私は介護チームとして日勤帯8時~20時まで活動、主に排泄、入浴、食事配膳といった日常生活支援、また全テントのラウンドが主であり、避難されている方々の様子観察、運動や作業活動の実施、テント内でのコミュニケーション等、柔軟に活動する事ができた。又、各自インカムを持っており、グループリーダーを中心に連絡を取り合いながら円滑に活動する事ができた。他にも医師、看護師、保健師、リハビリテーションスタッフ(PT・OT・ST)、管理栄養士、相談員、その他医療福祉関連スタッフ、一般のボランティアスタッフ等、多職種にわたるチームが、連携を取りながら活動していた。センター内には談話コーナーが数ケ所あり、テントから出て他者と交流する場が設けられていたが、多くの方はテント内に引きこもっておられた。
【環境変化に伴う心身機能の変化】
介護チームは24時間体制で一人一人の様子を観察しているので、元々介助が必要な方、介助は必要ないが不活動や意欲低下により介助が必要になっている方、介助に抵抗のある方等、様々な方がおられた。それをチームや多職種連携の中で、日々申し送り、情報共有を行った。私は作業療法士としてリハビリテーションの観点から、テント内の環境整備や二次的な廃用を予防するようなケアを考えながら活動していた。そして、日々の活動の中で被災者との距離が近づき、信頼関係を構築できるようになってくると、それぞれの思いを聞くことできた。
・先の短い人生、死んでもいいから自宅に帰りたい。
・子供たちに迷惑をかけたくない。
・自宅がどうなっているかわからない。どうなっているか確かめたい。
・そのうちこの場所もなくなり、どうやって生活をしたらいいのかわからない。
また、長期の避難生活により、以下のような事が起こりやすくなっていた。
・テント内での引きこもり生活による不活動、筋力や体力の低下によりフレイル状態になりやすい。
・先の見えない現状への不安感、他者との交流機会の減少により、メンタル面が低下しやすい。
・高齢者は、食べ物を粗末にできないという思いから、賞味期限切れの食べ物を保管し食べてしまうと、食中毒のリスクがある。
・食思の低下、水分摂取量の減少により、体調を崩しやすい。
・テント内が不衛生になりやすい。
【個別のケア・リハビリテーション】
被災者一人一人、支援内容は異なる。ICFの考えに基づき、心身機能・身体構造、活動、参加、またこれらの生活機能には被災者それぞれの個人因子、環境因子があり一つ一つに寄り添ったケア、リハビリテーションが必要になってくる。特に震災後の時間経過とともにその内容も変わってくる。その為、医師の診察、リハビリテーションスタッフによる運動指導や福祉用具の選定、管理栄養士による栄養指導、相談員による今後の生活についての相談等、あらゆる視点からのケアが必要であった。
被災者のAさん、70歳代の男性、身体機能は左半身麻痺による車椅子生活、ただし入浴以外の日常生活動作は概ね自立、認知機能は維持されておりコミュニケーション可能、被災前はヘルパーサービスを利用しながら独居で生活されていた。Aさんは日中テントの中で寝ていることが多く、不活動がすすんでいた。その為、リハビリテーションチームでは日常生活動作の維持、活動性の向上を目的に個別のリハビリテーションや集団体操等への参加を促していた。私達介護チームは24時間体制であるため、Aさんが望んでいる事、必要としている事を普段の会話の中でお聞きする事、リハビリテーションケアの観点から、今後の生活に必要な能力を日々の生活動作の中で維持向上して頂くよう意識して関わった。ボランティアの前では明るくお話しされるが、時に険しい表情をされていることがあり、ある時Aさんは、被災前の独居生活の継続が難しい事、施設生活になる事への不安を話して下さった。その内容は多職種で情報共有し、後日今後の生活について遠方の兄弟を含め話し合いをする事になったとお聞きした。
【考察】
災害発生後、長期の避難生活により心身機能、活動、参加の低下が生じやすい。今回、その中で個々の思いに寄り添ったケア、リハビリテーションの必要性を強く感じた。それはすぐに解決できることではなく、長期になる事を見据え、継続した支援が必要になる。ボランティア活動終了後、避難所の現状や活動内容を共に働くスタッフに伝達共有した。現地でのボランティア活動の継続や経済支援等、他人ごとではなく常に寄り添う気持ち、一緒に考えることが大切である。それは、私達が日々行っているご利用者へのケアやリハビリテーション支援にも共通していると考える。これからも被災された皆様が安心、安全な生活が取り戻せるようになるまで、関わりを継続していく。
令和6年元旦に起きた能登半島地震により多くの方が被災された。今回、私は初めて災害派遣ボランティアに登録、2月中旬に避難所であるいしかわ総合スポーツセンターに介護チームの一員として訪れた。地震から約1か月半経過した被災者の環境変化に伴う心身機能の変化を身近に感じ、個別のケア、リハビリテーションの関わりが、今後の生活を前向きにスタートする為の支援の一つになると実感したので報告する。
【避難所の現状】
