講演情報
[15-P-C001-01]当施設における看取りに対する介護職員の意識調査
*平子 倫美1、永山 朱音1、宮澤 昌弘1 (1. 福島県 社団医療法人 呉羽会 介護老人保健施設ガーデニア)
超高齢多死社会となり、高齢者施設内での看取りの必要性が高まっている。そのような時代背景から、当施設でも看取りを行っていく上で課題となることは何か、どのような体制の構築が必要なのかを当施設で働く介護職員を対象に意識調査を行った。調査の結果、看取りに対する不安を抱えている職員が多く、不安に対する支援や研修の必要性が明らかになった。
【はじめに】
内閣府が公表している「令和4年版高齢社会白書」によると、2025年には75歳以上の後期高齢者人口が2,180万人となり、超高齢多死社会を迎えようとしている。今後介護老人保健施設(以下、老健)においても終末期を迎える高齢者は増加する事が予想される。更に入居者の高齢化や医療ニーズの高い方が増えていることもあり、看取りを行っている老健の割合も増加している。当施設でも今後病院と協働して看取りができる施設を目指すことを目標に掲げている。過去の老健での看取りに関する研究では、看取り介護を実施している老健の看護職及び介護職員を対象にした経験の有無や看取り介護体験を通してどのように意識が変化しているかという点に焦点を当てた実態調査が多くみられる。一方、看取り介護を実施していない老健を対象にした研究は少なかった。本研究では今後看取りをしていく上で事前に介護職員への意識調査を実施し看取りに対するイメージ、課題や問題点を導き出し明らかにすることで、利用者様により良い看取りケアを提供できるよう体制の整備に役立てていきたいと考え取り組むこととした。
【目的】
意識調査をすることで、当施設での看取りに対する課題を明確にし、看取りの実施に至るまでの期間に研修や施設の体制を整え、看取りを実施する職員に対しどのような支援や体制整備が必要であるかを明らかにする。
【方法】
研究期間は令和5年9月~12月、研究対象者は介護職員33名。研究方法は帰納的研究となる。データの収集方法は(1)介護職員を対象に意識調査を実施する。(2)老健における看取りケアについてのイメージや不安、疑問について無記名での選択式と記述式の意識調査(自由記載)を実施し、統計処理する。(3)看取り経験の有無、知識、看取りに対してどのようなイメージや不安、疑問等を持っているのかアンケート調査を実施する。データ分析方法は(1)対象者に老健における看取りに関する意識調査を実施し、単純集計を行う。(2)自由記載によって得られた回答の分析は記載内容の類似性に従い分類、整理する。
【結果】
回答率は33名中25名で75%であった。回答者の背景として、経験年数が15~19年が40%と最も多く平均16.2年となっている。
Q1.看取りに対しての印象やイメージについては、本人やご家族様が最期を穏やかに過ごすことができる等が多く、その一方で不安や大変という回答も見られた。
Q2.身近な人の死を経験したことがあるかに対し「はい」が22名88%、「いいえ」が3名12%で内訳として祖父母の死という回答が多かった。
Q3.施設又は病院での看取り経験については「はい」が20名80%、「いいえ」が5名20%。
Q4.看取りに関して知識はあるかに対し「はい」が11名44%、「いいえ」が13名52%、未回答が1名4%であった。
Q5.看取りに関して教育(研修)を受けたことがあるかに対し「はい」が6名24%、未回答が2名8%、「いいえ」が17名68%と多かった。「はい」と答えた6名が受けた研修内容としては、実際の看取りの場面での口答での指導、エンゼルケア、身体清拭の方法、学校での座学であった。
Q6.当施設で看取りを行っていく上で必要だと思うことに対し、マニュアルの作成が9名52%、研修や勉強会が8名47%、環境整備が6名35%、他職種との連携が6名35%、ご本人様やご家族様の意見・意思の尊重や対応が5名29%、職員の不安の解消が2名11%、職員の統一した意識作りが1名5%となった。
Q7.問題点や疑問については、家族対応や勤務体制、他職種との連携、知識の向上、マニュアルの必要性、スペースの確保、同フロアの利用者様達への配慮についてあがった。
【考察】
アンケート調査の結果、当施設の介護職員は看取り経験者は多いが知識不足や不安を抱える職員も多いことが明らかになった。また、看取りに関する教育(研修)を受けたことがある職員も少なく、多くの職員が研修の必要性を感じていた。 今後の課題として3つ考えられる。
(1)内・外部研修を含む学ぶ場の設定である。看取りケアの正しい知識や技術、「人の死」に対する姿勢を身につけることで看取りに対する自信につながり、統一した看取りケアを提供していくことが出来ると考える。
(2)職員のメンタルケアである。ケアを行う側の精神的サポートは見過ごされがちであり、瀬尾らは今後、高齢者施設での看取りケアがさらに増加することに対して
介護職員の死への恐怖や不安をとり除き、看取りケアに積極的に取り組むことができるようにすることは重要である1)と述べている。「死に直面する不安やメンタル面への不安」が多く聞かれている為、施設として看取りケアに伴うストレスを理解し職員のメンタルケアを行っていく必要性があると考える。
(3)勤務体制や施設内環境の整備である。ケアの統一のためマニュアルの構築や周知が必要であり、質の高い看取りケアを行うにはチームケアが不可欠である。各職種の役割を明確にして円滑な連携が図れるよう体制を整える必要がある。当施設は看取りを行うスペースがなく、他利用者様への配慮も必要で、看取りを行う場や付き添うご家族様のための環境整備をすることで、より穏やかな最期を迎えられるのではないかと考える。
【結論】
(1)施設内看取りを実現させるためには、看取りに関する教育(研修)の設定が必要である。
