講演情報

[15-O-J005-03]楽しく食べよう!

*尾花 治信1、染谷 久美子1 (1. 茨城県 介護老人保健施設 平成園)
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利用者様の食事に関する改善策として、様々な手法により嚥下状態の改善を促し食事への意欲を高め嚥下機能の維持向上を目的としたもの。
令和5年度  事例研究  3階介護課  介護職員 染谷・尾花

事例研究 題名『楽しく食べよう!』 中間報告

1・目的
 現在、当施設が食事介助をしている利用者様の多くは発語も少なく、自らの唾液でのむせ込みも多くみられます。飲食事中、苦しい思いをしている利用者様を見て身近にいる介護職員が特別な道具や技術がなくとも嚥下障害を改善できないだろうか?と思い、特に嚥下障害でむせ込みが多くみられる利用者様3名を対象に介護職員による嚥下訓練を試行していくことにした。

2・対象者
1 K様 男性 74歳
姿勢が悪く顔は右を向きながら飲食物を飲み込もうとすることが多く見られる
むせ込みが多くみられると食事の残渣物を嘔吐することがある
2 M様 女性 90歳
自らの唾液でむせ込みがあり飲み込み不良がみられ呼吸も乱れる
日中は開口して口腔内が乾燥している 発語が聞かれない
3 E様 女性 99歳
飲食物を摂取中に閉眼してしまう為、むせ込みやため込みがみられる
時々傾眠もみられる為、ため込みが多くみられる場合は食事が中止になる

3・方法
実施内容 事例研究実施期間 6月~9月(4カ月間)
1 口腔発声体操(パタカラ発声法)⇒図1参照
口腔発声体操を昼前・おやつ前・夕食前に行う
2 間接訓練(ガムラピング法)⇒図2参照
昼食前・おやつ前・夕食前に口腔ケア・舌ケアを行い、ガーゼで口腔内の余計な唾液を取り除いたり口腔内が乾燥している状態の利用者様の唾液の分泌を促すようにする。飲食がスムーズに進めるように食事中の様子を観察する
3 その他(リラクゼーション・声掛けをし発声を促す)
飲食時に口周りをおしぼりなどで軽く拭いて刺激する。
声掛けをしながら食事介助を行うように意識し心身の緊張をほぐしリラックスして頂く。
飲食時以外もあいさつ等を積極的に行い発声や発語を促すようにする。
4 記録と評価
嚥下状態や口腔内のため込み等を事前調査し、実施期間中は担当の職員が対象利用者様の症状チェック表に記録し、症状別に記録を行う。(⇒図3参照)その後、月ごとに集計し、状態改善できたか評価する

4・結果
K様は姿勢が悪く顔が右を向いている状態で飲食をしてしまう。嚥下不良による痰がらみの強い咳き込みをしている時には少量の残渣物を嘔吐してしまうこともみられた。
顔を真っ直ぐ前を向く様に職員が声掛けし、食事介助を行った。
1 発声体操ではパ・タ・カ・ラとハッキリと大きい声を出していた。
2 ガムラピングでは、嘔気はみられるも様子をみながら口腔内のケアをすることができた。
3 リラクゼーションに関しては、顔が右を向いてしまう為、顔が正面になるように職員が左側から声掛けを行い飲み込みがスムーズになり、口腔内のため込みも開始時48%だったが0%と改善、むせ込みも少なくなった。

M様は発声体操は参加するもほとんど声が聞かれなかった。
ガムラピングでは、職員が口腔ガーゼを手に取りと積極的に大きく開口し舌のケア中は気持ち良さそうな表情を見せていた。
リラクゼーションでは発語も声を出すのが精一杯だったが毎日、積極的に挨拶の声掛けをしていくにつれ片言ではあるが発語が聞かれるようになった。飲食時、呼吸が乱れる程のむせ込みも50%から18%と改善していき、全量摂取できるようになった。痰がらみやため込みも50%・60%と見られたが18%・11%と改善が見られた。

E様は発声体操では調子が良い時にパ・タ・カ・ラと大きい声で体操に参加をする事ができ、咀嚼が出来るようになった。臥床中でも開眼している事も増えて行き職員の顔を見ると「あっ、○○さんだ!」とハッキリ発語がきかれるようになった。
ガムラピングでは嫌がることもなく舌のケアをすることができ「口の中がサッパリする」との感想が聞かれた。嚥下時間に変化はみられなかったが口腔内のため込みが開始時48%から37%と改善。
リラクゼーションでは傾眠状態が減少し会話をしながら飲食が進むようになった。

分析して分かった事は、自らの唾液が飲み込めず、むせ込んでいた利用者様ですが口腔ケア・舌ケアを施行している期間中は、徐々にむせ込みや咳き込みが軽減しており食事も全量摂取できるようになっていた。総合的な結果として嚥下障害がある対象利用者様3名のため込み、むせ込みは減少傾向がみられた。水分補給、食事の全量摂取も無理なく介助していくことができた。

5・考察
 当初の目的である「特別な道具や技術が無くとも嚥下障害を改善できないだろうか?」は、上記の結果や図3の評価を見るに、個人差はあるが劇的な改善はしないものの徐々にだが改善しているように感じた。
発語が少なかった方は発声を促すことにより大きく開口出来るようになり、咀嚼できるようになったのではないかと思う。これからも口腔発声体操(パタカラ法)・間接訓練(ガムラピング)・リラクゼーション(声掛け等)を実践していき、嚥下障害の改善に努めていこうと思う。