講演情報

[15-O-P209-02]虐待を未然に防ぐために-職員の意識調査を実施して-

*佐々木  信宏1 (1. 岩手県 介護老人保健施設 敬愛荘)
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虐待防止委員会にて、虐待に関して利用者の尊厳を守り日々業務を行っているか、知識はどの程度かを知るために意識調査を行った。内容は、15項目の質問と記述式4項目を集計し、その結果から、虐待に関して理解している項目と理解が足りない項目について把握することができた。委員会内では、今後虐待防止の取り組みの具体的な目標、研修の内容を検討することができた。
【はじめに】介護業界では、コロナ過の受け入れ制限等により、外部の接点が少なくなり虐待を潜在化し、虐待事件が増加している現状がある。
令和5年度9月に虐待防止委員会を発足した。施設職員の虐待に関する意識調査を実施し、虐待に関して利用者の尊厳を守るために日々業務を行っているか、知識を得ているかを知り今後の委員会活動に活かしたいと考えた。
【目的】虐待に関する意識調査を実施し、施設職員が虐待に関してどのように意識しているかを調査集計し現状を把握し、今後の課題を明確にする。
【方法】
1.期間:令和6年4月~6月
2.対象:職員64名
3.方法:委員会にてアンケートの内容の決定。質問項目の決定。15項目の質問とし、「している」「どちらともいえない」「していない」「わからない」の4項目で評価した。記述式の項目は5項目の内容とする。質問項目は単純集計し記述した内容をまとめる。虐待防止委員会での議題の抽出と今後の方針について検討した。
【結果】アンケートは職員64名中53名回答し回答率は82.8%だった。
アンケート結果での当施設職員の「していない」の項目としては「4.声かけなしに介助していないか」「5.個人情報の取り扱いについて」「7.必要物品を使用できない状態にしていないか」「8.コールの無視」「9.食事・入浴の無理強い」「10.人格を無視した関わり」「11.利用者・家族の言動をあざ笑う」「12.配慮に欠けたケア」「13.いい加減な受け答え」という項目に関して多かった。
「している」という項目としては、「2.あだ名やちゃん呼びや呼び捨て」「3.〇〇してやダメ!の口調で話す。」「6.ちょっと待ってが多い」の項目が25%前後の回答が見られた。
「どちらともいえない」という項目に関しては、「1.利用者に友達感覚で接する」「14.職場でのコミュニケーションがとりやすいか」が35%前後と多かった。
「15.自分は虐待を行わない自身がありますか」の問いには、「自信がある」が40%、「どちらともいえない」38%、「ない」8%、「わからない」15%という結果だった。
記述式アンケート結果については『同じことを訴えてくる利用者の対応』や『せん妄状態・帰宅願望が強い』『暴力的な利用者』『仕事に追われている』が多かった。
「2.ストレスを引きずらないための解消方法」については、『利用者の病気や症状を落ち着くように検討』『趣味や買い物等好きな事をする。『気分転換を図る』が多く記述があった。
「3.利用者の声掛けで気を付けること」に関しては、『笑顔』『声のトーン・声の質』『なれ合いにならないように尊厳をもって接する。』『顔の表情や動きをみる』などがあった。
「4.困ったときやつらい時に話を聞いてくれる人はいますか」に関しては、家族や職場の上司・同僚に話を聞いてもらっているという回答があった。
「5.虐待防止について知りたい内容」については、『虐待なのかが不安な為気づきのある研修』や『防止策・具体例を挙げた研修』『スピーチロック』についての内容が挙げられた。
【考察】委員会での話し合いにおいて「していない」の多い項目に関しては、職員が明確にないと理解したうえで回答していた。これは、『笑顔で接する』ことや『声のトーンや声の質に気を付ける』の回答などより、行動を意識していると考える。特に人格を無視した関わりに関して89%の職員が意識して行っているとの回答があり、利用者の性格等を理解したうえで対応している様子が見られる。良い点はそのまま継続し、職員間で共有していく。
「している」の項目に関しては、回答している職員は少ないものの、記述式アンケートであった『同じことを訴える利用者の対応』や『せん妄状態・帰宅願望が強い』『暴力的な利用者』「仕事に追われている」の記述より一人の職員が対応する際にうまく対応が出来ず、何度も同じ内容の説明を行うことがストレスとなり表出してしまうと考える。そのため、職員間で話し合い担当の職員を変えるなどのストレスの緩和を図っていくなどの工夫は必要である。
「どちらともいえない」の回答が多い『友達感覚で話す』の項目は、職員自身としては、親しみを持ってそのような声掛けとなっているとの記述回答があったがそのことが利用者本人の意思に沿うものかが分からない様子があった。そのことを踏まえ虐待委員会にて説明する際の話し方について「ちゃんや呼び捨てせずに信頼関係を構築しながら接していく」という目標とした。
「15.虐待しない自身があるか」に関しては、不適切な対応がどのような内容なのか分からないまま職務をしていた為『どちらともいえない』『分からない』が多い原因になっている。日々の業務での一人にかかる負担を軽減する方法の検討や虐待について研修を実施し、気づきにつながるように実施することとした。
個々の葛藤がある職員が多く、ストレスの軽減方法や効率的な気付きを得られるような研修を実施してくことで改善すると考えられる。アンケート実施後に利用者への対応に気を付ける職員も増えており防止活動は一定の効果があると考える。今後も委員会の虐待防止活動を通じて虐待の無い良い施設を目指していきたい。
【まとめ】
1.虐待防止において意識調査を行うことで、現状と職員の現在の意識の状態を知ることができ、施設内での方向性を検討することができた。
2.意識調査後、職員が言動や対応などを気を付けるような状況がみられ、意識向上につながった。
3.職員が虐待しない、させないよう今後も委員会活動を活発にしていきたい。