講演情報

[15-O-O005-06]通所リハの送迎で、安心・安全な送迎を目指して緊急停車や急ブレーキ時の安全なシートベルト着用方法

*西尾 昌美1、西尾 昌美2 (1. 大阪府 介護老人保健施設松原徳州苑、2. 老人保健施設松原徳州苑通所リハビリテーション)
PDFダウンロードPDFダウンロード
当苑の事故やヒヤリ事例を踏まえて、今回利用者の安全・安心を目的とした正しいシートベルト着用方法の取り組みを報告する。方法として、車椅子シートベルト着用の学習・添乗員アンケート・添乗員による乗車に関する様々な配慮・送迎マニュアルの改訂を実施した。その結果、職員間の理解や情報共有、送迎業務の安心・安全性の取り組みにより、職員の意識改革が進んだことや正しい車椅子シートベルト着用定着率が向上しました。
【はじめに】
松原徳洲苑(以下当苑と略す)通所リハビリテーションは定員60名で一日平均45名、ADLの高い利用者様が多く利用されています。
当苑通所リハビリテーションは、最寄り駅の河内天美駅があり松原市の北部に位置します。幹線道路を外れると一方通行の道路が多く細い路地や商店街があります。そのため、送迎中に歩行者や自転車などのすれ違いが多いです。
【目的】
当苑通所リハビリテーションにおいて、車椅子の送迎中にシートベルトの重要性がクローズアップされました。それは車椅子3点式シートベルト着用方法を正しく出来ていなかったからです。今回は、テーマとして『安全・安心な通所リハビリの送迎』を目指して取り組みをしました。その中で様々な要因を検討し、対策を行う事で送迎業務について職員やドライバーが関心を持ち、送迎業務の安全性に繋がった事例について報告します。
【テーマの選定】
当苑のドライバーは4名で、平日の公休もあり介護職員がドライバーとして運転する機会が利用者の増加に伴い増えています。また、正しいシートベルト着用方法を教育出来ていなかったのではないかとの疑問が生じました。シートベルト着用方法を教育し直したことで、今までの送迎時の時短作業や効率を上げていく事で送迎業務が上手くいっていると錯覚してしまい、本来の安全性を見落としていました。効率を求めるのではなく、利用者の生命を大切にしていくことこそ本来の形ではないかと考えました。これらの事を踏まえて、以前使用していたマニュアル内容では不十分となり、今回の取り組みと合わせてマニュアルの改訂の検討・実施となりました。
【改善方法】
(1) シートベルトの着用義務や安全な装着についての学習(2) ドライバーや添乗員職員にアンケート調査を2回実施し、送迎中の注意点や留意点目配り気配り心配りをどのように行っているか?緊急時の対応についての理解や知識があるのか?アンケート実施後に情報共有し、今後の送迎時の改善対応としました。(3) 送迎マニュアルや緊急マニュアルの改訂実施。
【シートベルト着用実施の定着率】
対策前と対策後の実施率  対策前がゼロとすると結果的には80%達成出来ました。
【事例1】
車椅子利用者の送迎中、車椅子固定金具が装着されていなかった為、シートベルトのみで対応した事例がありました。坂道発進時に車椅子利用者が後方にズレ、不安定な状態になりました。正しい車椅子3点式シートベルトを着用すればさらに安全性が高まると考えられます。
【事例2】
前方に車椅子がなく、車椅子リフト固定を後部のみで送迎中に車椅子座面が不安定で前方へ転倒してしまった事例がありました。その際も3点式シートベルト着用していたがリムと車輪の間にシートベルトを通していませんでした。
【対策と結果】
●事例1では、車椅子3点シートベルト着用の徹底と車椅子固定金具をドライバーと添乗員が目視と指差し呼称、お互いが声掛けをすることでミスがなくなりました。
●事例2では、利用者の体型に合わない車椅子と前方のスペースが原因で前のめりに転倒する事故が発生しました。この問題を解決する為、車椅子固定利用者が1名の場合は前方に詰めて乗車することにし、転倒リスクを減少させました。利用者の疾病や体型に合わせて対応するため、車椅子と腹部を固定するベルトを使用することになりました。さらに、正しい3点式シートバルトの着用をしておれば転倒リスクは減少出来たのではと思われます。
●車椅子利用者のシートベルト着用方法について、2度目の職員アンケートではシートベルト装着の定着率は8割になりました。アンケートを実施したことで、各職員の送迎業務への理解や実際の介助方法や気配り・目配り・心配りの情報共有を行えました。今後の送迎業務の安心・安全性が確立できたのではと感じました。
【結論】
1、 今まで施設職員の入れ代わりにより、知識を持っている職員がいませんでした。今回は、車椅子利用者のシートベルト着用方法の学習により、送迎の安全性と利用者の生命を確保するための行動が再確認されました。2、 職員アンケートを2度実施しました。アンケート結果を職員間で共有する事で、送迎業務の改善と介護実践の向上につながりました。
【考察】
1、 現場実践や介護職員のアンケート集約の内容を盛り込んだ改訂送迎マニュアルの周知徹底により、ドライバーや介護職員の意欲改革が進んだと考察されます。2、 送迎業務の効率や時短作業を優先するのではなく、利用者の安全性の上に送迎効率や時短業務を実践していくことで総合的によりよい実践を体現していく事が大切であると考察しました。
【まとめ】
車椅子利用者のシートベルト着用について改善したことで、送迎業務の安心・安全性が向上しました。引き続き、利用者の生命を大切にしながら送迎業務を行っていけるように努めていきたいと思います。