講演情報
[15-O-C007-02]効果あり!褥瘡処置にキズパワーパッド®
*清水 則絵1、小山田 裕一1、居村 晴美1、川島 誠子1、東野 奈都1、中谷 佐知子1 (1. 大阪府 松下介護老人保健施設はーとぴあ)
褥瘡発生の頻度が増え、看護師の負担が増加傾向だったため、褥瘡処置の見直しを行った。d-2程度の褥瘡処置にキズパワーパッド®を5日間連続使用し、6日目に交換するサイクルを数回繰り返すだけで治癒に至り、業務負担が軽減し、新たな業務時間を生み出すことができた。ただし褥瘡を悪化させた事例があり、使用手順を統一して毎日観察することの重要性も学び、使用手順の見直しとフローチャートの作成を行ったので報告する。
【はじめに】
施設利用者は高齢であり皮膚が腑弱なため、褥瘡形成やスキンテアのリスクが高い。スキントラブルが発生すると、毎日の洗浄、外用薬の塗布、創傷被覆材とテーピングの処置といった看護師の業務負担は大きい。そのため、処置方法を見直して業務軽減に繋げることができないか併設病院の皮膚・排泄ケア認定看護師に相談したところ、医療現場で使っているデュオアクティブ®は高額だが、それに比べると安価なキズパワーパッド®がハイドロコロイド製品としてドラッグストアでも販売されるようになり、在宅介護でも使われるようになってきたと勧められた。
在宅介護で処置の継続が必要な場合も家族に指導しやすいこと、衛生材料のコスト削減にも繋がるのではないかという観点から、施設でもd-2程度(DESIGN-R®による評価)の褥瘡に使用してみた。
【取り組み内容】
(1)2022年5月から、褥瘡発生時に褥瘡防止委員会リーダーが各フロアの看護師からの相談を受け、キズパワーパッド®の使用可否を判断し、d-2程度で感染兆候がない表皮剥離に対し使用を開始した。2022年5月からから2024年4月まで、2年間でのべ19人に使用した。
(2)処置方法は、泡洗浄し、商品説明通り最長5日間貼付した。5日間を待たずに剥がれた場合は、随時貼り替えた。
【結果】
(1)貼るだけで治癒した人は、19人中18人(95%)で、1例で感染合併を認めた。
(2)従来の処置では、泡洗浄→軟膏塗布→ガーゼ類の貼付を毎日約15分×5日間=75分かかっていたが、キズパワーパッド®では5日に1回泡洗浄→キズパワーパッド®貼付の10分程度に短縮できた。
(3)尾骨・仙骨・坐骨の褥瘡は、従来の処置では、治癒までに3~4週間掛かっていたが、キズパワーパッド®では、5日間貼付と交換のサイクルを平均3回、約2週間で治癒した。その後は基本除圧で再発を予防できた。
(4)感染をおこした事例は、2023年6月に仙骨右側の褥瘡に対し5日間貼付と交換のサイクルを継続していたが、6日目の貼り替え時にキズパワーパッド®の周囲に熱感と発赤を発見。すでに感染を起こしていた。直ちに従来の褥瘡処置に変更したが、最終的にはポケットを形成した。
(5)感染例の経験から処置手順の見直しを行なった。
1)褥瘡発見時には写真を撮影。
2)患部はキズパワーパッド®の上から毎日の観察を実施。
3)貼り替えのタイミングで写真撮影とキズパワーパッド®の継続で良いかを評価。
4)キズパワーパッド®の処置を統一するために、適応・継続の判断ができるフローチャートを作成した。
【考察】
(1)キズパワーパッド®は創部に貼るだけで湿潤環境を維持できるためd-2程度の剥離であれば効果があったと考える。
(2)従来は利用者の状態によっては処置に人員2名を要する場合もあったが、人員1名で処置も5日に1回となったことで、処置時間が1/7となり、看護師の業務負担軽減に繋げることができた。利用者にとっても処置が5日に1回となり、羞恥心や洗浄時の苦痛は軽減できたと思われる。また、処置時間の短縮により、利用者とのコミュニケーション等に充てられる有意義な時間を作ることができた。
(3)尾骨・仙骨・坐骨結節部位は排泄介助で頻回に観察できる部位であり、剥がれていたらすぐに気付いて貼り直すことができた。剥がれたまま放置することなく継続した使用ができたため、治癒に至りやすかったと考える。
(4)剥がれなければ5日間貼付継続してよいと判断し、毎日の観察を軽視してしまった結果、感染徴候に気付くのが遅れた事例を経験した。完全防水仕様で最長5日間保護可能という製品説明を過信したことは反省点であった。
(5)絶えず感染リスクを念頭に置き、使用手順を統一することで褥瘡を悪化させることは防止できると考え、フローチャートを作成した結果、以後は合併症なく治癒に繋げることが出来ている。
【まとめ】
