講演情報
[15-O-O004-02]新型コロナウイルスのクラスター経験を通して~発生から終息までの取り組み~
*千島 愛理1、野坂 裕哉1 (1. 埼玉県 介護老人保健施設なでしこ)
・はじめに クラスターの発生・経過 全フロアー、職員の感染拡大・対策 感染管理認定看護師の指導・課題 意識の低下、連携の不足・まとめ 意識づけの徹底
1.はじめに
当施設は入所定員100床(一般療養棟60床・認知症専門棟40床)・通所リハビリ定員25名の介護老人保健施設である。
今回9月に利用者64名、職員21名の新型コロナウイルス感染症によるクラスターが発生。
全フロアに陽性者が発生、職員の感染による人手不足により、今までのマニュアル通りの動きでは間に合わず、日々臨機応変に動く必要があった。
今回の経験を通して見えた課題、今後の取り組みについて報告する。
【対象期間:令和5年9月11日~9月29日】
2.経過
令和5年9月11日 3階認知症専門棟のフロアの利用者1名、4階一般療養棟のフロアの利用者2名、厨房職員2名の新型コロナウイルス陽性者が発生。
5類に移行後、初の陽性者が発生してしまった。当施設でコロナ陽性者が発生するのは今回で4回目であった。
その時点で、陽性者の部屋をレッドゾーンとし、居室隔離を開始。ゾーニングや物品の準備、家族対応等の初期対応は迅速に行えた。
しかし、翌日には新たに利用者20名の陽性者が発生。2階一般療養棟を含む全ての居室フロアで陽性者が発生してしまった。
今までは陽性者が発生しても、各フロア対応で抑えられており、10名以上のクラスターになることは無かった。
しかし、今回の発生源が厨房職員からということもあり、瞬く間に全フロアへと広がってしまった。
特に3階フロアは認知症専門棟のため、利用者に対しての指示がなかなか入らず、居室隔離を続けることが困難となり、
9月12日の時点で、陽性者の居室が過半数を超える事態となった。
そのため、新型コロナウイルスに感染していない利用者の居室を隔離し、陽性者の居室を隔離解除し、レッドゾーンとグリーンゾーンを逆転させた。
4階フロアは、比較的ADLの自立度が高い利用者がいる一般療養棟のフロアであり、幸いなことにエレベーターを挟み、
左右でレッドゾーン、グリーンゾーンの居室が分かれていたため、居室ごとの隔離は行わず、パーテーションで廊下を仕切り、トイレや洗面所等を分けることが出来た。
また、同じく一般療養棟の2階フロアは、陽性者がいる部屋の居室隔離を引き続き行っていた。
9月13日に、新たに厨房職員1名、介護職員1名、利用者7名の陽性者が発生。
9月14日に、利用者16名、職員7名の陽性者が発生。
2階フロアの陽性者の居室が過半数を超えたため、3階フロアと同様にレッドゾーンとグリーンゾーンを逆転させて対応を開始した。
職員の罹患等により看護師と介護士が職員不足のため、理学療法士、支援相談員、通所リハビリスタッフ、栄養士を含めた全職員での現場対応を開始した。
3.対策
9月14日の保健所職員との話し合いの中で、感染管理認定看護師の指導を受けた方がいいと助言をもらった。
保健所を通して依頼すると、翌日には感染管理認定看護師の指導を受けられることになり、ゾーニングの見直しと以下のことを指摘された。
1.グリーンゾーンでPPEを着用し、イエローゾーンで脱ぐことを徹底すること。
2.ガウン等の物品とイエローゾーンのゴミ箱が近いので離すこと。
3.物品は基本的にグリーンゾーンで保管する必要があるため、イエローゾーンにゴミ箱と消毒以外は置かないこと。
4.食事の配膳、下膳時のエレベーターを分けること。
5.配膳車の消毒の徹底すること。
6.レッドゾーンであるホールに、職員が使用するフェイスシールドを保管しないこと。
7.今回、グリーンゾーンの居室を隔離しているため、グリーンゾーン利用者の使用物品をディスポーザブルに変更すること。
以上の7項目の指導を受け、全職員で改善及び対応を行った。
その後、9月15日~21日の期間に利用者17名、職員10名の陽性者が発生。
利用者の最終陽性者は9月18日であり、当施設の規定に従って11日後の29日の隔離解除を目標に、全職員で対応を行った。
物品の在庫はゆとりをもって確保していたが、ここまでのクラスターは想定しておらず、保健所や福祉事務所と連携を取り合い、
ガウンやキャップ等の物資の支援をもらった。
9月29日 全フロア隔離解除となり、終息した。
4.課題
2類から5類に移行したことで、感染症に対する意識が低下していた。
数ヶ月ぶりの新型コロナウイルス陽性者が発生したこともあり、PPEの正しい着脱手順を覚えていない職員がいた。
今までとは違うゾーニング方法だったため、レッドゾーンで物品を保管したり、イエローゾーンに余分なものが置いてあるなどして混乱を招いてしまった。
レッドゾーン対応をしたことがない職員も多数おり、指導が行き届いていなかった。
厨房委託業者と連携がとれていなかった。
感染症のBCPが周知しきれておらず、機能していなかった。
5.まとめ
今回のクラスターでは、いつ終息を迎えるのかという不安や、自分自身が感染しないかという
不安のなかで業務を遂行することは、想像を絶するものであった。
今後、厨房委託業者を含めた全職員に感染症のBCPを周知し、またBCPの研修や訓練を通して、
