講演情報
[15-P-J001-02]当施設のミールラウンドと誤嚥性肺炎の関連について
*小原 貴之1、仲元 かほり1、掛川 浩代1、安藤 果林1、大槻 真唯1 (1. 長野県 老人保健施設はびろの里)
入所棟のミールラウンド実施回数と誤嚥性肺炎の発症者数の関連について検討を行った。実施回数1回だった期間(14ヶ月)と2回に増やした期間(14ヶ月)で誤嚥性肺炎発症者数はラウンド1回の場合が17名、ラウンド2回の場合が9名だった。2期間のラウンド全対象者の内、誤嚥性肺炎発症者と未発症者に有意差があるか検討を行ったところ、p<0.001で未発症者に有意な結果となり、ラウンド回数を増やすことの有効性が示唆された。
【はじめに】
当施設は多職種協働により利用者がより安全な経口摂取が行えるように努めており、その取り組みの一つにミールラウンドを実施している。2022年5月以前は週1回だったミールラウンドを2022年6月より週2回へ回数を増やし、より安全な経口摂取が出来るように取り組んできた。ミールラウンド回数を増やしたことが誤嚥性肺炎の防止に効果を得たか検討を行い、以下へ報告する。また、誤嚥性肺炎を発症した利用者の傾向比較も併せて実施した。
【対 象】
2021年4月~2023年9月時点の当施設入所者の内、主たる栄養手段に経口摂取を用いる利用者。経管栄養、お楽しみ経口摂取の摂食機能レベルの利用者は対象外とした。
【調査期間と調査内容】
2021年4月~2022年5月の計14ヶ月(以下前半期間)と2022年6月~2023年9月の計15ヶ月(以下後半期間)の2クールを調査対象範囲とした。調査内容は以下の通り。
1)ミールラウンドを実施した全期間での対象者の内、誤嚥性肺炎発症者と未発症者の関連
2)誤嚥性肺炎発症者の身体状況、口腔機能、栄養状態及び食形態の比較
【調査対象者】
前半期間:567名(延べ)※ミールラウンド週1回
後半期間:1256名(延べ) ※ミールラウンド週2回
【検証方法】
1)X2検定 2)重回帰分析 3)MODE.SNGL(Excel統計処理)
【結果】
前半期間対象者全567名中誤嚥性肺炎の発症者は17名、未発症者は550名だった。後半期間対象者全1256名中誤嚥性肺炎の発症者は9名、未発症者は1247名であった。この2期間についてX2検定の結果、期待値(前半期間)誤嚥性肺炎発症者8.1、未発症者558.9。(後半期間)誤嚥性肺炎発症者17.9、未発症者1238.1であった。後半期間の期待値が高く算出されたことから、後半期間の全対象者数に対しての発症、未発症の影響を回帰分析を用い計算した。結果は誤嚥性肺炎発症者0.019と未発症者の0.0000013と共に有意な結果を得た。ミールラウンドを実施した全期間で誤嚥性肺炎を発症した26名について以下の項目をまとめた。(年齢)平均91.3歳、中央値91、標準偏差±3.40(介護度)平均3.1、中央値3.0、標準偏差: ±0.93(BarthelIndex)平均25、中央値10、標準偏差±23.21。最頻値をMODE.SNGLで検出。(性別)女性(主食)軟飯(副食)やわらか食(朝食時飲み物)ヨーグルト(おやつ)嚥下食(トロミ)なし(介助レベル)自立(栄養状態リスク)高リスク(食事姿勢)スタンダード車椅子(歯科領域)総義歯であった。
【考察】
今回の調査よりミールラウンドを週2回に増やしたところ対象者の延べ人数も週1回の実施時に比較し倍近い対象者数となったが、誤嚥性肺炎の発症者は週1回の実施時よりも減少するという結果を得た。実施回数を増やすことは利用者への介入機会を増やし、状態を把握しやすくなる。一方で単純に対象者利用者数の増加による業務の煩雑さを実感している。そのため、ラウンドの精度を向上させるため評価用紙作成し、各種の評価を数値化することに取り組んだ。現在は数値化することで利用者の状態をより明確に把握できることと、経時的な視点で評価が出来るようになる等、業務の刷新にも繋がっている。
