講演情報
[15-O-O005-02]当施設における防災対策委員会の活動
*橋村 斉1、西山 智貴1、中畑 雅子1、松本 隆史1 (1. 三重県 介護老人保健施設カトレア、2. 介護老人保健施設カトレア、3. 介護老人保健施設カトレア)
当施設の防災対策委員会では、施設設備の定期点検・管理や防災訓練等を行っている。台風や大雨の雨等には施設周囲の環境に異常がないかを「台風等屋外警戒マップ」にて点検し備えている。防災訓練は実践的な要素を加味し、入浴介助中に地震が発生した場合、水道ガス電気が止まった状態で1晩を過ごす場合等を想定して年5回実施している。施設職員が委員会の活動を通して、災害時に実働できる職員となることを目指している。
【は じ め に 】令和 3 年介護報酬改定以降、業務継続計画の策定や見直しが必要となり、災害時等でも施設運営を継続できる よ う な 体 制 整 備 が 求め ら れ て い る。 当 施 設 の 防 災 対 策 委員 会 で は 、 施 設 設 備 の 定 期 点 検 ・ 管 理 や 防 災 訓 練 、 教 育訓練計画の主催を行っており、今回はその活動内容について報告する。【屋外点検】当 施 設 は 三 重 県 松 阪 市 山 室 町 に あ り 、 平 成 9 年 に設立され、鉄 筋 2 階 建 ての介護老人保健施設である。裏山の中腹には砂防ダムが平成28年2月8日に完成している。土砂災害警戒区域(土石流)となっているため、台 風 や 大 雨 の 前 等 に は 施 設 周 囲の環境に異常がないかを点検する必要があり、google eart hによる航空写真を用いて「台風等屋外警戒マップ」 を 作成し、点検時に活用している。警戒マップは施設周囲環境用と屋上部分用の2種類を作成し、施設周囲の山 間や駐車場等における側溝の土砂 ・落ち葉・雑草堆積の有無、飛翔物の有無、施設外壁や屋外避難経路の損傷有 無等、雨水等の逆流・堆積有無がないか等を写真付きで掲載 し、チェックポイントとして記録できるように表記し て い る 。 写真 を 掲 載 す る こ と に よ り 、 入 職 か ら 日 が 浅 い 職 員 が 実 施 し て も 記 載 し や す い よ うに 工夫している。【防災訓練】当施 設 で は 年 5 回 の 防 災訓 練 (消 防 訓 練 2 回 、 夜 間 訓 練 ・ 水災 害 訓 練 ・ 地 震 訓 練 各 1 回 ず つ) を 実施 し て お り 、 令和3 年以降は実践訓練として、日常の業務場面を想定したシナリオでの訓練計画の実施を意識している。令和 3 年度の地震訓練 は、利用者の入浴 介助中に地 震が発生 した場 合を想 定して実施 した。実施時 は冬 季であ り、避難誘導の際は速やかにタオルや毛布で利用者をくるみ移動 したが、防寒に時間がかかり、浴室にバスタオ ル 等 を 余 剰 配 置 する 等 の 対 策 の 必 要 性 が示 唆 さ れ た 。 ま た、 機 械 浴 (臥 床 浴 ) で の 入浴 中 は 、 停 電 に な る と 利 用 者を浴槽から引き上げるために少なくとも3 名以上の人員が必要になることが分かった。また、浴室は館内放送や 介護職員が使用しているインカムの音声が聞き取りにくく、災害対策本部とのやり取りが困難だったため、 付近に配置している職員を介しての情報共有が求められることが明 らかになった。令 和 4 年 度 の 消 防 訓 練 は 、施 設 内 で 火 災 発 生 後 に 初 期 消 火 が 失 敗 し 、屋 外 へ利 用 者 を 避 難 す る 想 定 で 実 施 し た 。 消火活動・避難誘導と並行して屋外 への備品の持ち出しと利用者用テントの設営を実施し、消火困難と判断して から避難誘導とテント設営完了に必要な人数・時間を把握することができた。避難誘導は訓練毎に実施している 為か多くの職員が経験しているが、訓練時のテント設営は未経験者が多く、焦るあまり指を怪我してしまうこともあり、課題の抽出ができた。令 和5年度の水災害訓練では、豪雨により土砂災害が発生し、施設1階と隣接施設の利用者を全員2階へ避難誘導し、水道ガス電気が止まった状態の中で1晩を過ごす想定で机上訓練を実施した。当施設の備蓄食 料 品 は 1 階 と 2 階 に 分 散 さ れ て お り 、警戒 レ ベ ル 3 が 気 象 庁 よ り 発 令 し た タ イ ミン グ で 利 用 者 と と も に 避 難 、 そ の 後 2 階 へ の 移 動 を行 っ てい る。 非 常 用 電 源 や 貯 水 槽 が あ り、 停 電 ・ 断 水 後 も あ る 程 度 は供給 できるが、実際の使用方法や持続時間等はほとんどの職員が理解しておらず、周知が必要と分かった。ま た 、 断 水 時 の 排 泄 対 応 と し て 凝 固 剤 の 備 蓄 が 少 な く 、 ほ ぼ 全職 員 に ト イ レ 固 め る キ ッ ト 等 の 使 用 経 験 が な い こ と も判明した。これについては令和6 年度の防災訓練内で実践を予定しており、今回は必要個数の把握とキットの購入・使用方法の共有を実施した。また、1階と隣接施設の利用者・職員が2 階で1晩を過ごすためには就寝す るスペースの確保と簡易的な寝具が必要 であると判明 した。 2 階フロアの間取 り図を用いて、各居室 ・食堂等 に何人まで就寝スペースを確保できるか、マグネットを用いて想定した。想定では収容可能となったが、認知症利 用 者と同室になった際の影響など、利用者のADLの状態による検 討も必要であることが明らかになった。寝具については利用者用にポンプ式の簡易エアマット、職員用に キャンプ用のシュラフを購入し、各職員が実際に使用体験を してもらった。他にも、 ポータブルバッテリー等必要性の高い物品があり、求められる容量や用途を整理しなが ら導入を検討中である。令和 6 年度の防災訓練では、このほかに「職員の外出時に被災した場合の対応手順」「備蓄食品の調理を実際 に 各 職 員 が 実 施 し 、 必 要 な時 間 ・ 人 手 の 検 証 」 等 を 実 施 予 定 で あ る 。【教育訓練計画】 職員の入れ替わりもあり、上記防災訓練を通して、各職員へ設備・備蓄品等の紹介を改めて実施する必要性があると判断した。通年は市役所職員による防災講座や、DVD の鑑賞、備蓄品の紹介などを実施していたが、令和 6 年度は防災委員会の取り組みと設備・備蓄品等の紹介を行い、新規職員含めて理解が深められるように研修を 実施予定である。【さいごに】他 施設の災害経験資料等を委員会内で共有し、実践的な防災訓練や設備点検等を行いBCPや防災マニュアルを更新し周知することにより、実働できる職員が1 人でも増えるように今後も活動を継続する。