講演情報
[15-O-J006-05]プロテインを用いた栄養状態改善プロジェクト~高齢者身体強化プログラム~
*山本 東季1、鈴木 重統1、西野 雄也1、阿波連 一美1、久野 希1、佐川 涼介1 (1. 北海道 介護老人保健施設ゆう)
老健へ新規入所する利用者の約3割が低栄養の状態で利用開始となっていた。在宅生活を継続支援する超強化型老健の専門職として、短期間に栄養状態と身体機能を向上させ在宅復帰する取り組みが、身体機能のみならず、排泄コントロールや認知症状改善といった効果を創出した。
【はじめに】
当施設は、北海道空知郡南幌町に所在し、在宅復帰超強化型老健として、10年目を迎える。農業地帯という地域性から農繁期の入所や厳冬期をむかえる前から春先までの越冬入所が多い特徴がある。そのため、農繁期入所や厳冬期入所は、短期間で在宅復帰するという特性があるが、令和4年度から令和5年度の新規入所者の栄養状態を確認した際に、約3割の入所が、低栄養の状態で入所されていた。在宅生活を継続支援する超強化型老健の専門職として、短期間に栄養状態と身体機能を飛躍的に向上させ在宅復帰する取り組みが、身体機能のみならず、排泄コントロールや認知症状を改善し、在宅復帰後の主介護者の介護負担を大幅に軽減させ、自宅で継続して利用者本人や家族ができる方法を研究したため報告する。
【方法】
(1)新規入所者のうち、入所時の血液検査においてALB(低栄養リスク)またはTPが基準値以下の利用者を選定する。
(2)入所時の身体機能評価(機能的自立度評価(FIM))やADL、行動心理症状の有無・BPSDの有無、入眠状況等のアセスメントを集約する。
(3)集中的に栄養状態を改善させるために市販のプロテインを飲用する。(10.5g/日) 尚、プロテインの摂取環境は同様にするため、朝食前の水分補給時に牛乳またはヨーグルトに混ぜ摂取する。
※たんぱく制限がある方は対象外とする
(4)リハビリ職によるリハビリテーションと介護職による日常生活リハビリテーションを実施する。
※ここでいう日常生活リハビリテーションとは、長距離歩行訓練や階段昇降訓練、屋外歩行訓練とする。
(5)1カ月毎に血液検査実施し栄養状態の変化を確認する。
(6)1カ月毎に身体機能評価(FIM)、リハビリ評価(Tug、BMS)、ADL、行動心理症状及びBPSDの変化、入眠状況等の変化をアセスメント集約する。
(7)プロテインの3カ月間飲用とリハビリ職や介護職の支援を行なうことで、栄養状態や身体機能、行動心理症状、BPSD症状の改善経過をプロテイン非飲用者と比較する。
【結果および効果】
プロテイン飲用の対象者は、令和6年1月以降に老健入所している利用者として、入所前の生活場所が在宅5名 医療機関が2名の合計7名とした。平均介護度2.43 平均年齢86.1歳となっている。比較対象としたのは、同様に令和6年1月以降に在籍している利用者で、在宅から入所された利用者5名 医療機関から入所された利用者2名の合計7名とした。平均介護度2.57 平均年齢82.6歳となっている。
入所時から、本取り組みを開始し3カ月経過した採血データーや身体状況、排泄状況、行動心理・BPSD症状は下表の通りである。
注)ALB値は3.6g/dl以上を基準値内とした。
プロテイン飲用については、起床時の牛乳やヨーグルトに混ぜ水分補給として提供する事で、抵抗もなく飲用することが可能であった。
飲用者の抵抗採血データーにおいては、ALB値(3.6g/dl以上)の対象者0名だったが、2か月後には、低栄養リスクを脱した方が5名に増加し、TP値基準値内(6.5~8.2g/dl)の対象者においても、1名から6名へ増加している。日々の食事摂取量が、5~10割と変動がある対象者もいるが、短期間にALB値(低栄養の改善)とTP値の基準値をクリアすることが可能となっている。Ht値では、基準内の対象者が1名であったが、2か月後には6名へ増加し、貧血が改善している。特にTP値に関しては、入所時と比較し飛躍的に数値が向上し、栄養障害の改善とともに身体機能が自立レベルにまで向上した対象者を認めた。また、尿失禁の改善と便秘の改善が顕著に表れ排泄コントロールへの効果も確認できた。
