講演情報
[15-O-J006-02]附属老健と本院によるシームレスな連携と食支援
*土居 貴美子1、伊藤 恵里1、脇坂 理奈1 (1. 愛媛県 独立行政法人地域医療機能推進機構宇和島病院附属介護老人保健施設)
本院から附属老健に入所し多職種連携で経口維持を支援した結果、入所者のQOL維持・向上が示唆されたので報告する。入所初日からミールラウンドを行い、入所者の嚥下状態の把握や食事内容を検討、多職種で介入した。その結果、入所時低栄養状態リスクが高リスクだった5名中3名が、中リスクへ改善した。附属施設を活かし、医療と介護のシームレスな連携で役割を果たすことが、食支援に繋がったと考えられる。
【はじめに】
附属老健の入所者は、約60%の入所を本院から占めており、本院と隣接した立地条件を活かし、2023年度よりこれまで以上に強化したシームレスな医療や介護の提供を目指している。附属老健は介護度の高い入所者が増加傾向であり、低栄養や誤嚥リスクの高い入所者が多くなっている。2023年度、本院から附属老健に入所した入所者の中から、経口維持加算を算定した7症例についての取り組みを報告する。
【対象者】
平均年齢:89.0歳 (男性4名・女性3名)
介護度:要介護3・・・1名、要介護5・・・6名
入所時低栄養状態リスク:中リスク・・・2名、高リスク・・・5名
入所時平均Alb値:2.7g/dl
入所時平均FIM値:19点
【経過】
経口摂取をしているが水飲みテスト等で誤嚥リスクが高いと評価された入所者に対して、多職種にて食事の観察や介助を行い、経口摂取を継続できるように取り組んでいる。本院からの入所決定後、附属施設ということから、入所までに管理栄養士やリハビリ技士が本院での患者の状態把握をし、他リハビリ技士からも患者情報を得るようにしている。入所初日、リハビリ技士と管理栄養士が初回ミールラウンド(以下ラウンド)を実施している。以降は、経口維持加算算定入所者にはラウンドを1回/月実施している。初回以外のラウンドメンバーは、医師、管理栄養士、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、看護師、介護福祉士、介護支援専門員である。ラウンド時の観察項目は、摂食・嚥下の状況、食事形態や食具の使用状況、食事に要する時間、食事時の姿勢、介助方法、食事環境等である。ラウンドで得た情報をカンファレンスにて多職種で共有している。その情報を元に食事形態や提供量の調整、車いすの設定と座位姿勢の能力確認、食事時の手元調整の必要性や介助方法等を毎月の計画に反映している。
【結果】
入所時低栄養状態リスクが高リスクだった入所者5名中3名が、中リスクへ改善がみられ、中リスクで入所した2名はリスク変更なく栄養状態が維持できた。Alb値は、入所時平均2.7g/dlから支援後平均3.1g/dlに改善した。FIM値は、入所時平均19点から平均28点へ向上した。運動項目は、入所時13点から17点へ、認知項目は、入所時5点から11点となり、7名中5名が向上した。食事は、入所後7名全員がムース食(嚥下調整食学会分類2021コード:3)から開始した。入所者A(要介護3)は、ムース食1200kcal/日から全粥食1400 kcal /日まで食事形態と食事摂取量をアップでき、低栄養状態リスクは高リスクから中リスクへ、FIM値は18点から52点へ向上した。FIM値の内運動項目が20点、認知項目が14点に向上した。入所者B・C・D・E(要介護5)は、誤嚥リスクが高くムース食のままで経過したが、食事摂取量の維持・増加へ繋げられた。入所者Cは看取りであり、最期まで誤嚥することなく経口摂取を継続することができ、本人や家族の意向に沿うことができた。入所者F・G(要介護5)は、誤嚥リスクが高く、食事時の姿勢保持や食事摂取量の維持が困難であり体重の緩やかな減少が継続した。入所者Fの体重減少率が7.4%減/6ヵ月となり、入所時FIM値19点から支援後18点になったため、食事提供量を増量し経口摂取量確保を支援した。入所者Gは、湿性咳嗽や発熱のため、本院でVF検査を行い経鼻経管栄養へ移行した。
【考察】
附属老健に入所できる全身状態となれば入所が決定される。入所決定後、本院での患者の状態を多職種で情報共有し、入所初日から食支援を実施できたことが入所者のADL・QOLの維持・向上に繋げられたと考えられる。本院と附属老健の食事内容は、食事形態や使用食材等、ほぼ同様の内容で献立作成を行っており、本院と附属老健の管理栄養士が連携を行い、情報共有しやすい環境にある。リハビリ技士も同様であり、食事形態の把握・調整が容易であるため、本院からの入所者の食事提供がシームレスに行えている。入院中に患者の状態を出来る限り向上させるために、離床を促し、食事摂取時の姿勢を整え、ADLを向上させてから附属老健へ入所、キュアからケアへ移行していくことが、より最大に入所者の栄養状態やADLの維持・向上に繋げられると考えられる。今回、経口維持加算に準じて支援することにより、傾眠状態や湿性咳嗽の有無、嚥下状態、食事摂取量の限界等、入所者の状態をより明確に把握できたことで、本院でのVF検査にも繋げられることができた。その結果、「嚥下できる・できない」、「食事が食べられる・食べられない」という、正確な評価もできるようになった。多職種が連携し介入したことが、入所者の状態把握やADL・QOLの維持・向上に繋げられたと考えられる。
【まとめ】