キズパワーパッド®は適切に使用することで処置の回数・時間を減らし、d-2程度の剥離であれば効果的である。業務改善により創出できた時間を利用者とのコミュニケーションだけでなく、介護業務の手助けやフロアの見守りにも活用でき、利用者の安全の維持やスタッフ間の協力体制・良好なコミュニケーションにも繋がっている。
今回は看護師の業務負担軽減の報告に留まってしまったが、実際に衛生材料費のコスト削減まで至ったかを検討していきたい。
施設利用者は高齢であり皮膚が腑弱なため、褥瘡形成やスキンテアのリスクが高い。スキントラブルが発生すると、毎日の洗浄、外用薬の塗布、創傷被覆材とテーピングの処置といった看護師の業務負担は大きい。そのため、処置方法を見直して業務軽減に繋げることができないか併設病院の皮膚・排泄ケア認定看護師に相談したところ、医療現場で使っているデュオアクティブ®は高額だが、それに比べると安価なキズパワーパッド®がハイドロコロイド製品としてドラッグストアでも販売されるようになり、在宅介護でも使われるようになってきたと勧められた。
在宅介護で処置の継続が必要な場合も家族に指導しやすいこと、衛生材料のコスト削減にも繋がるのではないかという観点から、施設でもd-2程度(DESIGN-R®による評価)の褥瘡に使用してみた。
【取り組み内容】
(1)2022年5月から、褥瘡発生時に褥瘡防止委員会リーダーが各フロアの看護師からの相談を受け、キズパワーパッド®の使用可否を判断し、d-2程度で感染兆候がない表皮剥離に対し使用を開始した。2022年5月からから2024年4月まで、2年間でのべ19人に使用した。
(2)処置方法は、泡洗浄し、商品説明通り最長5日間貼付した。5日間を待たずに剥がれた場合は、随時貼り替えた。
【結果】
(1)貼るだけで治癒した人は、19人中18人(95%)で、1例で感染合併を認めた。
(2)従来の処置では、泡洗浄→軟膏塗布→ガーゼ類の貼付を毎日約15分×5日間=75分かかっていたが、キズパワーパッド®では5日に1回泡洗浄→キズパワーパッド®貼付の10分程度に短縮できた。
(3)尾骨・仙骨・坐骨の褥瘡は、従来の処置では、治癒までに3~4週間掛かっていたが、キズパワーパッド®では、5日間貼付と交換のサイクルを平均3回、約2週間で治癒した。その後は基本除圧で再発を予防できた。
(4)感染をおこした事例は、2023年6月に仙骨右側の褥瘡に対し5日間貼付と交換のサイクルを継続していたが、6日目の貼り替え時にキズパワーパッド®の周囲に熱感と発赤を発見。すでに感染を起こしていた。直ちに従来の褥瘡処置に変更したが、最終的にはポケットを形成した。
(5)感染例の経験から処置手順の見直しを行なった。
1)褥瘡発見時には写真を撮影。
2)患部はキズパワーパッド®の上から毎日の観察を実施。
3)貼り替えのタイミングで写真撮影とキズパワーパッド®の継続で良いかを評価。
4)キズパワーパッド®の処置を統一するために、適応・継続の判断ができるフローチャートを作成した。
【考察】
(1)キズパワーパッド®は創部に貼るだけで湿潤環境を維持できるためd-2程度の剥離であれば効果があったと考える。
(2)従来は利用者の状態によっては処置に人員2名を要する場合もあったが、人員1名で処置も5日に1回となったことで、処置時間が1/7となり、看護師の業務負担軽減に繋げることができた。利用者にとっても処置が5日に1回となり、羞恥心や洗浄時の苦痛は軽減できたと思われる。また、処置時間の短縮により、利用者とのコミュニケーション等に充てられる有意義な時間を作ることができた。
(3)尾骨・仙骨・坐骨結節部位は排泄介助で頻回に観察できる部位であり、剥がれていたらすぐに気付いて貼り直すことができた。剥がれたまま放置することなく継続した使用ができたため、治癒に至りやすかったと考える。
(4)剥がれなければ5日間貼付継続してよいと判断し、毎日の観察を軽視してしまった結果、感染徴候に気付くのが遅れた事例を経験した。完全防水仕様で最長5日間保護可能という製品説明を過信したことは反省点であった。
(5)絶えず感染リスクを念頭に置き、使用手順を統一することで褥瘡を悪化させることは防止できると考え、フローチャートを作成した結果、以後は合併症なく治癒に繋げることが出来ている。
【まとめ】
キズパワーパッド®は適切に使用することで処置の回数・時間を減らし、d-2程度の剥離であれば効果的である。業務改善により創出できた時間を利用者とのコミュニケーションだけでなく、介護業務の手助けやフロアの見守りにも活用でき、利用者の安全の維持やスタッフ間の協力体制・良好なコミュニケーションにも繋がっている。
今回は看護師の業務負担軽減の報告に留まってしまったが、実際に衛生材料費のコスト削減まで至ったかを検討していきたい。