講演情報

[15-O-S002-02]BCP(事業継続計画)策定とALP(人生継続計画)

*豊吉 雅哉1、長縄 伸幸1 (1. 岐阜県 老人保健施設サンバレーかかみ野、2. 特定医療法人フェニックス)
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BCP策定を進める中で見えてきた課題。作成を進める中で令和6年1月に発生した能登半島地震。被災現場での活動を通じて感じた情報収集・連携・共有の難しさ。今後医療と介護の連携強化が求められる中で、情報共有の重要性を強く認識した。現在、各務原市ではACPの普及を進め、個人の生活歴や意向を共有するALP(人生継続計画(人生アルバム)の取り組みが行われている。その取り組みも合わせて報告する。
【はじめに】令和3年度の介護報酬改定において策定が義務付けされたBCP。令和6年度の改定では未実施減算が新設され、経過措置により完成のための1年間が設けられたが、ついに本格運用が開始となった。
【目的・方法】フェニックスグループでは令和4年11月にBCP Projectを発足。エリアごとに自然災害編と感染症編の2チームに分け、厚生労働省ひな形をベースに半年間の研修カリキュラムを組みBCP作成に取り組んだ。感染症編においては新型コロナウイルス感染対策などの実際の取り組みを活かし、実践を踏まえたBCP策定となった。一方で難航したのが自然災害編。今まで大きな災害を経験したスタッフもなく事態の想定が難しく何をどれだけ揃えればよいのか手詰まりとなっていた。岐阜県は海なし県、事業所付近には大きな河川もないがサンバレーかかみ野においては他の事業所とエリアが異なり土砂災害警戒地域にあるため、大きな地震等があった場合どこに避難するのか、その後の生活(備品・ライフライン等)の確保はどのようにするか、地域の福祉避難所としてどのように受け入れをする体制をとるべきか、職員など人手は確保できるのか、また併設のデイサービスのご利用者はご自宅に送迎すべきか、ご自宅に誰もいない場合や独居の方はどうするのか等々、ご利用者一人ひとりの置かれた環境も異なるため解決すべき課題がたくさんあることに気づかされた。
作成を進めるなか迎えた令和6年1月1日、能登半島地震発生。能登半島地震では周りを海に囲まれた半島という立地の中で基幹道路の寸断や配電設備の損傷が起きたことにより、支援や復旧の手配が思うように進まず、多くの地域で停電や断水が長引いたのが特徴といえる。多くの方が被災され、現在も復旧活動が進められてる中、私は全老健災害相互支援プロジェクトとして令和6年2月25日から29日まで派遣員として活動。派遣場所はいしかわ総合スポーツセンター(1.5次避難所)。私が配属になったサブアリーナには約80名ほどの高齢者が避難生活を送られていた。主に要支援1から要介護2程度。現場は各団体が多数入り混じり、全国から集結したあらゆる職種の派遣員がそれぞれの分野に分かれ出来る最大限の活動をしていた。避難者の方は避難所生活で体力が落ちたせいなのか、介護認定を行う利用者様も多数みえケアマネ・ソーシャルワーカーチームが絶え間なく入れ替わりで調査を実施、帰る家がない為、施設への移行を早急に進めている様もあった。施設とのマッチングで避難所からの退所が決まる方も多数みえたが日常生活が失われ、ADL、認知機能が落ちていく様子を目の当たりにし、改めて身体と頭を動かず事の大切さ、IADLの大切さを実感した。そんな中で強く感じたのは情報(パーソナルデータ)収集・連携・共有の難しさである。自分たちは命を守るためにその人に何をするべきか。災害が発生したときに何の情報が必要であるか。医療情報・服薬状況・生活歴…。個々の事業所だけで動くのではなく、行政・地域・医療機関・介護保険事業所等すべてが一体となって個人の情報を集約できる『モノ』が必要であると改めて実感じた。
【考察】現在、各務原市では市民に向けて市独自のACP啓発のための冊子「人生アルバム」を令和3年に作成し、その後、普及啓発推進会議を中心にまずは各務原市内の医療・介護専門職を対象に人生会議の浸透を深め、今後市民への啓発活動を進めている。ACPは人生の終末における医療とケアに重点が置かれているが、ALP(人生継続計画)は、本人自身が自分の人生について考えることから始めている。関係する専門職がそれぞれ得た本人の生活歴、価値観、人生観、意向などの情報を「人生アルバム」を介していつでも共有でき、引き継いでいきたいと考えている。特に、2024年度診療報酬・介護報酬同時改定において、密接な医療と介護の連携が推進されており、その情報共有の重要性がますます必要とされている。さらに、自然災害や感染症などの対応においては、個人の病歴や生活状況、終末期のあり方(ACP)が重要視されることが多い。個人管理のもとで情報を集約した人生継続計画(人生アルバム)が役立つと私達は確信した。当フェニックスグループでも在宅療養支援・在宅復帰支援チームを作り最初の関わりから「人生アルバム」を活用している。その取り組みも併せて報告する。