講演情報
[15-O-S002-06]「不安」からの脱却~職員の災害対応力への支援~
*櫻田 和世1、高橋 智子1、東谷 三和1、後藤 道洋1、山本 昌也1 (1. 愛媛県 社会福祉法人恩賜財団済生会松山老人保健施設にぎたつ)
南海トラフ地震への危惧は高まっており当施設地域の想定被害は最大震度6強、津波3Mが約2時間で到達とされている。また2024年から介護報酬改定によるBCP策定の義務化もあり、既存の大規模地震マニュアルを再考する必要があった。さらに夜勤帯は少人数での体制である為、職員一人一人が災害に対して当事者意識を持てる「災害に強い施設」の風土づくりを目指した。今回は非常災害対策委員会における地震対策の取り組みを紹介する。
【はじめに】
近年南海トラフ地震への危惧は高まっており当施設の地域においてハザードマップにおける想定被害は最大震度6強、津波3M(当施設の海抜も含む)が約2時間で到達すると発表されている。また2024年度からは介護報酬の改定によりBCP策定の義務化もあり、これまでの施設内における大規模地震マニュアルを再考する必要があった。
【目的】
当施設の入所フロアは2階~4階までの3フロアあり、各フロア25~29名の入所者が生活している。夜勤帯はそれぞれ各フロアに介護職員1名と全フロアを対応する看護師1名の合計4名の職員が勤務している状況であり、これまでの災害マニュアルでは夜勤帯で災害が発生した場合はマンパワーの不足が問題であった。そこで限られた人員で災害に対応する為に「やるべき事」を明確化し「実践できる職員」の育成と整備の充実を目指す事となった。
【方法】
先ず始めに施設の地震・津波の被害想定を知る事から始めた。ハザードマップを用いて当入所施設の他、当該グループにおけるサポート体制も考慮する必要がある為各サービス拠点における被害想定をまとめた。次に当施設や併設病院との整備状況等のライフラインの仕組みを共有し、自施設を知った上でアクションプランを策定する事とした。アクションプランは、1.必要物品の整備.2.体験型訓練の導入.3.BCPの策定とした。
先ず必要物品の整備について「情報系」と「物品系」を区分けし検討する事とした。
「情報系」としては情報収集に着目し、施設内ではLINEワークス、施設外ではハザードトーク(災害用無線機)を活用する事とした。こうする事で施設マップのデータ画像も添付しスピーディかつ的確に被害状況を共有する事が可能となった。
「物品系」としては、職員一人一人に緊急用の笛の提供を行うと共に、ヘルメットの設置数も増加した。また災害発生時にクロノロジーシートとして活用できる「どこでもシート」の購入や、災害対策本部の第1候補である2階ホールの窓ガラスに飛散防止フィルムを貼り【安全な場所】の確保を行った。
次に体験型訓練の導入を行った。訓練内容は業務に負担が掛からないように小規模訓練を取り入れ、散水訓練・災害トイレ設置訓練・備蓄運搬訓練などを実施した。各部署の委員会メンバーが指導者となって実施出来る様に、また動画なども作成し各職員が施設内WEBにていつでも閲覧できるようにした。さらに入職3年未満の職員については、併設病院を含めた「避難経路確認ツアー」を実施。委員会メンバーが添乗員となって、ツアー形式で通用口や病院内の非常階段の位置を知る事ができた。全職員にも災害に関する理解度テストも導入した。
最後にBCP策定を各部署ヒアリング形式で実施した。当施設は入所施設の他、デイケア・訪問介護・居宅支援事業所等9事業者、また6建物が存在する。その為外部アドバイザー協働のもと、職員の異動やサポート職員にも対応できるよう統一したフォーマットと介助場面別の対応を取り入れる等見やすさにも工夫した。
【結果】
職員について災害に対するアンケートを実施したところ様々な意見を頂いた。「消火散水栓を実際に使用して訓練を行った事はとても大切だと思った。本当に災害が起こった時に使った事がある・ないで結果が違うと思う」「災害に対する活動が具体化され組織に対する働きかけが目に見えるものになっていた」「能登半島地震の災害もあり、地震について考える事が強くなった、目に見えるところへのヘルメット設置も印象が強かった」等のポジティブな意見が多く、個人レベルでの小さな不安や疑問点を解消する事が施設全体での防災力・対応力の向上に繋がる事を改めて実感した結果となった。
【考察】
当施設は未だ大規模地震を体験した事が無く、未知のものに対してどのような対策をすべきかを立地条件や被害想定を照らし合わせながらBCP策定を進めてきた。
