講演情報
[15-O-O004-04]面会方法とCOVID-19の関連性
*鈴木 恵理華1、塩崎 純也1、落合 由起子1 (1. 静岡県 介護老人保健施設さわだの庄)
感染症発生に面会は影響するのか評価・検討するために、静岡県内老健34施設にアンケート調査を実施した。その結果、面会が原因となった感染発症は0件であり、職員の持ち込みが原因となった発症は25件であった。高齢者施設での感染症発生は職員の意識づけで大きく左右される結果となり、面会の重要性と職員教育を改めて考えたためここに報告する。
≪はじめに≫
2023年5月8日よりコロナは5類へ変更となったが、この1年間は高齢者施設にとって感染の恐怖は変わらず存在している。そのような中で面会の再会や中学生の職業体験を受け入れてきたが当施設では5類移行後のクラスター発生は現時点(2024年5月7日)まで起こらなかった。面会方法や職員の意識づけがこの1年間どうであったか、また他施設の面会方法と感染発症はどうであったかアンケート調査を実施したためここに報告する。
≪方法≫
静岡県内老人保健施設70カ所に手紙にてアンケート実施。
当施設職員(医師、看護師、介護職員、リハ職員、ケアマネ、相談員)50名にアンケート調査実施。
≪結果≫
老健施設へのアンケート結果 回答率:約48%(70施設中34施設回答)
・コロナが5類へ移行(2024.5.8)後の面会方法: 面会謝絶0施設 条件付き面会34施設
・入所者の感染が発生した回数と感染原因(感染はコロナとインフルエンザに限定した)
当施設職員へのアンケート結果 回答率:約98% (職員50名中49人回答)
○コロナ感染クラスター経験者: 40/49名
○コロナ認識の変化: 変化した40/49名 変化しない4/49名 その他1/49名
○コロナ感染対策気を付けていることが: ある45名 ない4名(すべて介護職員)
○感染対策として気を付けていることの具体的内容:
・外出時もマスク着用
・アルコール消毒を使用、持ち歩いている
・手洗いうがいをまめに行う
・換気を行う
・規則正しい生活
・毎日体温測定
・風邪症状があった時にはコロナ抗原検査実施
・人混みを避ける
・バス旅行に行かない
・お菓子は個包装の物を選ぶようにしている
○コロナクラスターを経験しての認識変化の具体的内容:
・アッという間に感染拡大し職員にも感染してしまうので業務が大変になることを知った
・自分が感染源にならないよう気をつけるようになった
・思っていた以上に感染力が強かった
・身近にクラスター感染を経験して初めて怖いと思った。
・二度とクラスターを起こしたくない。
・老人に感染すると死に至る、ADL低下がおこる
・ガウンテクニックやゾーニングなど感染に対する知識を深めないといけないと思った
・家族の配慮も必要と思った
○面会謝絶をしたことでの影響について:
・全員ではないが、認知症が進行してしまった入所者がいる
・家族と入所者の間に距離ができてしまった
・老健施設の一番の目的である在宅復帰への弊害となっていたと思う
・家族が不信感を抱きやすくなっていた。
面会再開されてから家族から聞かれた言葉として、お礼の言葉をいただくことも多くあったが、「見ない間に認知症が進んでしまった。」「こんなに汚い服を着せられて。」といったご意見をいただくこともあった。もっとも多く聞かれたのが、「こんなに痩せてしまって。」という言葉だった。
当施設での面会方法と感染状況
2020年5月~面会謝絶開始
2022年2月8日~27日
クラスター感染し入所者53名罹患(関連死10名、救急搬送2名)職員21名罹患
2022年3月~
看取り面会のみ同居家族2人以下の制限で開始
2023年2月~
2週間に1回以下完全予約、制限時間15分、パーテーション越し面会開始
2023年5月15日~
14時~16時各階にてマスク着用同席面会開始、制限時間15分、高校生以上
2023年9月1日~
高校生以上を中学生以上に変更し、その他の条件は同様
≪考察≫
県内老健施設へ行ったアンケートの結果よりコロナ5類移行後も面会謝絶を継続している施設はなく、どこの施設でも何らかの制限をしつつ面会を行っていることがわかった。
また入所者の感染原因としては、職員の持ち込みによると考えるものが64%と一番多く、面会を原因と考える感染は0%であり面会制限の条件と、感染回数の明らかな因果関係は示されなかった。
当施設の職員へ行ったアンケート調査の結果からは、多くの職員が感染症を恐れ感染リスクに備えることができているなか、福祉業界で働いているという観念が低い介護士が4名存在することが判明した。
うち3人はクラスター感染期間中に勤務していたにも関わらず意識変化が起こらなかった。これらの職員が感染を持ち込んでいる可能性が非常に高く、感染への意識が低い職員を0にすることで感染リスクは減少すると考えられる。
また、高齢者施設において面会制限による影響としては圧倒的にマイナスな事柄が多く、唯一プラスといってよい感染防止の面でも今回の調査結果では感染原因になっていないことが判明した。
