講演情報

[15-O-S002-01]高めていこう防災意識施設全体で見えてくる課題

*貝瀬 ちはる1、小野 航1、高木 雄太1 (1. 東京都 介護老人保健施設オネスティ南町田)
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実際に震災被害に遭い、ライフラインが寸断された場合どうやって食事や排泄介助などの対応していくのか、業務継続計画(以下BCPマニュアルとする)マニュアルは存在するが実際理解できているのか、手順通りに行える職員がどれだけいるのかが把握できていない現状がある。今回は、震災時に焦らず動ける知識をつけていき、実践での対策も必要だと思い、その取り組みをここに報告する。
【目的】 
昨今、東日本大震災や今年の能登半島地震のような大規模な震災被害が全国で増えてきている。介護施設での被害も甚大で、いつ私たちが住んでいる地域でも震災による被害が出るか分からない状況となっている。当施設では約150名のご利用者の方が生活をされている。実際に震災被害に遭い、ライフラインが寸断された場合どうやって食事や排泄介助などの対応していくのか、業務継続計画(以下BCPマニュアルとする)マニュアルは存在するが実際理解できているのか、手順通りに行える職員がどれだけいるのかが把握できていない現状がある。今回は、震災時に焦らず動ける知識をつけていき、実践での対策も必要だと思い、その取り組みをここに報告する。
【研究の方法】 
・BCPマニュアルの場所や発動基準、震災時の職員出勤について、飲料水、非常食の場所、備蓄品が何日分あるのか、夜間業務についての対応、出勤率に応じて業務の変化について把握できているかを全職員対象にQ&A方式でアンケートを実施。 
・アンケートの集計結果とアンケート内容の回答 
・アンケートに関しては2度同じ内容で行い、質問の回答を出す前と後で職員の意識の変化、対応手順について理解が出来たかを調査していく。 
・防災訓練を行い、震災時の動き方や炊き出し・給水訓練を行い、動き方の手順を把握していく。
【研究の結果】
参加者91名による1回目のQ&Aアンケート結果、質問内容について知らない・把握していないと回答する職員が多く、BCPマニュアルの場所約7割、震災時のBCP発動基準がについて約8割、災害時の職員の出勤について約7割、飲料水、非常食についての場所約7割、出勤数に応じて業務の変化については約9割が震災時の手順や動き方の把握が出来てない事が分かった。
この結果を可視化できるように円グラフを作成、今回のQ&Aアンケートによる把握が出来ていなかった事への回答を各フロアへ配布を行った。アンケートの結果として、実際に被災した際、BCPマニュアルのページを探して読んでいる時間が無いと言う声が上がった為、巡視、排泄、フロアでの動き、職員数での業務の変化について詳細を簡易化したフローチャートを作成し、各フロアの見やすい位置に掲示した。又、震災時、夜間帯での業務がBCPマニュアルだけではご利用者への巡視やオムツ交換の対応が分かりにくい意見があった為、見直しを行った。利用者は基本的に居室にて臥床して過ごして頂く。電気が使えない場合ベッドセンサーも使用できない為、各居室への巡視を強化し、居室にいるのが不安な方がいた場合、フロアでの見守りを行っていく。オムツ交換においても給水量の多いパットを使用し、交換回数を減らして対応していく事を回答結果として各部署に配布を行った。
また出勤率に応じて業務の内容を変えていく。3%なら見守り業務を行い他業務は原則行わない、30%なら安全と生命を守る為の必要最低限の業務を行って行く、50%なら食事、排泄を中心に対応する等BCPマニュアルに書かれていたものをフローチャートに記載した。
5月末に防災訓練及び炊き出し・給水訓練を行い、参加出来なかった職員に対して全員ではないが後日個別で訓練を行っている。非常食はご利用者の分で3日分あり、献立も決まっている。給水タンクの手順を載せたフローチャートを作成し各フロアへ配布を行った。
最後に2回目のアンケートを実施し、1回目のアンケートでは内容を把握している職員が約3割程度だったがフローチャートの作成、アンケート結果の回答、防災訓練及び炊き出し訓練を行った事により約5割まで把握している職員が増えた。
【考察、今後の課題】
実際取り組みを始めた時、1回目のアンケートではBCPマニュアルの場所、発動基準、災害時の出勤などを把握出来ている職員が約3割と少ない事に驚愕をすることとなった。アンケートの回答、防災訓練を行った後の2回目のアンケートでは、約5割の職員が把握できたと認知度が上がってきたが、まだ半分の職員が把握できていない状況だった。やはり全国的に地震が増えてきたと認識はあるが、実際に被災していないからか意識が低く、どこか他人事のようにとらえている職員も多くいる事を感じた。
アンケート結果で震災での動き方について再認識出来て今後に生かせそうとの意見や、円グラフで可視化できるのが良かったと意見もあった反面、アンケートの回答を以前見たことがあったが忘れてしまった、もっと職員に周知出来るようにしないと意味がないのではないかとの厳しい意見も上がっていた。
今回の取り組みでは主にアンケートを行い、フローチャートの作成やQ&Aでの回答を出す形となり、配布物が多く、個々に充分にアプローチが行なえていなかった。その為、厳しい意見の声を聴くことになったのではないかと感じた。今後の取り組みとして職員一人一人に震災時の手順等を指導し、速やか把握出来ている人を増やし、実際に震災が起こった場合、焦らず動ける様に防災意識を施設全体で上げていきたいと考えている。