有事の際はチームで動けるようにしておく。
また、新規の入職者に対しても、感染症に関する研修はもとより、日頃から感染症の意識付けを行っていくことを徹底していきたい。
当施設は入所定員100床(一般療養棟60床・認知症専門棟40床)・通所リハビリ定員25名の介護老人保健施設である。
今回9月に利用者64名、職員21名の新型コロナウイルス感染症によるクラスターが発生。
全フロアに陽性者が発生、職員の感染による人手不足により、今までのマニュアル通りの動きでは間に合わず、日々臨機応変に動く必要があった。
今回の経験を通して見えた課題、今後の取り組みについて報告する。
【対象期間:令和5年9月11日~9月29日】
2.経過
令和5年9月11日 3階認知症専門棟のフロアの利用者1名、4階一般療養棟のフロアの利用者2名、厨房職員2名の新型コロナウイルス陽性者が発生。
5類に移行後、初の陽性者が発生してしまった。当施設でコロナ陽性者が発生するのは今回で4回目であった。
その時点で、陽性者の部屋をレッドゾーンとし、居室隔離を開始。ゾーニングや物品の準備、家族対応等の初期対応は迅速に行えた。
しかし、翌日には新たに利用者20名の陽性者が発生。2階一般療養棟を含む全ての居室フロアで陽性者が発生してしまった。
今までは陽性者が発生しても、各フロア対応で抑えられており、10名以上のクラスターになることは無かった。
しかし、今回の発生源が厨房職員からということもあり、瞬く間に全フロアへと広がってしまった。
特に3階フロアは認知症専門棟のため、利用者に対しての指示がなかなか入らず、居室隔離を続けることが困難となり、
9月12日の時点で、陽性者の居室が過半数を超える事態となった。
そのため、新型コロナウイルスに感染していない利用者の居室を隔離し、陽性者の居室を隔離解除し、レッドゾーンとグリーンゾーンを逆転させた。
4階フロアは、比較的ADLの自立度が高い利用者がいる一般療養棟のフロアであり、幸いなことにエレベーターを挟み、
左右でレッドゾーン、グリーンゾーンの居室が分かれていたため、居室ごとの隔離は行わず、パーテーションで廊下を仕切り、トイレや洗面所等を分けることが出来た。
また、同じく一般療養棟の2階フロアは、陽性者がいる部屋の居室隔離を引き続き行っていた。
9月13日に、新たに厨房職員1名、介護職員1名、利用者7名の陽性者が発生。
9月14日に、利用者16名、職員7名の陽性者が発生。
2階フロアの陽性者の居室が過半数を超えたため、3階フロアと同様にレッドゾーンとグリーンゾーンを逆転させて対応を開始した。
職員の罹患等により看護師と介護士が職員不足のため、理学療法士、支援相談員、通所リハビリスタッフ、栄養士を含めた全職員での現場対応を開始した。
3.対策
9月14日の保健所職員との話し合いの中で、感染管理認定看護師の指導を受けた方がいいと助言をもらった。
保健所を通して依頼すると、翌日には感染管理認定看護師の指導を受けられることになり、ゾーニングの見直しと以下のことを指摘された。
1.グリーンゾーンでPPEを着用し、イエローゾーンで脱ぐことを徹底すること。
2.ガウン等の物品とイエローゾーンのゴミ箱が近いので離すこと。
3.物品は基本的にグリーンゾーンで保管する必要があるため、イエローゾーンにゴミ箱と消毒以外は置かないこと。
4.食事の配膳、下膳時のエレベーターを分けること。
5.配膳車の消毒の徹底すること。
6.レッドゾーンであるホールに、職員が使用するフェイスシールドを保管しないこと。
7.今回、グリーンゾーンの居室を隔離しているため、グリーンゾーン利用者の使用物品をディスポーザブルに変更すること。
以上の7項目の指導を受け、全職員で改善及び対応を行った。
その後、9月15日~21日の期間に利用者17名、職員10名の陽性者が発生。
利用者の最終陽性者は9月18日であり、当施設の規定に従って11日後の29日の隔離解除を目標に、全職員で対応を行った。
物品の在庫はゆとりをもって確保していたが、ここまでのクラスターは想定しておらず、保健所や福祉事務所と連携を取り合い、
ガウンやキャップ等の物資の支援をもらった。
9月29日 全フロア隔離解除となり、終息した。
4.課題
2類から5類に移行したことで、感染症に対する意識が低下していた。
数ヶ月ぶりの新型コロナウイルス陽性者が発生したこともあり、PPEの正しい着脱手順を覚えていない職員がいた。
今までとは違うゾーニング方法だったため、レッドゾーンで物品を保管したり、イエローゾーンに余分なものが置いてあるなどして混乱を招いてしまった。
レッドゾーン対応をしたことがない職員も多数おり、指導が行き届いていなかった。
厨房委託業者と連携がとれていなかった。
感染症のBCPが周知しきれておらず、機能していなかった。
5.まとめ
今回のクラスターでは、いつ終息を迎えるのかという不安や、自分自身が感染しないかという
不安のなかで業務を遂行することは、想像を絶するものであった。
今後、厨房委託業者を含めた全職員に感染症のBCPを周知し、またBCPの研修や訓練を通して、
有事の際はチームで動けるようにしておく。
また、新規の入職者に対しても、感染症に関する研修はもとより、日頃から感染症の意識付けを行っていくことを徹底していきたい。