講演情報
[15-P-P101-03]老健相談員のアウトリーチの有意性医療介護連携による通所リハビリ継続の成功事例
*阪下 潤一1 (1. 群馬県 介護老人保健施設かがやき)
医療介護連携の成功例を発表する。医療介護の連携並びに相談員によるアウトリーチの実施したことにより、通所リハビリ継続拒否のあった利用者の不満を確認する為に、自宅訪問を実施したことで利用継続となった。医療介護の連携により情報共有が行われ、アウトリーチにより本人の不満を直接確認する事が出来たのは、アウトリーチの有意性が顕著にあらわれた結果だと考えられる。
(利用者情報)82歳 男性。持ち家で夫婦2人暮らし。職歴:定年までJR(旧国鉄)で勤務し、駅長まで務めていた。定年退職後、再雇用で信用金庫や建材販売業で勤務いていた。既往歴は難聴(左耳に補聴器使用)があるが身体的には特に病歴はない。趣味と競艇、パチンコなどギャンブルが好きだった。仕事を辞めて以降、怒りっぽくなってきた。交通違反(一時停止無視など)があり、免許返納を視野に娘さんから認知症疾患医療センターに相談があり受診した(経過内容)令和3年7月に認知症疾患医療センターを受診。HDS-R 15点 MMSE 13点。アルツハイマー型認知症の診断により薬物療法開始となる。同年9月に介護保険申請。認知症疾患医療センターのDrからの提案もあり、令和4年1月からデイケアの利用開始。しかし1ヶ月弱利用したが、休みがちとなってしまう。ケアマネの訪問時にデイでの不満の訴えがあり。また認知症疾患医療センター受診時にデイケアでの不満を吐露する。受診結果を踏まえて、認知症疾患医療センター相談員とケアマネから老健相談員に相談があった。(方法)認知症疾患医療センター及びケアマネからの情報収集を行い、老健相談員が自宅へ訪問。利用者本人の希望・御家族が困っているの話を聞いた。(結果)自宅訪問で話を聞くとデイケアはつまらない。午前中は体操したりとかで楽しみもあるが、午後は退屈になるとの事だった。情報収集の中で趣味がギャンブルだったが、本人から将棋が好きだという話を聞く事が出来た。施設に持ち帰りデイケア職員に報告するも、コロナ禍であった為に利用者同士の対面レクリエーションについては敬遠している状況だった。ならば職員が対応するのはどうかと検討した結果、職員が将棋の相手をする事とした。結果を持って、再度自宅訪問して本人に提案をした。すると「将棋が出来るなら行ってもいいかな…」との返事をもらう事が出来た。利用拒否から1ヶ月後に利用再開となる。おやつを召し上がった後、送迎の時間までの40分~50分間に将棋をする事とした。現在利用から2年半が経過したがHDS-R 15点 MMSE 16点と認知機能低下に一定の歯止めをかけられているのではと感じている。また、デイでの将棋を開始して以降、週2回を休まずに利用している。現在も認知症疾患医療センターへの受診を継続しているが、受診時に「デイケアで将棋をするのが楽しみだ」と話をしてくれている。(考察)今回はデイケア利用者のケースだが、利用中に不満を漏らす事はなかったが、利用者が感じている事や不満等を自宅で直接話を聞く事で、打ち解けて話をしてくれたように思っている。職員に対して「優しくてよくやってくれてるんだよ。ただ退屈なんだ」と職員に対して遠慮している面を拾い上げる事が出来たのは、自宅という空間で話をする事ができたからなのでは感じている。この事により入所者が在宅復帰の際に、サービス担当者会議など多職種が集まる場にも老健相談員が参加の呼びかけが増えた。老健の相談員は入所者の対応が中心となるが、日頃から関わりのあるケアマネから相談を受ける事で、デイケアの状況を把握する事が出来た。