講演情報

[15-P-P201-06]外国人技能実習生受け入れによる職員の意識の変化

*高橋 星奈1 (1. 島根県 益田市立介護老人保健施設くにさき苑)
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初めて外国人技能実習生を受け入れることによって環境づくりに関与する職員に与えた影響を報告する。37項目からなる質問を4項目に分けアンケートを実施した。その結果、新たな気付きや教育の向上などの教育的効果につながり、その他言葉遣いなどの接遇面や自身の日々のケアを見直す機会につながるなどの多くの影響がみられたので報告した。
1.緒言
国内の介護人材不足が問題として挙げられており、2017年11月1日「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の施行に合わせ、外国人技能実習制度の対象職種に介護職が追加された。当施設でも2023年5月より外国人技能実習生のベトナム人2名の受け入れが開始となった。介護技能実習生の中でもベトナム人実習生は最も多いが介護技能実習生受け入れによる臨床研究は多くない。そこでA介護施設で初めて外国人技能実習生を受け入れることによって環境づくりに関与する職員に与えた影響を明らかにする。
2.方法
研究方法
独自に作成した37項目からなるアンケートで選択式、自由意志、無記名式による質問紙調査
3.結果
37項目からなる質問を、実習生と接する際に意識している点、日常業務での接遇面、職場への影響、自分への影響の4つのカテゴリーに分類し集計した。
実習生と接する際に意識している点については、言葉が伝わっているか確認しているという質問に対して、全くそう思わない3.0%、あまりそう思わない0%、ある程度そう思う45.5%、非常にそう思う51.5%であった。日本語をわかりやすく伝えるという質問では全くそう思わない3.0%、あまりそう思わない0%、ある程度そう思う45.5%、非常にそう思う51.5%であった。
自身がお手本になるようにしているという質問では全くそう思わない3.0%、あまりそう思わない18.0%、ある程度そう思う54.5%、非常にそう思う24.2%であった。
日常業務での接遇面については、表情や笑顔を意識し対応するようになったという質問に対し全くそう思わない3.0%、あまりそう思わない12.1%、ある程度そう思う51.5%、非常にそう思う33.3%であった。利用者と接する態度や姿勢を見直す機会が増えたという質問では全くそう思わない3.0%、あまりそう思わない12.1%、ある程度そう思う57.6%、非常にそう思う27.3%であった。挨拶をきちんと行うようになったという質問ではでは全くそう思わない3.0%、あまりそう思わない9.1%、ある程度そう思う51.5%、非常にそう思う36.4%であり、接遇面への向上に繋がったと考える人が多くみられた。
職場への影響については仕事内容が軽減されたについての質問に対して、全くそう思わない30.3%、あまりそう思わない33.3%、ある程度そう思う33.3%、非常にそう思う3.0%であり、大きな差はみられなかった。
職員間のコミュニケーションが増えたという質問では全くそう思わない6.1%、あまりそう思わない33.3%、ある程度そう思う51.5%、非常にそう思う9.1%であった。
自分への影響については、自分のスキルアップにつながったという質問では全くそう思わない12.1%、あまりそう思わない39.4%、ある程度そう思う30.3%、非常にそう思う18.2%であった。
知識や技術の再学習への機会につながったについての質問に対して全くそう思わない9.1%、あまりそう思わない21.2%、ある程度そう思う48.5%、非常にそう思う21.2%であった。表12の自分の日々のケアを見直す機会になったという質問では全くそう思わない3.0%、あまりそう思わない24.2%、ある程度そう思う48.5%、非常にそう思う24.2%であった。
また指導をしたことがあるかどうかで比較した際、指導経験ありでは90%以上、経験なしでも60%以上が再学習の機会につながった、日々のケアを見直す機会に繋がったと回答している。
4.考察
先行研究によれば、介護の現場で外国人介護職員と共に働く日本人介護職員は外国人介護職員を概ね肯定的に捉えている。一方で日本人介護職員が不安を抱く点は、「言葉」、「文化」、「コミュニケーション」である。今回の調査結果では言葉が伝わっているか確認している、日本語をわかりやすく伝えるという2つの質問において肯定的な意見が共に、97.0%と高値であったことから言語の壁を解消できるように取り組んでいることが明らかになった。次に接遇面では外国人実習生のお手本となるように意識した結果、利用者に対してのケアや対応が見直される良い機会となった。
職場への影響のカテゴリーではいずれの質問に対しても大きな差は見られなかった。外国人技能実習生制度の導入が初めてであったことや、当施設では制度が開始し半年しか経過していなかったことが原因として考えられる。それは今後実習生がスキルアップした際の課題として追跡調査の必要性があると考えられる。
調査の結果では指導に関わった人の方が学習の必要性の意識が高まった傾向にみられた。しかし知識や技術の再学習の機会につながったかの質問や自分の日々のケアを見直す機会になったかの質問では指導経験ありの人は肯定的意見が9割、指導経験なしの人でも肯定的意見が6割を占めており、この結果から指導経験あるなしに関わらず、チーム全員の自己啓発に繋がったと考えられる。今回実習生の受け入れがスタッフやA介護施設にとって、新たな気付きや教育の向上などの教育的効果につながり、その他言葉遣いなどの接遇面や自身の日々のケアを見直す機会につながるなどの多くの影響がみられた。
今回受け入れ開始時の意識調査が行われておらず比較が困難であったが現状を知る良い機会になったのではないかと考える。
5.結論
・外国人実習生のお手本となる様に自身の対応を見直した職員が増えた
・再学習への意欲の向上に繋がったが今後も自身のスキルアップの為、学習を継続していく必要がある
・教育の向上などの教育的効果がみられた