講演情報

[15-O-C006-05]お厚い爪よ さようなら~=尿素配合軟膏による白癬爪の除去=

*田中 佳奈代1、北浦 百合子1、森 省一郎1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設 夕霧)
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爪白癬で肥厚し爪切りが困難な利用者に「40%尿素軟膏による患爪の除去術」を行い、良い結果が得られているので報告する。患爪に軟膏を塗布しラップなどで一定期間密封状態を継続することで患爪を除去することができ、痛みの改善などができた。効果はあるが、処置は一定期間継続する必要があるため対象者は限られる。また、皮膚トラブルもみられたため、個別に密封時の工夫をしていく必要がある。
【はじめに】
高齢者においては、爪白癬が転倒や歩行困難になる原因の一つになっている。また変形した爪によって傷ついた皮膚から、細菌感染症を引き起こすことがある。入所前からの爪白癬が進行し、爪甲の白濁・肥厚・変形をしている利用者が多くみられる。肥厚した爪の爪切りは困難となり、外用薬を塗っても深部に到達するのは困難なため、十分な効果が得られない。
当施設では日経メディカルで紹介されていた「40%尿素軟膏による患爪の除去術」を爪白癬の処置に取り入れており、事例を報告する。
【方法】
当施設では40%尿素軟膏〔尿素20g、白色ワセリン20g、精製ラノリン10g〕の調剤を薬局に依頼し使用している。手順は以下の通りである。
(1) 患爪に軟膏を塗布
(2) ガーゼの小片をのせる
(3) ラップで覆う
(4) サージカルテープを全体に巻いて密封
(5) 1週間その状態を維持し、入浴日に交換する。(交換日以外の入浴日は、ラップのみ交換)
【事例1】
T様 92歳女性。要介護度2、日常生活自立度B2、認知症高齢者の日常生活自立度IIb
日中は車椅子でテレビを観ながら過ごされることが多い。
両足第1趾が肥厚し天井方向への変形状態で、爪に触れると痛みを訴えていた。
尿素処置を開始して17日目に爪が軟化する。24日目にはさらに軟化が進み容易に剥離・一部除去することができた。27日目には患爪が完全に除去。処置の過程でテープによる皮膚トラブルがみられたが、密封の際に直接テープを皮膚に当てたことが原因だったため、それを避けることで改善した。
【事例2】
I様 93歳女性。要介護度2、日常生活自立度A2、認知症高齢者の日常生活自立度IIIb
日中はベッド上で横になったり椅子に座ってテレビを観たりして過ごしている。トイレは歩行器で頻回に行かれる。
両足第1趾が肥厚・変形し、第2趾を圧迫し潰瘍になりかけていた。
尿素処置を開始して14日目に爪の軟化がみられ、21日目に左第1趾一部剥離。35日目に右第1趾一部剥離。42日目に左第1趾患爪除去。56日目に右第1趾患爪除去。
【結果】
患爪が除去できたことで、靴下もスムーズに履けるようになり、歩行時の苦痛が消失した。また他趾への圧迫がなくなり、潰瘍になりかけていた状態が改善し、細菌感染のリスクも消失した。
【考察】
患爪の状態で軟化・除去するまでの期間は変わる。尿素処置の効果はあるが、処置は一定期間継続する必要があるため、対象者も限られる。また、爪周囲の皮膚ふやけなどがみられため、今後は皮膚トラブルを最小限にとどめられるように個別に密封時の工夫をしていく必要がある。
[参考文献]日経メディカル2004 6月