講演情報
[15-O-C008-06]急変時対応のためのシミュレーション研修の取り組み~急変時の円滑かつ迅速な搬送を目指して~
*亀田 尚子1、篠原 百恵1 (1. 福岡県 介護老人保健施設 ケアセンターひまわり苑)
当施設では、急変時の迅速な対応を目的として、令和5年度に急変対応マニュアルを整備し、介護職40名弱(正社員、パート、派遣)に対し、シミュレーション研修に取り組んでいる。令和6年度の研修では、急変対応時の役割を理解できた職員が増加し、急変対応に自信がもてると答えた職員は令和5年度の25%から53.1%に増加した。急変対応を円滑に行うには、座学だけでなく、シミュレーションによる研修が有効である。
I.はじめに 当施設の夜間帯は利用者100人に対し看護師1名、介護福祉士4名で対応し、入眠後は1時間に1回の呼吸確認の巡視を行っている。急変時は発見者が看護師に報告し、看護師が状態確認、家族への連絡、搬送、情報提供書の準備、救急車要請などの業務を采配している。特に夜間帯では医師不在で限られた人数で対応するため、スタッフの動きで救急搬送までの時間が変わってくる。当施設では、令和5年、急変時の円滑かつ迅速な搬送を目的としてマニュアルを見直した。そのうえで、シミュレーション研修を実施している。シミュレーション研修は、急変時の対応に効果を発揮しているので、その概要を報告する。II.研究目的急変時のシミュレーションを体験することで関わるスタッフ皆が役割を認識、協力して行動することを目的とする。III.研究方法1.対象:介護職38名(正社員、パート、派遣)2.期間:令和5年11月8日~11月16日、令和6年6月17日~6月27日3.方法:1) 急変時の搬送に必要な物品、準備と手順を明記したマニュアルを使用。2) 搬送時に必要な物品(CPRに関する同意書、救急シート)の確認。3) 一人2回のシミュレーション実施。4) 2回のシミュレーション体験後、また実際の救急搬送後のアンケートの実施。5) 心臓マッサージ実技講習、AED使用方法のDVD視聴研修の実施。IV.結果・考察 急変時の対応研修は15.8%が初めて、84.2%はすでに研修を経験していた。研修において、92.1%が救急対応時の「自分の役割を理解できた」、84.2%が「他者の役割を理解できた」と回答した。一方で、研修経験者においても、急変対応に「自信がもてる」と答えたのは53.1%であった。今後も「研修が必要」と答えた者は89.5%で、残りは「わからない」との答えで、「必要ない」の回答はなかった。令和5年度に急変対応マニュアルを改訂し、急変対応シミュレーション研修をはじめた。令和5年度に、当施設で急変に遭遇した職員でも「急変対応に自信がある」と答えたのは25%であった。今回2回目の研修であったが、「急変対応に自信がある」と答えたのは、令和5年度の2倍以上の53.1%と半数を超えていた。令和5年度研修では、87%が「自分の役割を理解できた」、75%が「他者の役割を理解できた」と回答していた。2回目の研修で、「自分の役割」を理解できた人が5%、「他者の役割」を理解できた人が10%増加していた。「自分や他者の役割が理解できなかった、わからない」と答えた主な理由は、「実際に急変が起こると、冷静な判断ができるか分からない。」であった。自由記載意見では、「搬送時の衣類等のバッグの準備」、シミュレーションの設定に夜間だけでなく「日中のシナリオ」の提案があった。研修参加者の積極的な意見の採用も、急変対応の充実に有効と考える。 今回は、2回目の研修であったこと、特に自分と他者の役割を理解することが、「急変対応に自信がある」人を増やすことに繋がったものと考える。 今回、研修成果のアンケートにGoogleフォームを利用した。令和5年度の研修では、アンケート用紙を配布し、手作業で集計した。Googleフォームでは、スマホで回答するために、回収が早く、回収が終了するとデータ解析が一気にでき、結果の整理が容易であった。 手作業に比べ日常業務への負担が少ないことから、今後、当施設での各種アンケートにGoogleフォームを導入予定である。V.結論円滑に急変対応を行うには、座学だけでなく、シナリオに基づくシミュレーション研修が有効である。研修を通じて、急変発生時の「自分の役割」と「他者の役割」を明確に理解することが、「急変対応に自信がある」職員の増加となった。今後も、急変対応シミュレーション研修を継続する予定である。