介護施設の職員は日頃から利用者の日常生活リハビリを担っており、今後は地域への発信が求められてくる事が予想される。8月に開催の併設病院合同の夏祭りにて地域住民向けの災害ブースを設け、そこではAR(拡張現実)を使った被災体験を実施する予定である。災害を自身の事として考える機会を地域の方にも持って頂く事も啓発活動のひとつとなればと考えている。
有意識から無意識へ、自ら行動できる職員が増えていく事、その風土づくりが災害に強い施設になると考えている。
近年南海トラフ地震への危惧は高まっており当施設の地域においてハザードマップにおける想定被害は最大震度6強、津波3M(当施設の海抜も含む)が約2時間で到達すると発表されている。また2024年度からは介護報酬の改定によりBCP策定の義務化もあり、これまでの施設内における大規模地震マニュアルを再考する必要があった。
【目的】
当施設の入所フロアは2階~4階までの3フロアあり、各フロア25~29名の入所者が生活している。夜勤帯はそれぞれ各フロアに介護職員1名と全フロアを対応する看護師1名の合計4名の職員が勤務している状況であり、これまでの災害マニュアルでは夜勤帯で災害が発生した場合はマンパワーの不足が問題であった。そこで限られた人員で災害に対応する為に「やるべき事」を明確化し「実践できる職員」の育成と整備の充実を目指す事となった。
【方法】
先ず始めに施設の地震・津波の被害想定を知る事から始めた。ハザードマップを用いて当入所施設の他、当該グループにおけるサポート体制も考慮する必要がある為各サービス拠点における被害想定をまとめた。次に当施設や併設病院との整備状況等のライフラインの仕組みを共有し、自施設を知った上でアクションプランを策定する事とした。アクションプランは、1.必要物品の整備.2.体験型訓練の導入.3.BCPの策定とした。
先ず必要物品の整備について「情報系」と「物品系」を区分けし検討する事とした。
「情報系」としては情報収集に着目し、施設内ではLINEワークス、施設外ではハザードトーク(災害用無線機)を活用する事とした。こうする事で施設マップのデータ画像も添付しスピーディかつ的確に被害状況を共有する事が可能となった。
「物品系」としては、職員一人一人に緊急用の笛の提供を行うと共に、ヘルメットの設置数も増加した。また災害発生時にクロノロジーシートとして活用できる「どこでもシート」の購入や、災害対策本部の第1候補である2階ホールの窓ガラスに飛散防止フィルムを貼り【安全な場所】の確保を行った。
次に体験型訓練の導入を行った。訓練内容は業務に負担が掛からないように小規模訓練を取り入れ、散水訓練・災害トイレ設置訓練・備蓄運搬訓練などを実施した。各部署の委員会メンバーが指導者となって実施出来る様に、また動画なども作成し各職員が施設内WEBにていつでも閲覧できるようにした。さらに入職3年未満の職員については、併設病院を含めた「避難経路確認ツアー」を実施。委員会メンバーが添乗員となって、ツアー形式で通用口や病院内の非常階段の位置を知る事ができた。全職員にも災害に関する理解度テストも導入した。
最後にBCP策定を各部署ヒアリング形式で実施した。当施設は入所施設の他、デイケア・訪問介護・居宅支援事業所等9事業者、また6建物が存在する。その為外部アドバイザー協働のもと、職員の異動やサポート職員にも対応できるよう統一したフォーマットと介助場面別の対応を取り入れる等見やすさにも工夫した。
【結果】
職員について災害に対するアンケートを実施したところ様々な意見を頂いた。「消火散水栓を実際に使用して訓練を行った事はとても大切だと思った。本当に災害が起こった時に使った事がある・ないで結果が違うと思う」「災害に対する活動が具体化され組織に対する働きかけが目に見えるものになっていた」「能登半島地震の災害もあり、地震について考える事が強くなった、目に見えるところへのヘルメット設置も印象が強かった」等のポジティブな意見が多く、個人レベルでの小さな不安や疑問点を解消する事が施設全体での防災力・対応力の向上に繋がる事を改めて実感した結果となった。
【考察】
当施設は未だ大規模地震を体験した事が無く、未知のものに対してどのような対策をすべきかを立地条件や被害想定を照らし合わせながらBCP策定を進めてきた。
介護施設の職員は日頃から利用者の日常生活リハビリを担っており、今後は地域への発信が求められてくる事が予想される。8月に開催の併設病院合同の夏祭りにて地域住民向けの災害ブースを設け、そこではAR(拡張現実)を使った被災体験を実施する予定である。災害を自身の事として考える機会を地域の方にも持って頂く事も啓発活動のひとつとなればと考えている。
有意識から無意識へ、自ら行動できる職員が増えていく事、その風土づくりが災害に強い施設になると考えている。