講演情報
[15-P-P201-03]当施設における移乗介助技術向上研修の効果と課題
*片岡 将貴1、澤井 弘喜1、長谷川 万莉1、山崎 舞2、山野 晃司2、牟田 博行1 (1. 大阪府 介護老人保健施設 竜間之郷、2. 社会医療法人若弘会 介護老人保健施設 竜間之郷 看護部)
当施設での移乗介助技術向上研修の効果を評価した。リハスタッフと介護スタッフが共同し、研修を計4回実施し、研修前後にアンケートを行った。結果、腰痛の軽減や介助の容易さなど肯定的な意見があったが、全体として大きな変化は見られなかった。今後は研修参加率の向上、評価方法の改善、定期的なフォローアップを通じて介助技術と入所者の生活の質向上を目指すことが重要である。
【はじめに】
介護老人保健施設では、入所者が在宅復帰を目指して日々、リハビリテーションを行っている。生活リハビリテーションとして、施設内での生活において、活動的に過ごすことや残存機能を活かした身体活動が重要とされている。特に、移乗介助は入所者の日常生活の質を大きく左右する重要なケアの一環であり、適切な介助でない場合、入所者の能力を最大限発揮することは難しいと考えられる。残存機能を活かした介助を行うことで、入所者のさらなる廃用症候群の予防や筋力・全身持久力の向上が期待でき、その人らしい生活の継続や在宅復帰に繋がると予想される。しかし、当施設では介助技術に関する研修会等の開催や情報共有の場が少ない傾向であった。日々、個別での利用者の移乗の介助指導や申し送り等、各スタッフが個別で行ってはいるものの、時間を確保し、研修を行うことが難しかった。そのため、スタッフ間での介助に差が生じ、入所者が活動的に過ごせているのか疑問が生じた。そこで、入所者がより活動的に過ごすことや残存機能が活かせるための第一歩として介助技術の統一化を図った。
【目的】
目的は、職員研修を通じて介助が必要な入所者が自身で行える動作を増やし、最終的には在宅復帰率の向上を目指すこととした。
【方法】
研修を行うにあたり、リハビリテーション課のスタッフ3名と各フロアの介護スタッフ2名にて予定の調整や研修会の内容を検討した。研修期間は2024年6月17日から6月28日の2週間とし、業務時間内で行った。研修時間は座学30分・実技60分の計90分を分けて行い、研修は各4回実施した。また、介護スタッフに対する移乗介助研修の効果を評価するため、研修前後のアンケート調査を行った。また、アンケートは五者択一のリッカート尺度とコメントの記載できる自由記述方式を用いて行った。内容は介助に関する知識の有無や入所者の特性の把握の有無、介助技術に対する自信度等を調査した。対象は当施設に勤務する介護スタッフ31名。研修内容としては基本的な知識や移乗技術、それぞれの疾患や利用者の特性に合わせた移乗方法等を行った。
【結果】
今回、研修に参加したスタッフは10名であった。参加できなかった21名の職員は座学で使用した資料を配布し、企画立案した介護スタッフに必要に応じて補足説明を依頼した。
アンケートは31部配布し、回収率は77%であった。アンケート調査では前後で大きな変化は見られなかったが、研修に参加したスタッフのコメントでは「腰痛がなくなった」や「介助が楽になった」等の意見があった。
【考察】
今回の研修の目的は、介護スタッフの移乗介助技術を統一し、入所者がより活動的に過ごせるようにすることであった。研修前後のアンケート調査の結果から、大きな変化は見られなかったが、いくつかの重要な示唆が得られた。まず、参加者からのコメントに「腰痛がなくなった」や「介助が楽になった」との意見があったことは、研修の効果を示すものである。介助技術の改善により、スタッフの身体的負担が軽減されたことは、職場環境の改善に寄与するものであり、職員のモチベーション向上や離職率の低減につながる可能性がある。また、研修によりスタッフの介助技術に対する自信度が向上したことが示唆される。これは、スタッフが入所者に対して適切な介助を提供できるようになることで、入所者の残存機能を最大限に引き出し、活動的な生活をサポートする基盤となる。特に移乗介助は入所者の日常生活の質に直結するため、スタッフが自信を持って介助を行えることは重要である。一方で、アンケートの結果に大きな変化が見られなかった点については、いくつかの要因が考えられる。まず、研修会への参加者が全スタッフの約3割であったことから、施設全体としての統一感が十分に得られていない可能性がある。今後は研修の参加率を向上させることが課題となる。また、アンケートの設問や評価方法がスタッフの実感を十分に反映していない可能性もあるため、より具体的なフィードバックを得られる方法を検討することが求められる。さらに、研修の効果をより長期的に評価するためには、定期的なフォローアップ研修や実際の介助状況の観察が必要である。最後に日々の業務の中で各スタッフが移乗介助の申し送り等を行っていることで研修会の参加の有無では結果に大きな差がなかったと考えられる。今回の研修は一定の効果を上げたものの、さらなる改善の余地があることが明らかとなった。今後は研修の参加率向上、アンケートの改善、定期的なフォローアップを通じて、介助技術の向上と入所者の生活の質の向上を目指すことが重要である。