リハビリの評価基準であるTugやBMSにおいても、身体機能の向上が認められ、特に起立・立位・移動動作が2か月目には4名が自立レベルまで改善しバランス能力の向上が顕著に表れた。
行動心理症状およびBPSD症状の有無においては、入所前は介護拒否や過食、帰宅欲求など家族や介護者を悩ませていた症状が、取組み経過で消失するなど認知症状による介護負担が大幅に改善した結果となった。対して、プロテイン非飲用者では、栄養ケアやリハビリテーション等でALB値およびTP値の改善やTug、BMSの身体機能面の向上は中長期的に認められるものの、3か月以内に瞬発的に数値が大幅に改善することはなく、排泄コントロール面では改善が認められなかった。また、行動心理症状・BPSD症状においては、ゆるやかな症状緩和は認められるも完全消失するという症例は1件のみであった。
【考察まとめ】
プロテインの導入と集中的なリハビリテーションおよび日常生活リハビリテーションを行うことで、栄養状態の改善とともに飛躍的な身体能力の向上や尿失禁や便秘等の排泄の改善、認知症状の改善が認められる結果となった。
これは、栄養状態の改善が身体機能の改善のみならず、排泄や認知症状面への改善にも効果があったことが立証され、在宅介護をする家族の介護負担が大幅に減少すると考える。
特に尿便失禁の改善は、本人および家族の心理的な負担の軽減や尿パッド等の購入する経済的な負担も軽減し、大きな満足度にも繋がると考える。更にプロテイン飲用は在宅生活においても容易に継続して行える方法のため、在宅復帰後の身体状態維持の方法として各種在宅サービスの調整と併せ、家族や居宅ケアマネへ提案していきたい。
農繁期や厳冬期入所の相談の多い当施設として、短期間に対象者の状態を改善し在宅復帰することで、施設サービスの評判も良くなり、次回の入所利用予約や本人状態が低下した際の老健再入所の問い合わせが増えていると実感している。
今回は、限られた期間中に入所した新規利用者であったが、今後は対象者の枠を広げ、成功事例を多く生み出し、老健ゆう独自のサービスとして確立していきたい。
当施設は、北海道空知郡南幌町に所在し、在宅復帰超強化型老健として、10年目を迎える。農業地帯という地域性から農繁期の入所や厳冬期をむかえる前から春先までの越冬入所が多い特徴がある。そのため、農繁期入所や厳冬期入所は、短期間で在宅復帰するという特性があるが、令和4年度から令和5年度の新規入所者の栄養状態を確認した際に、約3割の入所が、低栄養の状態で入所されていた。在宅生活を継続支援する超強化型老健の専門職として、短期間に栄養状態と身体機能を飛躍的に向上させ在宅復帰する取り組みが、身体機能のみならず、排泄コントロールや認知症状を改善し、在宅復帰後の主介護者の介護負担を大幅に軽減させ、自宅で継続して利用者本人や家族ができる方法を研究したため報告する。
【方法】
(1)新規入所者のうち、入所時の血液検査においてALB(低栄養リスク)またはTPが基準値以下の利用者を選定する。
(2)入所時の身体機能評価(機能的自立度評価(FIM))やADL、行動心理症状の有無・BPSDの有無、入眠状況等のアセスメントを集約する。
(3)集中的に栄養状態を改善させるために市販のプロテインを飲用する。(10.5g/日) 尚、プロテインの摂取環境は同様にするため、朝食前の水分補給時に牛乳またはヨーグルトに混ぜ摂取する。
※たんぱく制限がある方は対象外とする
(4)リハビリ職によるリハビリテーションと介護職による日常生活リハビリテーションを実施する。
※ここでいう日常生活リハビリテーションとは、長距離歩行訓練や階段昇降訓練、屋外歩行訓練とする。
(5)1カ月毎に血液検査実施し栄養状態の変化を確認する。
