講演情報

[15-P-P101-06]身寄りがない方の支援を考える

*岩城 伸幸1、荒木 義昭1、早坂 愛1、小野寺 眞智子1 (1. 山形県 介護老人保健施設フローラさいせい)
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近年、身寄りがない方及び連帯保証人がいない方の入所相談が増加傾向にあり、入所期間も長期化している。次の生活の場が決まりにくい理由に、後見人制度の利用、医療同意場面での困難さ、意向確認の困難さなどがあげられる。そこで、施設独自の対応マニュアルを作成。マニュアルを使用した事例について報告する。
【はじめに】
近年、身寄りがない方及び連帯保証人がいない方の入所相談が増加しており、過去5年間の入所は24件あった。
当施設の過去5年間の平均在所日数は266.6日であるが、上記のケースは574.3日と、次の生活の場への支援に時間を要することが見てとれる。「身寄りのない高齢者の生活上の多様なニーズ・諸課題等の実態把握調査報告書」からも身寄りがない方及び連帯保証人がいない方が入所することへの課題に、後見人制度の利用(業務の制限)、医療同意場面での困難さ、入所時点での判断能力の低下による意向確認の困難さ等が挙げられた。
そこで、当施設で実施した身寄りがない方への支援について事例報告を行う。
【事例紹介】
68歳 男性 要介護2  生活保護停止
県外出身  親族とは音信不通→身寄り無し  負債有り  後見人/未申請
社会復帰施設にて生活後、市内のアパートで独居
○支援経過
R6.3脱水にてS総合病院入院。S総合病院MSWより入所相談。本人と面談後 当施設入所申込。
○「身寄りがない方」等の入所相談対応マニュアルの作成
身寄りのない人への支援に関するガイドラインを参考に、当施設独自の対応マニュアルを作成。項目は以下の通り
当施設の契約に関すること、金銭管理に関すること、入所の準備に関すること、入所の日用品に関すること、サービスの方針に関すること、受診に関すること、退所に関すること、郵便物の管理に関すること、権利擁護に関すること、住まいに関すること、行政手続きに関すること、希望する治療やケアに関すること(ACP)、亡くなった後に関すること
○地域ケア会議の開催
本人・MSW・市役所・社会福祉協議会・地域包括ケアセンター・定着支援センター等が参集。当施設のマニュアルにそって確認、役割分担を行い、書面にて共有を行う。
本人からは、「骨折した時は手術だろうな、痛みやつらいことはしなくない。延命治療はのぞまないよ。」など、現時点での医療に対する希望を確認。また、菩提寺や宗派、葬儀の方法についての確認を行った。
入所判定会議を経てR6.5当施設入所
○入所後の経過
当施設入所後リハビリに意欲的に取り組んでおりADLの向上が期待できる。当初、次の生活の場を特養と考えていたが、ケアハウスを視野に入れているところであり、成年後見制度利用開始を待つばかりである。
【考察】
これまでは、支援相談員が各々の支援相談技術において支援してきたが、対応マニュアルを作成したことにより、このようなケースの対応方法を整理することができた。もちろん、身寄りがいないことによる問題は多岐にわたり、これらで解決できるわけではないが、支援を行う上でのツールとして活用できると考える。また、本人が希望する治療やケアに関することを入所時点に、これまで支援してきた関係者と共に確認できたことは、大きな一歩だと考える。これらの記録を関係機関や、次の生活の場に引きつなぐことで安心して支援ができるのではないかと考える。
本事例のような身寄りがない方であっても、老健という中間施設としての機能を十分に生かし、これまでの支援者とこれからの支援者をつなぎ、サービスから排除されない社会づくりを老健支援相談員という立場から支えていきたい。
【おわりに】
身寄りのない方に対する当施設独自の対応マニュアルを作成することにより、各々の支援相談員が円滑に対応することが出来るようになった。