今回、私は災害ボランティアとして全老健災害派遣プロジェクトBに登録、マッチングし4日間という短期間であるが、派遣が決定し活動することになった。1.5次避難所であるいしかわ総合スポーツセンター内には約300~400個のテントが設置されていた。避難されている方はほとんどが高齢者であり、大半が石川県の能登半島(輪島、穴水、七尾、珠洲等)に住居を構えておられている方々であった。地震直後の1月中は300人近くの方が避難されていたが、派遣当時には100人前後に減少、若い方たちは2次避難所等へ移っておられるとの事であった。
私は介護チームとして日勤帯8時~20時まで活動、主に排泄、入浴、食事配膳といった日常生活支援、また全テントのラウンドが主であり、避難されている方々の様子観察、運動や作業活動の実施、テント内でのコミュニケーション等、柔軟に活動する事ができた。又、各自インカムを持っており、グループリーダーを中心に連絡を取り合いながら円滑に活動する事ができた。他にも医師、看護師、保健師、リハビリテーションスタッフ(PT・OT・ST)、管理栄養士、相談員、その他医療福祉関連スタッフ、一般のボランティアスタッフ等、多職種にわたるチームが、連携を取りながら活動していた。センター内には談話コーナーが数ケ所あり、テントから出て他者と交流する場が設けられていたが、多くの方はテント内に引きこもっておられた。
【環境変化に伴う心身機能の変化】
介護チームは24時間体制で一人一人の様子を観察しているので、元々介助が必要な方、介助は必要ないが不活動や意欲低下により介助が必要になっている方、介助に抵抗のある方等、様々な方がおられた。それをチームや多職種連携の中で、日々申し送り、情報共有を行った。私は作業療法士としてリハビリテーションの観点から、テント内の環境整備や二次的な廃用を予防するようなケアを考えながら活動していた。そして、日々の活動の中で被災者との距離が近づき、信頼関係を構築できるようになってくると、それぞれの思いを聞くことできた。
・先の短い人生、死んでもいいから自宅に帰りたい。
・子供たちに迷惑をかけたくない。
・自宅がどうなっているかわからない。どうなっているか確かめたい。
・そのうちこの場所もなくなり、どうやって生活をしたらいいのかわからない。
また、長期の避難生活により、以下のような事が起こりやすくなっていた。
・テント内での引きこもり生活による不活動、筋力や体力の低下によりフレイル状態になりやすい。
・先の見えない現状への不安感、他者との交流機会の減少により、メンタル面が低下しやすい。
・高齢者は、食べ物を粗末にできないという思いから、賞味期限切れの食べ物を保管し食べてしまうと、食中毒のリスクがある。
・食思の低下、水分摂取量の減少により、体調を崩しやすい。
・テント内が不衛生になりやすい。
【個別のケア・リハビリテーション】
被災者一人一人、支援内容は異なる。ICFの考えに基づき、心身機能・身体構造、活動、参加、またこれらの生活機能には被災者それぞれの個人因子、環境因子があり一つ一つに寄り添ったケア、リハビリテーションが必要になってくる。特に震災後の時間経過とともにその内容も変わってくる。その為、医師の診察、リハビリテーションスタッフによる運動指導や福祉用具の選定、管理栄養士による栄養指導、相談員による今後の生活についての相談等、あらゆる視点からのケアが必要であった。
被災者のAさん、70歳代の男性、身体機能は左半身麻痺による車椅子生活、ただし入浴以外の日常生活動作は概ね自立、認知機能は維持されておりコミュニケーション可能、被災前はヘルパーサービスを利用しながら独居で生活されていた。Aさんは日中テントの中で寝ていることが多く、不活動がすすんでいた。その為、リハビリテーションチームでは日常生活動作の維持、活動性の向上を目的に個別のリハビリテーションや集団体操等への参加を促していた。私達介護チームは24時間体制であるため、Aさんが望んでいる事、必要としている事を普段の会話の中でお聞きする事、リハビリテーションケアの観点から、今後の生活に必要な能力を日々の生活動作の中で維持向上して頂くよう意識して関わった。ボランティアの前では明るくお話しされるが、時に険しい表情をされていることがあり、ある時Aさんは、被災前の独居生活の継続が難しい事、施設生活になる事への不安を話して下さった。その内容は多職種で情報共有し、後日今後の生活について遠方の兄弟を含め話し合いをする事になったとお聞きした。
【考察】
災害発生後、長期の避難生活により心身機能、活動、参加の低下が生じやすい。今回、その中で個々の思いに寄り添ったケア、リハビリテーションの必要性を強く感じた。それはすぐに解決できることではなく、長期になる事を見据え、継続した支援が必要になる。ボランティア活動終了後、避難所の現状や活動内容を共に働くスタッフに伝達共有した。現地でのボランティア活動の継続や経済支援等、他人ごとではなく常に寄り添う気持ち、一緒に考えることが大切である。それは、私達が日々行っているご利用者へのケアやリハビリテーション支援にも共通していると考える。これからも被災された皆様が安心、安全な生活が取り戻せるようになるまで、関わりを継続していく。