≪結論≫
今回の調査では入所者の感染原因は1位として職員によるものが6割以上を結果と占める結果となり、感染を防ぐ対策として面会制限よりも重要な課題として職員教育があげられる結果となった。
2023年5月8日よりコロナは5類へ変更となったが、この1年間は高齢者施設にとって感染の恐怖は変わらず存在している。そのような中で面会の再会や中学生の職業体験を受け入れてきたが当施設では5類移行後のクラスター発生は現時点(2024年5月7日)まで起こらなかった。面会方法や職員の意識づけがこの1年間どうであったか、また他施設の面会方法と感染発症はどうであったかアンケート調査を実施したためここに報告する。
≪方法≫
静岡県内老人保健施設70カ所に手紙にてアンケート実施。
当施設職員(医師、看護師、介護職員、リハ職員、ケアマネ、相談員)50名にアンケート調査実施。
≪結果≫
老健施設へのアンケート結果 回答率:約48%(70施設中34施設回答)
・コロナが5類へ移行(2024.5.8)後の面会方法: 面会謝絶0施設 条件付き面会34施設
・入所者の感染が発生した回数と感染原因(感染はコロナとインフルエンザに限定した)
当施設職員へのアンケート結果 回答率:約98% (職員50名中49人回答)
○コロナ感染クラスター経験者: 40/49名
○コロナ認識の変化: 変化した40/49名 変化しない4/49名 その他1/49名
○コロナ感染対策気を付けていることが: ある45名 ない4名(すべて介護職員)
○感染対策として気を付けていることの具体的内容:
・外出時もマスク着用
・アルコール消毒を使用、持ち歩いている
・手洗いうがいをまめに行う
・換気を行う
・規則正しい生活
・毎日体温測定
・風邪症状があった時にはコロナ抗原検査実施
・人混みを避ける
・バス旅行に行かない
・お菓子は個包装の物を選ぶようにしている
○コロナクラスターを経験しての認識変化の具体的内容:
・アッという間に感染拡大し職員にも感染してしまうので業務が大変になることを知った
・自分が感染源にならないよう気をつけるようになった
・思っていた以上に感染力が強かった
・身近にクラスター感染を経験して初めて怖いと思った。
・二度とクラスターを起こしたくない。
・老人に感染すると死に至る、ADL低下がおこる
・ガウンテクニックやゾーニングなど感染に対する知識を深めないといけないと思った
・家族の配慮も必要と思った
○面会謝絶をしたことでの影響について:
・全員ではないが、認知症が進行してしまった入所者がいる
・家族と入所者の間に距離ができてしまった
・老健施設の一番の目的である在宅復帰への弊害となっていたと思う
・家族が不信感を抱きやすくなっていた。
面会再開されてから家族から聞かれた言葉として、お礼の言葉をいただくことも多くあったが、「見ない間に認知症が進んでしまった。」「こんなに汚い服を着せられて。」といったご意見をいただくこともあった。もっとも多く聞かれたのが、「こんなに痩せてしまって。」という言葉だった。
当施設での面会方法と感染状況
2020年5月~面会謝絶開始
2022年2月8日~27日
クラスター感染し入所者53名罹患(関連死10名、救急搬送2名)職員21名罹患
2022年3月~
看取り面会のみ同居家族2人以下の制限で開始
2023年2月~
2週間に1回以下完全予約、制限時間15分、パーテーション越し面会開始
2023年5月15日~
14時~16時各階にてマスク着用同席面会開始、制限時間15分、高校生以上
2023年9月1日~
高校生以上を中学生以上に変更し、その他の条件は同様
≪考察≫
県内老健施設へ行ったアンケートの結果よりコロナ5類移行後も面会謝絶を継続している施設はなく、どこの施設でも何らかの制限をしつつ面会を行っていることがわかった。
また入所者の感染原因としては、職員の持ち込みによると考えるものが64%と一番多く、面会を原因と考える感染は0%であり面会制限の条件と、感染回数の明らかな因果関係は示されなかった。
当施設の職員へ行ったアンケート調査の結果からは、多くの職員が感染症を恐れ感染リスクに備えることができているなか、福祉業界で働いているという観念が低い介護士が4名存在することが判明した。
うち3人はクラスター感染期間中に勤務していたにも関わらず意識変化が起こらなかった。これらの職員が感染を持ち込んでいる可能性が非常に高く、感染への意識が低い職員を0にすることで感染リスクは減少すると考えられる。
また、高齢者施設において面会制限による影響としては圧倒的にマイナスな事柄が多く、唯一プラスといってよい感染防止の面でも今回の調査結果では感染原因になっていないことが判明した。
≪結論≫
今回の調査では入所者の感染原因は1位として職員によるものが6割以上を結果と占める結果となり、感染を防ぐ対策として面会制限よりも重要な課題として職員教育があげられる結果となった。