講演情報

[15-O-J005-05]栄養改善の取り組み

*岩田 知子1、桑原 有希1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設ロアジかねまつ)
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高齢者の低栄養は身体・精神機能の低下と関連する。摂食・嚥下や認知機能の低下などにより低栄養、低体重に対して栄養改善の取り組みの事例を報告する。多職種と連携し、食事形態、一口の食事量、とろみの必要性と強さ、食事摂取時の注意点を検討、栄養補助食品を提供し栄養改善に取り組むことが出来た。リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取り組みが推進され、多職種と更に連携して栄養改善に取り組んでいきたい。
【はじめに】
高齢者の低栄養はさまざまな身体・精神機能の低下と関連する。摂食・嚥下機能や認知機能の低下などにより低栄養、低体重となったと考えられる入所者に対して栄養改善の取り組みの事例を報告する。
【事例対象】
(事例1)81歳 女性 介護度3 現病歴:認知症、骨粗鬆症 
身長:130cm 体重:28.7kg BMI:17.0 食事形態:軟飯・刻み 体重減少率:6ケ月15.1%
(事例2)95歳 女性 介護度5 現病歴:高血圧症、骨粗鬆症
身長:146cm 体重:32.7kg BMI:15.3 食事形態:全粥・ミキサー 中間のとろみ 体重減少率:6ケ月10.4%
(事例3)82歳 女性 介護度5 現病歴:左視床出血後遺症(右半身まひ)、高血圧症 
身長:141cm 体重:28.1kg BMI:14.1 食事形態:全粥・ミキサー 中間のとろみ 体重減少率:6ケ月7.9% 
【取り組み】
医師・看護師・理学療法士・作業療法士・介護士・介護支援専門員などの多職種と連携し、身体状況、摂食・嚥下機能に応じた食事形態、とろみの必要性と強さ、食事摂取時の一口の食事量、食事摂取時の状況を確認、注意点の共有と改善策を検討した。
栄養状態の改善のために、咀嚼・嚥下機能が低下していても安心して摂取出来、味の種類が豊富で完食できる量の栄養補助食品(88kcal)を毎食に提供した。
【結果】
(事例1)日常生活では、一人で過ごされる時間が長く認知症が進行する恐れがあるため、話が好きな入所者と席を近くして交流の場を提供した。認知症で食事摂取量にムラあるが、声掛けにより栄養補助食品は完食出来た。体重は6ケ月後令和5年1月30.2kg(BMI:17.9)1年後7月33.2kg(BMI:19.6)1年6ケ月後令和6年1月32.2kg(BMI:19.1)1年9ケ月後4月31.1kg(BMI:18.4)1年9ケ月経過8.4%増加した。
(事例2)円背が強く食事中の良肢位が保ちづらく誤嚥、窒息の危険があるため、身体を真っすぐにして、顔が正面を向くようにギャッジを挙げ、左右に傾かないようにクッションなどで調整し、主食食事形態をミキサーに変更した。口の中に溜め込むので飲み込み確認を行った。幻視・幻覚により不穏になると食事摂取量が低下する時があるが、体重は6ケ月後令和4年10月34.2kg(BMI:16.0)1年後令和5年4月34.9kg(BMI:16.4)1年6ケ月後10月33.4kg(BMI:15.7)2年後令和6年4月34.2kg(BMI:16.0)2年経過4.6%増加した。
(事例3)喀痰が多く食後口腔内の右側に残渣ある為、主食食事形態をミキサーに変更した。依存心が強いが、声掛けで自力摂取を促し毎食全量摂取することが出来た。6ケ月後令和4年10月29.3kg(BMI:14.7)1年後令和5年4月31.6kg(BMI:15.9)1年6ケ月後10月32.8kg(BMI:16.5)2年後令和6年4月35kg(BMI:17.6)2年経過24.6%増加した。
【考察・まとめ】
多職種で情報を共有し、嚥下機能や認知機能の低下、口腔残留や咽頭残留により食事形態を調整し、とろみの必要性と強さ、食事摂取時の注意点を検討し、少量で栄養補強が可能な栄養補助食品を食事と併用することで、栄養改善に取り組むことが出来たと考えられる。高齢者は、加齢と共に心身に様々な変化が生じている。この心身状況の変化には、共通した特徴もあるが、身体機能と精神の働きは千差万別で、状態にあった取り組みが必要であると考えられる。令和6年度介護報酬改定では、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取り組みが推進され、多職種と更に連携して栄養改善に取り組んでいきたい。