講演情報
[15-O-C007-04]その人らしい生活と褥瘡予防の共存~看護師による体圧測定~
*高瀬 幸恵1 (1. 愛知県 社会医療法人 老人保健施設 アウン)
褥瘡の発生は、高齢者の健康、ADL、QOLへの脅威となる。今回看護師が、入所後早期に生活様式に合わせた体圧測定を実施し、多職種で褥瘡予防対策に取り組んだことが、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活を守りつつ、褥瘡の発生を抑える結果に繋がったため、ここに報告する。
<はじめに>
褥瘡の発生は、高齢者の健康、ADL、QOLへの脅威となる。そのため、入所フロア看護師(以下、看護師とする)は、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活に影響を及ぼす褥瘡を防ぎたいと考えた。
当施設では、入所時より多職種で褥瘡予防対策を実施している。しかし、褥瘡の発生を防ぐことが出来ていなかった。
当施設の褥瘡の発生は坐骨部が多く、これまでの褥瘡予防対策は、入所後の生活様式に適していないことが要因として考えられた。
そこで、看護師が中心となり、利用者の生活様式に合わせた褥瘡対策の必要性を感じ、入所後1週間以内に、体圧測定を実施した。その結果、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活を守りつつ、褥瘡を予防する事ができたため、ここに報告する。
<背景>
当施設では、利用者の入所以前の情報を元に、入所直後から褥瘡予防対策を実施していたが、褥瘡が発生している状況があった。
2022年度、当施設の褥瘡の発生は64件で、64件中、10件が入所後5~20日以内に褥瘡が発生していた。発生部位は、坐骨部・尾骨部・仙骨部であった。
当施設は超強化型であり、在宅復帰・在宅支援機能の充実のため、早期離床、ADLの向上に向けた支援を行っている。LIFEフィードバックからは、当施設が座位への介助を要する割合が高い結果が出ている。これらのことから、利用者の入所後の生活様式が、入所後早期より座位中心となったことが一因となり、褥瘡が発生していると考えられた。
当施設では、月1回褥瘡ラウンドを行っている。褥瘡ラウンドでは、臥位、座位での体圧測定を行い、その結果を看護師が中心となって多職種とアセスメントし、褥瘡予防対策に取り組んでいる。体圧測定は、体圧分布が色や数値で表され、目に見えなかった圧力を視覚的に捉えることができ、実際に行っているケアの見直しや、褥瘡対策の方向性を多職種と共有できるツールである。
そこで、施設の取り組みにある褥瘡ラウンドの体圧測定を参考に、新たに看護師が、入所後早期に生活様式に合わせた体圧測定を実施し、多職種で褥瘡予防対策に取り組んだ。
<実施期間・方法>
1.期間:2023.4~2024.3
2.対象:入所1週間以内の利用者
3.方法:1)看護師が、入所時の褥瘡の有無と褥瘡危険因子を確認し、入所後1週間以内に生活様式に
合わせ、臥位、座位時の体圧測定を実施。
2)看護師が中心となり、体圧測定の結果を元に、リハビリと協働して、結果・要因・アセスメ
ント・対策を記入した体圧測定レポートを作成。
3)施設内の情報共有ツールを使用して、看護師、介護職員、リハビリ、栄養課、相談員、医師
に体圧測定レポートを伝達、周知し、褥瘡ケア計画を立案。
4)作成された褥瘡予防対策を多職種で実践。
<結果>
実施期間内の、入所後20日以内の褥瘡の発生は0件であった。
実施期間内の新規利用者・再利用者数は272名、入所1週間以内に体圧測定が行われた利用者件数は169名であった。この169名は、褥瘡リスクが高い利用者であり、優先的に体圧測定を行ったことで、入所後20日以内の褥瘡の発生は0件であった。が、入所後20日以降に、体調不良や生活様式の変化が要因である褥瘡の発生の事例はあった。
看護師業務が多岐にわたり、体圧測定を実施する時間の確保ができなかったことが、全利用者に実施出来なかった要因である。
方法1)では、看護師が入所時に褥瘡の有無の確認、褥瘡リスクを把握し、それを元に体圧測定実施の優先度を決め、リスクの高い利用者から生活様式に合わせた体圧測定を実施していた。
2)では、可視化された体圧測定の結果を元に、看護師がリハビリと協働し、それぞれの専門性が活かされた体圧測定レポートを作成していた。
3)では、看護師が、施設内の情報共有ツールで体圧測定レポートを多職種に伝達し、それを元に多職種がそれぞれの専門職の視点を生かし、協働して褥瘡予防対策を立案。看護師は、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活に視点を置き、褥瘡ケア計画を作成していた。
4)では、作成された褥瘡ケア計画を、看護師が中心となり、多職種で実践していた。
<考察>
看護師が、入所後早期に生活様式に合わせた体圧測定を実施し、多職種で褥瘡予防対策に取り組んだ事が、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活を守りつつ、褥瘡の発生を抑える結果に繋がった。
<まとめ>
体圧測定は褥瘡予防に有用であるが、看護師が通常業務を行いながら、褥瘡予防の体圧測定を実施する事は容易ではない。体圧測定を、より身近な手段として活用していくには、運用の見直しや業務改善など課題に取り組んでいく必要がある。
