講演情報

[15-O-O005-03]当施設における離設事故対策~早期発見に繋げるために~

*松下 幸助1、浦壁 マキ1、萬谷 郁美1 (1. 熊本県 独立行政法人地域医療機能推進機構天草中央総合病院附属介護老人保健施設)
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離設事故は行方不明や死亡事故に繋がる重大事故になりかねない為、所在不明となった際に早期発見が大切である。所在不明者の施設内捜索を行った際に、捜索方法や職員の配置など課題となった。そこで事故防止検討員会で課題検討を行い、マニュアルの見直し、施設内フローチャートを作成した。その後、捜索訓練を行い発見時間の短縮や、職員の意識拡大に繋がるよう施設全体で取り組みを行っている為報告する。
【はじめに】事故種別の中に離設事故があり、離設は行方不明や死亡事故に繋がる重大事故になりかねない為、所在不明となった際に早期発見が大切である。当施設の離設発生状況は事故種別の中では過去3年間で2件と少ないが、当施設の立地条件として交通量の多い車道に面していることから、平成30年より離設に対する施設外捜索の訓練を実施している。令和4年4月に所在不明者の施設内捜索を行った際に、捜索方法や職員の配置などが課題となった。そこで、事故防止検討委員会で課題の検討を行ない、離設マニュアルの見直し、施設内捜索フローチャートを作成した。その後、捜索訓練を行い発見時間の短縮や、職員の意識拡大に繋がるよう、施設全体で事故対応の取り組みを行なっている為報告する。
【対象】当日勤務した職員(看護師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、支援相談員、事務員)
【方法】・施設内捜索マニュアルとフローチャート作成・捜索訓練の実施(令和5年9月14日16:30~)・参加職員へのアンケート調査
【結果】所在不明者に対して施設内捜索のフローチャートを新しく作成した。フローチャートが効果的に働くかの検証と、職員の実際の動きを訓練する目的で実施した。訓練前に職員へ訓練の目的、施設内捜索方法をフローチャートで説明し、実際に職員が模擬利用者となり待機場所は伝えず発見に至るまでを検証した。訓練はフロア看護師が捜索リーダーとなり、本部を立ち上げて各フロアへ所在不明者が発生したことを告げ捜索依頼を行う。依頼を受けた職員が捜索係、記録係、カメラ確認係に別れて実施した。捜索場所は当施設内と併設の病院内、駐車場と施設周辺の計10カ所を振り分けしており、振り分けした全ての捜索場所を捜索する事が出来、重複も見られなかった。記録係はホワイトボードを使用し、所在不明が発生した時間や最終確認時間、また捜索場所毎に職員が何人で捜索しているのかを時系列で細かく記載した。防犯カメラ確認では模擬利用者がどこを通り、向かわれた方向や身なりを画像で確認する事が出来たが、カメラの操作方法を職員全てが認識していなかった事もあり、確認するまでに時間を要す結果となった。模擬利用者を併設病院の外来で発見し、シナリオで仮定していた発見までの時間は10分であったが、訓練での発見までの時間は7分かからない結果となり、発見までの時間短縮に繋がった。また捜索後の本部への報告や施設外捜索の準備まで、実際の職員の動きを確認し訓練する事が出来た。アンケート調査では「立体駐車場の確認は2人以上が望ましい、地下駐車場には懐中電灯があった方がいいと思う」「カメラ確認が難しかった」と改善が必要な意見や「各フロアの職員が役割を常に把握しておく必要がある」「突発的な開催でもいいと思う」といった定期的な訓練の必要性を感じる意見が聞かれた。また、訓練に参加した職員全てが捜索訓練は必要と感じる。今後に活かせると回答し、職員一人一人の捜索に対する意識拡大も感じられた。
【考察】今回、各部署で捜索場所の振り分けを行った事で重複捜索や捜索場所の見落としが無くなると共に、報告を受けてからすぐフローチャートに沿って捜索に向かう事で時間の短縮や捜索状況を本部が把握しやすくなった。また、施設内捜索を迅速に行い、発見に至らない場合でも次の施設外捜索へスムーズに移行ができ、離設者の早期発見に繋がると考える。施設内捜索では情報伝達や連携が大切になってくる為、今後も繰り返しの訓練を実施していく必要がある。また、訓練を実際に行い職員の意見を取り入れる事で、実情との相違がなくなり現場レベルで活用できるマニュアルになると考える。その他にも所在不明とならない為に日々の利用者との関わりを大切にし、周辺症状のある方に関しては行動範囲の把握や確認、各フロアへの情報提供と共有を行うことが必要と考える。また、今後はICTの導入も検討し、いち早く発見につなげることができ捜索をさらに効率化できるようにしたい。
【まとめ】行方不明は重大事故に繋がる危険性が高いが実際の訓練頻度は低く今後は避難訓練と同様に定期的に実施できるようスキーム作りが必要と考える。また、当施設のある天草市においては高齢化率41.2%で認知症高齢者も増加傾向にある。令和3年度の調べでは行方不明者のうち認知症による行方不明者の割合は7.1%で60歳以上が100%を占めている。この結果からも今後は当施設の入所者のみならず地域に目を向け地域連携や地域共同が実用的なものになるよう地域、行政との協力体制を構築し訓練を継続していきたい。