講演情報

[15-O-O004-05]通所リハビリテーションでの転倒転落と疾患との関連

*轟 佳代1、大谷  直寛1 (1. 大阪府 介護老人保健施設オアシス)
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通所リハでのリハビリ職の役割に、身体状況の変化への評価と対応があるが、転倒による筋骨格系外傷への対応が多い。2021年全国老人保健施設協会発行「介護施設内での転倒に関するステートメント」では、高齢者の転倒は疾患であり事故ではない、転倒発生率は1人当たり年間2回程度との報告がある。今回1年間の外傷発生を調査し、転倒後の外傷や経過、複数回転倒者の転倒原因等を調査し、今後の対応策を検討したので報告する。
【目的】
通所リハビリテーション(以下、通所リハ)におけるリハビリ職の役割として、日々発生する身体状況の変化を評価し対応することが挙げられる。その中でも転倒・転落(以下、転倒)による筋骨格系外傷への対応頻度が多い。2021年全国老人保健施設協会発行の「介護施設内での転倒に関するステートメント」では、高齢者の転倒は疾患であり、事故ではないとの報告や、転倒発生率は1人当たり1年間に2回程度との報告がある。このことより、環境整備や運動機能を向上させることによる転倒予防だけでは対応できないと考えられる。今回、1年間の外傷発生を調査し、転倒による外傷の現状や転倒後の経過の把握、そして複数回転倒者の転倒原因について調査し、今後の対応策について検討したので報告する。

【対象・方法】
対象は一日及び半日型の通所リハの利用者(月平均登録数196名)である。調査期間は2023年2月14日から1年間。調査対象は本人や家族からの転倒事故等の報告、またこれらの報告がない場合においても、利用時の疼痛の訴え、いつもと異なる動作、皮膚損傷などがある場合も外傷の可能性を疑い対象とした。詳細な問診を行いその外傷の受傷機転を推測した。また疼痛部位、出血部位、関節可動域や筋力などの運動検査、日常生活への影響などを調べた。また、病歴やバイタルサイン等より発生原因を推測し、その後の利用毎に経過を記録し、症状等の消失までを記録した。

【結果】
・外傷件数:216件(124名)
・外傷の損傷状態  
打撲156件、骨折・脱臼17件、捻挫9件、肉離れ・皮下断裂4件、詳細不明30件
・外傷への対応  
様子観察189件、病院受診18件、入院9件(すべて骨折)
・外傷の受傷機転  
転倒174件(102名)、自己運動・躓き14件、不明28件
・転倒174件(102名)の転倒回数  
1回63名、2回19名、3回以上20名
・転倒回数3回以上の20名の転倒原因  
神経筋疾患の病態進行と血圧低下4名、心不全等による血圧低下や・認知面の低下 8名、  
覚醒不良・認知面低下 1名、その他7名
・転倒回数3回以上の20名の転帰と概要  
利用継続13名:   
転倒終了10名(ペースメーカー植込み術や昇圧剤の処方により循環動態改善・血圧安定6名、          
人的及び環境的整備3名、活動性が低下し動かなくなった1名)   
転倒継続3名(活動性が高く、現在でも屋外等での転倒を繰り返している3名)  
利用終了7名:   
入院・入所5名(転倒後の骨折入院1名、原疾患の症状悪化4名)、自己都合1名、死亡1名

【考察】
非常に多くの利用者が転倒を原因とする外傷を経験している。今回転倒は1年間に平均1~2回程度発生していることが明らかとなった。注目する点は3回以上の転倒者である。転倒の原因の65%は疾患に起因している。また転倒しなくなった要因としても6人が症状改善であった。鳥羽によると高齢者の転倒は、事故というより身体的原因に起因する「疾患」「症候群」として転倒をとらえている。この言葉のように、疾患による病状把握が非常に重要となっている。しかし、疾患の管理ができなくなり、結果として転倒を繰り返し、通所リハを利用中止となるケースも多い。この場合は転倒予防の対応が困難なケースとなる。それに対してリハビリ職員が出来るとても重要なことは、血圧や進行性疾患の変化、認知面の変化など身体的要因に早く気づき対応することである。また、薬の調整などで医師の相談が必要となる為、病院受診の必要性を説明して通院を勧めることも必要である。

【まとめ】
通所リハビリテーションにおける外傷の調査を行った。転倒転落を原因とする外傷が非常に多い。年間3回以上転倒を起こす利用者では疾患の症状悪化が原因となる場合が多い。リハビリ職は、転倒に関連する疾患の症状の変化に注意し、運動面への影響を早期に発見し、医療等への連携を視野に入れる必要がある。