(6)1カ月毎に身体機能評価(FIM)、リハビリ評価(Tug、BMS)、ADL、行動心理症状及びBPSDの変化、入眠状況等の変化をアセスメント集約する。
(7)プロテインの3カ月間飲用とリハビリ職や介護職の支援を行なうことで、栄養状態や身体機能、行動心理症状、BPSD症状の改善経過をプロテイン非飲用者と比較する。
【結果および効果】
プロテイン飲用の対象者は、令和6年1月以降に老健入所している利用者として、入所前の生活場所が在宅5名 医療機関が2名の合計7名とした。平均介護度2.43 平均年齢86.1歳となっている。比較対象としたのは、同様に令和6年1月以降に在籍している利用者で、在宅から入所された利用者5名 医療機関から入所された利用者2名の合計7名とした。平均介護度2.57 平均年齢82.6歳となっている。
入所時から、本取り組みを開始し3カ月経過した採血データーや身体状況、排泄状況、行動心理・BPSD症状は下表の通りである。
注)ALB値は3.6g/dl以上を基準値内とした。
プロテイン飲用については、起床時の牛乳やヨーグルトに混ぜ水分補給として提供する事で、抵抗もなく飲用することが可能であった。
飲用者の抵抗採血データーにおいては、ALB値(3.6g/dl以上)の対象者0名だったが、2か月後には、低栄養リスクを脱した方が5名に増加し、TP値基準値内(6.5~8.2g/dl)の対象者においても、1名から6名へ増加している。日々の食事摂取量が、5~10割と変動がある対象者もいるが、短期間にALB値(低栄養の改善)とTP値の基準値をクリアすることが可能となっている。Ht値では、基準内の対象者が1名であったが、2か月後には6名へ増加し、貧血が改善している。特にTP値に関しては、入所時と比較し飛躍的に数値が向上し、栄養障害の改善とともに身体機能が自立レベルにまで向上した対象者を認めた。また、尿失禁の改善と便秘の改善が顕著に表れ排泄コントロールへの効果も確認できた。
リハビリの評価基準であるTugやBMSにおいても、身体機能の向上が認められ、特に起立・立位・移動動作が2か月目には4名が自立レベルまで改善しバランス能力の向上が顕著に表れた。
行動心理症状およびBPSD症状の有無においては、入所前は介護拒否や過食、帰宅欲求など家族や介護者を悩ませていた症状が、取組み経過で消失するなど認知症状による介護負担が大幅に改善した結果となった。対して、プロテイン非飲用者では、栄養ケアやリハビリテーション等でALB値およびTP値の改善やTug、BMSの身体機能面の向上は中長期的に認められるものの、3か月以内に瞬発的に数値が大幅に改善することはなく、排泄コントロール面では改善が認められなかった。また、行動心理症状・BPSD症状においては、ゆるやかな症状緩和は認められるも完全消失するという症例は1件のみであった。
【考察まとめ】
プロテインの導入と集中的なリハビリテーションおよび日常生活リハビリテーションを行うことで、栄養状態の改善とともに飛躍的な身体能力の向上や尿失禁や便秘等の排泄の改善、認知症状の改善が認められる結果となった。
これは、栄養状態の改善が身体機能の改善のみならず、排泄や認知症状面への改善にも効果があったことが立証され、在宅介護をする家族の介護負担が大幅に減少すると考える。
特に尿便失禁の改善は、本人および家族の心理的な負担の軽減や尿パッド等の購入する経済的な負担も軽減し、大きな満足度にも繋がると考える。更にプロテイン飲用は在宅生活においても容易に継続して行える方法のため、在宅復帰後の身体状態維持の方法として各種在宅サービスの調整と併せ、家族や居宅ケアマネへ提案していきたい。
農繁期や厳冬期入所の相談の多い当施設として、短期間に対象者の状態を改善し在宅復帰することで、施設サービスの評判も良くなり、次回の入所利用予約や本人状態が低下した際の老健再入所の問い合わせが増えていると実感している。
今回は、限られた期間中に入所した新規利用者であったが、今後は対象者の枠を広げ、成功事例を多く生み出し、老健ゆう独自のサービスとして確立していきたい。