介護老人保健施設では、入所者が在宅復帰を目指して日々、リハビリテーションを行っている。生活リハビリテーションとして、施設内での生活において、活動的に過ごすことや残存機能を活かした身体活動が重要とされている。特に、移乗介助は入所者の日常生活の質を大きく左右する重要なケアの一環であり、適切な介助でない場合、入所者の能力を最大限発揮することは難しいと考えられる。残存機能を活かした介助を行うことで、入所者のさらなる廃用症候群の予防や筋力・全身持久力の向上が期待でき、その人らしい生活の継続や在宅復帰に繋がると予想される。しかし、当施設では介助技術に関する研修会等の開催や情報共有の場が少ない傾向であった。日々、個別での利用者の移乗の介助指導や申し送り等、各スタッフが個別で行ってはいるものの、時間を確保し、研修を行うことが難しかった。そのため、スタッフ間での介助に差が生じ、入所者が活動的に過ごせているのか疑問が生じた。そこで、入所者がより活動的に過ごすことや残存機能が活かせるための第一歩として介助技術の統一化を図った。
【目的】
目的は、職員研修を通じて介助が必要な入所者が自身で行える動作を増やし、最終的には在宅復帰率の向上を目指すこととした。
【方法】
研修を行うにあたり、リハビリテーション課のスタッフ3名と各フロアの介護スタッフ2名にて予定の調整や研修会の内容を検討した。研修期間は2024年6月17日から6月28日の2週間とし、業務時間内で行った。研修時間は座学30分・実技60分の計90分を分けて行い、研修は各4回実施した。また、介護スタッフに対する移乗介助研修の効果を評価するため、研修前後のアンケート調査を行った。また、アンケートは五者択一のリッカート尺度とコメントの記載できる自由記述方式を用いて行った。内容は介助に関する知識の有無や入所者の特性の把握の有無、介助技術に対する自信度等を調査した。対象は当施設に勤務する介護スタッフ31名。研修内容としては基本的な知識や移乗技術、それぞれの疾患や利用者の特性に合わせた移乗方法等を行った。
【結果】
今回、研修に参加したスタッフは10名であった。参加できなかった21名の職員は座学で使用した資料を配布し、企画立案した介護スタッフに必要に応じて補足説明を依頼した。
アンケートは31部配布し、回収率は77%であった。アンケート調査では前後で大きな変化は見られなかったが、研修に参加したスタッフのコメントでは「腰痛がなくなった」や「介助が楽になった」等の意見があった。
【考察】
今回の研修の目的は、介護スタッフの移乗介助技術を統一し、入所者がより活動的に過ごせるようにすることであった。研修前後のアンケート調査の結果から、大きな変化は見られなかったが、いくつかの重要な示唆が得られた。まず、参加者からのコメントに「腰痛がなくなった」や「介助が楽になった」との意見があったことは、研修の効果を示すものである。介助技術の改善により、スタッフの身体的負担が軽減されたことは、職場環境の改善に寄与するものであり、職員のモチベーション向上や離職率の低減につながる可能性がある。また、研修によりスタッフの介助技術に対する自信度が向上したことが示唆される。これは、スタッフが入所者に対して適切な介助を提供できるようになることで、入所者の残存機能を最大限に引き出し、活動的な生活をサポートする基盤となる。特に移乗介助は入所者の日常生活の質に直結するため、スタッフが自信を持って介助を行えることは重要である。一方で、アンケートの結果に大きな変化が見られなかった点については、いくつかの要因が考えられる。まず、研修会への参加者が全スタッフの約3割であったことから、施設全体としての統一感が十分に得られていない可能性がある。今後は研修の参加率を向上させることが課題となる。また、アンケートの設問や評価方法がスタッフの実感を十分に反映していない可能性もあるため、より具体的なフィードバックを得られる方法を検討することが求められる。さらに、研修の効果をより長期的に評価するためには、定期的なフォローアップ研修や実際の介助状況の観察が必要である。最後に日々の業務の中で各スタッフが移乗介助の申し送り等を行っていることで研修会の参加の有無では結果に大きな差がなかったと考えられる。今回の研修は一定の効果を上げたものの、さらなる改善の余地があることが明らかとなった。今後は研修の参加率向上、アンケートの改善、定期的なフォローアップを通じて、介助技術の向上と入所者の生活の質の向上を目指すことが重要である。