令和6年度診療報酬と介護報酬との同時改定にあるように、今後さらに口腔・リハ・栄養の連携が重要になってくる。シームレスな医療と介護の連携により、本院と附属老健の回転率が上がる。誤嚥と低栄養のリスクが高く食支援を必要とする入所者に、切れ目のないサービスを提供しシームレスな連携を継続していきたい。また、入所者の食支援を繋げていくことにより、経口維持加算や再入所時栄養連携加算を算定できるようにしていきたい。
附属老健の入所者は、約60%の入所を本院から占めており、本院と隣接した立地条件を活かし、2023年度よりこれまで以上に強化したシームレスな医療や介護の提供を目指している。附属老健は介護度の高い入所者が増加傾向であり、低栄養や誤嚥リスクの高い入所者が多くなっている。2023年度、本院から附属老健に入所した入所者の中から、経口維持加算を算定した7症例についての取り組みを報告する。
【対象者】
平均年齢:89.0歳 (男性4名・女性3名)
介護度:要介護3・・・1名、要介護5・・・6名
入所時低栄養状態リスク:中リスク・・・2名、高リスク・・・5名
入所時平均Alb値:2.7g/dl
入所時平均FIM値:19点
【経過】
経口摂取をしているが水飲みテスト等で誤嚥リスクが高いと評価された入所者に対して、多職種にて食事の観察や介助を行い、経口摂取を継続できるように取り組んでいる。本院からの入所決定後、附属施設ということから、入所までに管理栄養士やリハビリ技士が本院での患者の状態把握をし、他リハビリ技士からも患者情報を得るようにしている。入所初日、リハビリ技士と管理栄養士が初回ミールラウンド(以下ラウンド)を実施している。以降は、経口維持加算算定入所者にはラウンドを1回/月実施している。初回以外のラウンドメンバーは、医師、管理栄養士、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、看護師、介護福祉士、介護支援専門員である。ラウンド時の観察項目は、摂食・嚥下の状況、食事形態や食具の使用状況、食事に要する時間、食事時の姿勢、介助方法、食事環境等である。ラウンドで得た情報をカンファレンスにて多職種で共有している。その情報を元に食事形態や提供量の調整、車いすの設定と座位姿勢の能力確認、食事時の手元調整の必要性や介助方法等を毎月の計画に反映している。
【結果】
入所時低栄養状態リスクが高リスクだった入所者5名中3名が、中リスクへ改善がみられ、中リスクで入所した2名はリスク変更なく栄養状態が維持できた。Alb値は、入所時平均2.7g/dlから支援後平均3.1g/dlに改善した。FIM値は、入所時平均19点から平均28点へ向上した。運動項目は、入所時13点から17点へ、認知項目は、入所時5点から11点となり、7名中5名が向上した。食事は、入所後7名全員がムース食(嚥下調整食学会分類2021コード:3)から開始した。入所者A(要介護3)は、ムース食1200kcal/日から全粥食1400 kcal /日まで食事形態と食事摂取量をアップでき、低栄養状態リスクは高リスクから中リスクへ、FIM値は18点から52点へ向上した。FIM値の内運動項目が20点、認知項目が14点に向上した。入所者B・C・D・E(要介護5)は、誤嚥リスクが高くムース食のままで経過したが、食事摂取量の維持・増加へ繋げられた。入所者Cは看取りであり、最期まで誤嚥することなく経口摂取を継続することができ、本人や家族の意向に沿うことができた。入所者F・G(要介護5)は、誤嚥リスクが高く、食事時の姿勢保持や食事摂取量の維持が困難であり体重の緩やかな減少が継続した。入所者Fの体重減少率が7.4%減/6ヵ月となり、入所時FIM値19点から支援後18点になったため、食事提供量を増量し経口摂取量確保を支援した。入所者Gは、湿性咳嗽や発熱のため、本院でVF検査を行い経鼻経管栄養へ移行した。
【考察】
附属老健に入所できる全身状態となれば入所が決定される。入所決定後、本院での患者の状態を多職種で情報共有し、入所初日から食支援を実施できたことが入所者のADL・QOLの維持・向上に繋げられたと考えられる。本院と附属老健の食事内容は、食事形態や使用食材等、ほぼ同様の内容で献立作成を行っており、本院と附属老健の管理栄養士が連携を行い、情報共有しやすい環境にある。リハビリ技士も同様であり、食事形態の把握・調整が容易であるため、本院からの入所者の食事提供がシームレスに行えている。入院中に患者の状態を出来る限り向上させるために、離床を促し、食事摂取時の姿勢を整え、ADLを向上させてから附属老健へ入所、キュアからケアへ移行していくことが、より最大に入所者の栄養状態やADLの維持・向上に繋げられると考えられる。今回、経口維持加算に準じて支援することにより、傾眠状態や湿性咳嗽の有無、嚥下状態、食事摂取量の限界等、入所者の状態をより明確に把握できたことで、本院でのVF検査にも繋げられることができた。その結果、「嚥下できる・できない」、「食事が食べられる・食べられない」という、正確な評価もできるようになった。多職種が連携し介入したことが、入所者の状態把握やADL・QOLの維持・向上に繋げられたと考えられる。
【まとめ】
令和6年度診療報酬と介護報酬との同時改定にあるように、今後さらに口腔・リハ・栄養の連携が重要になってくる。シームレスな医療と介護の連携により、本院と附属老健の回転率が上がる。誤嚥と低栄養のリスクが高く食支援を必要とする入所者に、切れ目のないサービスを提供しシームレスな連携を継続していきたい。また、入所者の食支援を繋げていくことにより、経口維持加算や再入所時栄養連携加算を算定できるようにしていきたい。