私たち老人保健施設の看護師は、健康管理や医療行為を行うのはもちろん、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活を守る事を使命としている。
今後も、その人らしい生活と褥瘡予防の共存を実現、遵守していきたい。
褥瘡の発生は、高齢者の健康、ADL、QOLへの脅威となる。そのため、入所フロア看護師(以下、看護師とする)は、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活に影響を及ぼす褥瘡を防ぎたいと考えた。
当施設では、入所時より多職種で褥瘡予防対策を実施している。しかし、褥瘡の発生を防ぐことが出来ていなかった。
当施設の褥瘡の発生は坐骨部が多く、これまでの褥瘡予防対策は、入所後の生活様式に適していないことが要因として考えられた。
そこで、看護師が中心となり、利用者の生活様式に合わせた褥瘡対策の必要性を感じ、入所後1週間以内に、体圧測定を実施した。その結果、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活を守りつつ、褥瘡を予防する事ができたため、ここに報告する。
<背景>
当施設では、利用者の入所以前の情報を元に、入所直後から褥瘡予防対策を実施していたが、褥瘡が発生している状況があった。
2022年度、当施設の褥瘡の発生は64件で、64件中、10件が入所後5~20日以内に褥瘡が発生していた。発生部位は、坐骨部・尾骨部・仙骨部であった。
当施設は超強化型であり、在宅復帰・在宅支援機能の充実のため、早期離床、ADLの向上に向けた支援を行っている。LIFEフィードバックからは、当施設が座位への介助を要する割合が高い結果が出ている。これらのことから、利用者の入所後の生活様式が、入所後早期より座位中心となったことが一因となり、褥瘡が発生していると考えられた。
当施設では、月1回褥瘡ラウンドを行っている。褥瘡ラウンドでは、臥位、座位での体圧測定を行い、その結果を看護師が中心となって多職種とアセスメントし、褥瘡予防対策に取り組んでいる。体圧測定は、体圧分布が色や数値で表され、目に見えなかった圧力を視覚的に捉えることができ、実際に行っているケアの見直しや、褥瘡対策の方向性を多職種と共有できるツールである。
そこで、施設の取り組みにある褥瘡ラウンドの体圧測定を参考に、新たに看護師が、入所後早期に生活様式に合わせた体圧測定を実施し、多職種で褥瘡予防対策に取り組んだ。
<実施期間・方法>
1.期間:2023.4~2024.3
2.対象:入所1週間以内の利用者
3.方法:1)看護師が、入所時の褥瘡の有無と褥瘡危険因子を確認し、入所後1週間以内に生活様式に
合わせ、臥位、座位時の体圧測定を実施。
2)看護師が中心となり、体圧測定の結果を元に、リハビリと協働して、結果・要因・アセスメ
ント・対策を記入した体圧測定レポートを作成。
3)施設内の情報共有ツールを使用して、看護師、介護職員、リハビリ、栄養課、相談員、医師
に体圧測定レポートを伝達、周知し、褥瘡ケア計画を立案。
4)作成された褥瘡予防対策を多職種で実践。
<結果>
実施期間内の、入所後20日以内の褥瘡の発生は0件であった。
実施期間内の新規利用者・再利用者数は272名、入所1週間以内に体圧測定が行われた利用者件数は169名であった。この169名は、褥瘡リスクが高い利用者であり、優先的に体圧測定を行ったことで、入所後20日以内の褥瘡の発生は0件であった。が、入所後20日以降に、体調不良や生活様式の変化が要因である褥瘡の発生の事例はあった。
看護師業務が多岐にわたり、体圧測定を実施する時間の確保ができなかったことが、全利用者に実施出来なかった要因である。
方法1)では、看護師が入所時に褥瘡の有無の確認、褥瘡リスクを把握し、それを元に体圧測定実施の優先度を決め、リスクの高い利用者から生活様式に合わせた体圧測定を実施していた。
2)では、可視化された体圧測定の結果を元に、看護師がリハビリと協働し、それぞれの専門性が活かされた体圧測定レポートを作成していた。
3)では、看護師が、施設内の情報共有ツールで体圧測定レポートを多職種に伝達し、それを元に多職種がそれぞれの専門職の視点を生かし、協働して褥瘡予防対策を立案。看護師は、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活に視点を置き、褥瘡ケア計画を作成していた。
4)では、作成された褥瘡ケア計画を、看護師が中心となり、多職種で実践していた。
<考察>
看護師が、入所後早期に生活様式に合わせた体圧測定を実施し、多職種で褥瘡予防対策に取り組んだ事が、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活を守りつつ、褥瘡の発生を抑える結果に繋がった。
<まとめ>
体圧測定は褥瘡予防に有用であるが、看護師が通常業務を行いながら、褥瘡予防の体圧測定を実施する事は容易ではない。体圧測定を、より身近な手段として活用していくには、運用の見直しや業務改善など課題に取り組んでいく必要がある。
私たち老人保健施設の看護師は、健康管理や医療行為を行うのはもちろん、利用者の健康、ADLの維持・向上、QOLを尊重したその人らしい生活を守る事を使命としている。
今後も、その人らしい生活と褥瘡予防の共存を実現、遵守していきたい。