講演情報

[15-O-S002-03]BCP(事業継続計画)の作成をとしての学び

*伊藤 幸子1、横式 真澄1 (1. 神奈川県 レストア川崎、2. レストア川崎)
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当施設はBCPを構築し、職員間の連携強化、利用者様の安全安心確保、事業継続性を達成。異なる職種間の意見交換により、業務の整理、応援体制の構築、部門ごとの役割明確化、業務の見える化を実現しました。また、備蓄品の管理体制の改善、介護・看護業務の見直し、事務部門の役割再認識など、様々な課題に気づきました。今後、BCPの運用と改善を継続し利用者の安全安心と事業継続性を確保し続けることは介護施設にとって不可欠な経営課題です
【はじめに】 令和3年度介護保険改定により、介護施設におけるBCP(事業継続計画)の策定が義務化されました。BCPは予期せぬ災害や緊急事態に備えて、組織が事業活動を継続するための手段です。当施設では2021年~2022年に新型コロナウイルス感染症クラスターが発生し、初めての対応に混乱が生じました。組織的な体制が整っていなかったため、人員配置、物品の補充、ゾーニング、大量の感染ゴミ処理など会議で毎回議論しながら手探りで対応を進める状況でした。この経験を踏まえ今回BCPを作成することで1:日々の業務の整理 2:応援体制の構築 3:部門ごとの役割の明確化 4:業務の見える化を図ることが出来ました。その過程を報告します。
【目的】BCPを作成する過程で互いの部署の業務内容を知り、有事の際に信頼できる連携を図ることが出来る。
【作成期間】令和5年3月~令和6年3月
【作成メンバー】職種:施設長・事務長・療養部長・看護師・介護福祉士・相談員・リハビリ科・栄養科・事務職員・BCP作成援助者 計10名
【作成過程】厚生労働省のひな型をモデルに作成構成メンバーの役割について作成各部署の全業務の書き出しフェーズごとの人員配置の検討・優先業務決定・継続業務・中止業務の選択・細かい業務分担の決定・発災時の緊急連絡方法の検討・日常物品備蓄品リストの作成・ローリングストックの方法を作成・応援体制の条件や方法について決定・ごみ処理方法の決定物品運搬・補充方法についての検討・決定様式・補充資料の作成シュミレーション(机上訓練・演習)
【結果】BCP作成中の気づきとして、各職種の異なるメンバーが参加したことでBCPにおける視点の違いがあることに気付くことが出来た。同じ話し合いの場に集まり、それぞれの立場から話しを聞くことで平時の各部署の業務の内容や動きが分かり、またそれらの業務内容を時間列で見ることで有事の時の応援体制の取り方や、平時から行えることなどを発見することができた。さらに、平時から管理されていると思っていた備蓄品については在庫管理が雑然とした管理になっており、使用頻度が高い物品の数は少なく、使用頻度が少ない物品の在庫が多く残っていることなどを知ることが出来た。これらの物品管理について、改善していく必要性を感じた。介護・看護の業務についても有事の時のおむつ交換の方法を検討した際、平時からのやり方を見直すきっかけとなった。
また、今回BCPを作成したことで現場を通じて部分的な関わりでしか見えていなかった事務の役割の多さを知ることが出来、有事に対しての要としてその役割を明確にすることでBCPを作成していく鍵になることが見えた。
【考察】異なる職種間が業務を時間軸や内容にまで入り話し合うことは今までなく、業務を継続させることにおいても、それぞれ違う役割を担当している中で、有事の時どこの部署に何が依頼でき、何が出来ないのか。業務として有事の時にどのような業務が必要なのかを考えるため、各部署の平時の業務を書き出していく中で、自部署の無駄な業務や、当たり前と思っていた業務がなされていない事にも気づいた。また施設してどのようにして事業を継続させて行くのか。話し合いを幾度も重ね、お互いが協同した業務を作りあげていくことで連帯感が生まれたことは大きな収穫だと考える。今までは、なんとなく〇〇部署がやっていることであった認識が、この業務はこの部署が担当している。有事の時はこの部署がこれを行う。という所まで作成できたことは、日頃の業務改善にも繋げられたと考える。
【結論】BCPの作成を通して、施設として組織的な危機管理体制を構築し、職員間の連係を強化するこができた。今後もBCPの運用と改善を継続することで、利用者の安全・安心を守り事業継続性を確保出来るようにしていく。
【今後の課題】1:BCPの見直し・改訂、職員研修、地域連携の強化、業務改善、事務部門の強化を通して利用者の安全・安心と事業継続性の確保。2:新型コロナウイルスだけでなく、未知なる感染症発生時にも落ち着いて行動ができるための平時からの備えの強化を図る。