講演情報

[15-O-S001-07]1日,1分,1秒でも速く、私たちの施設に来てください令和6年能登半島地震の受け入れ報告と考察

*岡島 朝子1 (1. 石川県 金沢南ケアセンター)
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令和6年能登半島地震は、建物の倒壊、津波、火災、ライフラインや交通の寸断と、甚大な被害をもたらした。高齢者施設では命の危機が差し迫る中、県からの要請に従い当施設も計10名の受け入れを行った。本演題では、災害発生時の老健としての支援の現状を伝えることを目的とし、当施設の避難者受け入れ方法と、受け入れを行った金沢以南の施設にアンケート調査を行い現状を報告する。又発災後半年間の課題について考察する。
【はじめに】
石川県は今年の元旦に令和6年能登半島地震(以降地震)が発生し、現在も県内老健は全国の老健施設を始め様々な専門職・団体よりご支援をいただいている。当施設は金沢以南地域である野々市市に位置しており、地震では震度4を観測した。電気系統への被害で約2日間ご利用者には不自由をおかけしたが、幸いその後は通常のサービスを行うことができた。しかし能登地域の被害は甚大であり、金沢以南の高齢者施設は、被災施設の中で避難を選択した施設のご利用者をお受けしてきた。本演題では、災害発生時の老健としての支援の現状を伝えることを目的とし、当施設の避難者受け入れ方法と、受け入れを行った金沢以南の施設にアンケート調査を行い現状を報告する。又発災後半年間の課題について考察する。

【取り組みの報告】
1,避難者の受け入れについて
(1)経緯:地震発生後、DMATによる被災施設の状況確認が始まり、1月6日よりご利用者の避難が始まる。しかし避難先や移送方法の決定に時間がかかり、過酷な状況を強いられる施設が増えていった。1月8日金沢市のいしかわ総合スポーツセンター(スポセン)に1.5次避難所開設。1月9日金沢以南の施設に対して、定員5%増の受け入れ要請(1月15日に更に5%追加要請)が入った。現在までに計10名の受け入れを行った。
(2)準備段階:病床・場所・福祉用具の確保/受け入れ書式の作成/施設全体へのアナウンス/職員配置
(3)受け入れ段階:搬送手段の検討/生活用品の準備/情報収集と整理/感染症検査/家族連絡と契約
(4)その他:メール確認/空きベッド管理/避難者名簿管理等

2、アンケート調査について
(1)方法:郵送による定量調査
(2)期間:2024年7月1日発送/7月10日締め切り
(3)対象者及び配布数:石川県内の老健のうち金沢以南及び津幡町・内灘町の老健32施設
(4)回収数:27件(回収率84.3%)

【アンケート内容と結果】
Q1:2024年6月1日現在、避難者の受け入れを行っている(行った)か
A:はい27件/100%・いいえ0施設/0%
Q2:避難者の受け入れ人数は
A:0~4人(7件/25.9%)、5~9人(10件/37.0%)、10~14人(7件/25.9%)、15~19人(2件/7.4%)、20~24人(1件/3.7%) ※合計232人
Q3:2024年5月31日までの間に、継続した入所を希望され、災害救助法に基づく避難者ではなくなった方は何人いるか
A:0人(23件/85.2%)、1人(1件/3.7%)、2人(1件/3.7%)、5人(1件/3.7%)、10人(1件/3.7%)
Q4:2024年5月31日までの間に、退所された方は何人いるか、又その退所先は
A:元の生活場所に戻った12人、入院(退院後の再入所者除く)24人、他界8人、その他(他施設への退所等)16人 ※合計60人
Q5:算定区分に影響があったか。(2023年末の算定区分を記載してもらい、影響の有無とのクロス集計)
A:その他型(有0件/無2件)、基本型(有1件/無7件)、加算型(有2件/無7件)、強化型(有2件/無0件)、超強化型(有1件/無5件)
Q6:避難者受け入れに際しての、工夫や苦労、取り組み(自由記載内容を項目に分け件数を掲載)
A:居住環境7件、ご利用者の状態・ケア7件、情報6件、受け入れ体制5件、今後の意向5件、マンパワー4件、家族連絡3件、身元引受人3件、持ち物3件、送迎3件、物品3件、薬価・費用2件、金銭管理2件、1.5次避難所からの受け入れ2件、その他7件

【考察】
1、算定区分について:当施設では長期利用者も多い中、在宅復帰目的の方を一定数受け入れることで強化型を算定してきた。しかし避難者の受け入れ後、稼働率が高く在宅復帰目的の受け入れができず、強化型維持が困難になっている。ポイント集計に避難者を含めなくてもさしつかえないという通知であったが、空床にも避難者を受け入れたことで、含めないとベッド回転率が低下し、含めると入所前後訪問指導割合に影響する。いずれにしても、ポイント集計に影響する矛盾が生じている。アンケートでは「基本型」⇒「加算型」⇒「強化型」の順で“影響がある”の回答割合が増えるが、「超強化型」では、“影響が無い”が増えることから、当施設のように長期利用と在宅復帰利用が混在している施設への影響が強いものと思われる。例えば、避難者受け入れ前の算定区分を一定期間みなし認定するなど、災害発生時、避難者を受け入れたとしても不利益が出ない仕組みづくりが必要であると考える。
2、費用について:避難者の受け入れ時介護保険適応分の減免の通知のみが出ており、ご家族へは食費・居住費の費用負担のお願いをし、持ち物の無い方の衣類や髭剃りなどを寄付を募った。約1カ月後に避難者受け入れ施設を福祉避難所とみなし、これら費用を県に請求可能となったため、ご家族説明が二転三転し、初動時の物品調達に時間を要した。施設への受け入れ要請と同時に福祉避難所としてみなす決定をすることで、現場の混乱を防げたのではないかと考える。
3、薬価について:受け入れ時避難者の中には健康不良やADLの低下が認められる方もおられ、老健として果たせる役割も大きい。必ずしも老健からの受け入れに限らない中、薬価の施設負担についての補助がないことで、断らざるをえないケースがあった。少しでも多くの方をスピーディーに避難していただくことを考えると、避難者の薬価の施設負担に対する配慮が望ましい

【まとめ】
アンケート調査から少なくとも232人の受け入れを金沢以南の老健で行い、このうち現在も老健を避難所としてご利用の方は150人弱おられる結果であった。県の統計によると7月9日現在全体でも1800人余りの方が避難生活を送っておられる。これまでの全国からのご支援に感謝するとともに、故郷である能登に帰ることを希望される方々に、我々が退所支援を行える日が来るよう、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。