(2)看取りに伴うストレスを理解し、施設として職員のメンタルケアを行っていく必要がある。
(3)勤務体制や施設内環境の整備、マニュアル作成と周知、医師や併設病院との連携の構築が必要であり、それらが他利用者様への配慮や穏やかに最期を迎える為の質の高いケアにつながる。
内閣府が公表している「令和4年版高齢社会白書」によると、2025年には75歳以上の後期高齢者人口が2,180万人となり、超高齢多死社会を迎えようとしている。今後介護老人保健施設(以下、老健)においても終末期を迎える高齢者は増加する事が予想される。更に入居者の高齢化や医療ニーズの高い方が増えていることもあり、看取りを行っている老健の割合も増加している。当施設でも今後病院と協働して看取りができる施設を目指すことを目標に掲げている。過去の老健での看取りに関する研究では、看取り介護を実施している老健の看護職及び介護職員を対象にした経験の有無や看取り介護体験を通してどのように意識が変化しているかという点に焦点を当てた実態調査が多くみられる。一方、看取り介護を実施していない老健を対象にした研究は少なかった。本研究では今後看取りをしていく上で事前に介護職員への意識調査を実施し看取りに対するイメージ、課題や問題点を導き出し明らかにすることで、利用者様により良い看取りケアを提供できるよう体制の整備に役立てていきたいと考え取り組むこととした。
【目的】
意識調査をすることで、当施設での看取りに対する課題を明確にし、看取りの実施に至るまでの期間に研修や施設の体制を整え、看取りを実施する職員に対しどのような支援や体制整備が必要であるかを明らかにする。
【方法】
研究期間は令和5年9月~12月、研究対象者は介護職員33名。研究方法は帰納的研究となる。データの収集方法は(1)介護職員を対象に意識調査を実施する。(2)老健における看取りケアについてのイメージや不安、疑問について無記名での選択式と記述式の意識調査(自由記載)を実施し、統計処理する。(3)看取り経験の有無、知識、看取りに対してどのようなイメージや不安、疑問等を持っているのかアンケート調査を実施する。データ分析方法は(1)対象者に老健における看取りに関する意識調査を実施し、単純集計を行う。(2)自由記載によって得られた回答の分析は記載内容の類似性に従い分類、整理する。
【結果】
回答率は33名中25名で75%であった。回答者の背景として、経験年数が15~19年が40%と最も多く平均16.2年となっている。
Q1.看取りに対しての印象やイメージについては、本人やご家族様が最期を穏やかに過ごすことができる等が多く、その一方で不安や大変という回答も見られた。
Q2.身近な人の死を経験したことがあるかに対し「はい」が22名88%、「いいえ」が3名12%で内訳として祖父母の死という回答が多かった。
Q3.施設又は病院での看取り経験については「はい」が20名80%、「いいえ」が5名20%。
Q4.看取りに関して知識はあるかに対し「はい」が11名44%、「いいえ」が13名52%、未回答が1名4%であった。
Q5.看取りに関して教育(研修)を受けたことがあるかに対し「はい」が6名24%、未回答が2名8%、「いいえ」が17名68%と多かった。「はい」と答えた6名が受けた研修内容としては、実際の看取りの場面での口答での指導、エンゼルケア、身体清拭の方法、学校での座学であった。
Q6.当施設で看取りを行っていく上で必要だと思うことに対し、マニュアルの作成が9名52%、研修や勉強会が8名47%、環境整備が6名35%、他職種との連携が6名35%、ご本人様やご家族様の意見・意思の尊重や対応が5名29%、職員の不安の解消が2名11%、職員の統一した意識作りが1名5%となった。
Q7.問題点や疑問については、家族対応や勤務体制、他職種との連携、知識の向上、マニュアルの必要性、スペースの確保、同フロアの利用者様達への配慮についてあがった。
【考察】
アンケート調査の結果、当施設の介護職員は看取り経験者は多いが知識不足や不安を抱える職員も多いことが明らかになった。また、看取りに関する教育(研修)を受けたことがある職員も少なく、多くの職員が研修の必要性を感じていた。 今後の課題として3つ考えられる。
(1)内・外部研修を含む学ぶ場の設定である。看取りケアの正しい知識や技術、「人の死」に対する姿勢を身につけることで看取りに対する自信につながり、統一した看取りケアを提供していくことが出来ると考える。
(2)職員のメンタルケアである。ケアを行う側の精神的サポートは見過ごされがちであり、瀬尾らは今後、高齢者施設での看取りケアがさらに増加することに対して
介護職員の死への恐怖や不安をとり除き、看取りケアに積極的に取り組むことができるようにすることは重要である1)と述べている。「死に直面する不安やメンタル面への不安」が多く聞かれている為、施設として看取りケアに伴うストレスを理解し職員のメンタルケアを行っていく必要性があると考える。
(3)勤務体制や施設内環境の整備である。ケアの統一のためマニュアルの構築や周知が必要であり、質の高い看取りケアを行うにはチームケアが不可欠である。各職種の役割を明確にして円滑な連携が図れるよう体制を整える必要がある。当施設は看取りを行うスペースがなく、他利用者様への配慮も必要で、看取りを行う場や付き添うご家族様のための環境整備をすることで、より穏やかな最期を迎えられるのではないかと考える。
【結論】
(1)施設内看取りを実現させるためには、看取りに関する教育(研修)の設定が必要である。
(2)看取りに伴うストレスを理解し、施設として職員のメンタルケアを行っていく必要がある。
(3)勤務体制や施設内環境の整備、マニュアル作成と周知、医師や併設病院との連携の構築が必要であり、それらが他利用者様への配慮や穏やかに最期を迎える為の質の高いケアにつながる。