誤嚥性肺炎を発症者した利用者の内訳を分析すると(介助レベル)は自立が多く、(トロミ)もなしの利用者が多く見られた。介護者側の視点では自立という点でバイアスも起こりやすく、見守りが疎かになってしまうことも考えられる。そのため、ラウンドから得られた評価をより詳細に分析し、リスクの側面も考慮して現場スタッフへ伝えていく必要性がある。また、(栄養状態リスク)高リスクや(歯科領域)総義歯という結果が得られ、リハ/口腔/栄養の一体的な推進の観点からも今以上の協働と協力体制を構築し利用者に関わる必要性を改めて感じた。
当施設は多職種協働により利用者がより安全な経口摂取が行えるように努めており、その取り組みの一つにミールラウンドを実施している。2022年5月以前は週1回だったミールラウンドを2022年6月より週2回へ回数を増やし、より安全な経口摂取が出来るように取り組んできた。ミールラウンド回数を増やしたことが誤嚥性肺炎の防止に効果を得たか検討を行い、以下へ報告する。また、誤嚥性肺炎を発症した利用者の傾向比較も併せて実施した。
【対 象】
2021年4月~2023年9月時点の当施設入所者の内、主たる栄養手段に経口摂取を用いる利用者。経管栄養、お楽しみ経口摂取の摂食機能レベルの利用者は対象外とした。
【調査期間と調査内容】
2021年4月~2022年5月の計14ヶ月(以下前半期間)と2022年6月~2023年9月の計15ヶ月(以下後半期間)の2クールを調査対象範囲とした。調査内容は以下の通り。
1)ミールラウンドを実施した全期間での対象者の内、誤嚥性肺炎発症者と未発症者の関連
2)誤嚥性肺炎発症者の身体状況、口腔機能、栄養状態及び食形態の比較
【調査対象者】
前半期間:567名(延べ)※ミールラウンド週1回
後半期間:1256名(延べ) ※ミールラウンド週2回
【検証方法】
1)X2検定 2)重回帰分析 3)MODE.SNGL(Excel統計処理)
【結果】
前半期間対象者全567名中誤嚥性肺炎の発症者は17名、未発症者は550名だった。後半期間対象者全1256名中誤嚥性肺炎の発症者は9名、未発症者は1247名であった。この2期間についてX2検定の結果、期待値(前半期間)誤嚥性肺炎発症者8.1、未発症者558.9。(後半期間)誤嚥性肺炎発症者17.9、未発症者1238.1であった。後半期間の期待値が高く算出されたことから、後半期間の全対象者数に対しての発症、未発症の影響を回帰分析を用い計算した。結果は誤嚥性肺炎発症者0.019と未発症者の0.0000013と共に有意な結果を得た。ミールラウンドを実施した全期間で誤嚥性肺炎を発症した26名について以下の項目をまとめた。(年齢)平均91.3歳、中央値91、標準偏差±3.40(介護度)平均3.1、中央値3.0、標準偏差: ±0.93(BarthelIndex)平均25、中央値10、標準偏差±23.21。最頻値をMODE.SNGLで検出。(性別)女性(主食)軟飯(副食)やわらか食(朝食時飲み物)ヨーグルト(おやつ)嚥下食(トロミ)なし(介助レベル)自立(栄養状態リスク)高リスク(食事姿勢)スタンダード車椅子(歯科領域)総義歯であった。
【考察】
今回の調査よりミールラウンドを週2回に増やしたところ対象者の延べ人数も週1回の実施時に比較し倍近い対象者数となったが、誤嚥性肺炎の発症者は週1回の実施時よりも減少するという結果を得た。実施回数を増やすことは利用者への介入機会を増やし、状態を把握しやすくなる。一方で単純に対象者利用者数の増加による業務の煩雑さを実感している。そのため、ラウンドの精度を向上させるため評価用紙作成し、各種の評価を数値化することに取り組んだ。現在は数値化することで利用者の状態をより明確に把握できることと、経時的な視点で評価が出来るようになる等、業務の刷新にも繋がっている。
誤嚥性肺炎を発症者した利用者の内訳を分析すると(介助レベル)は自立が多く、(トロミ)もなしの利用者が多く見られた。介護者側の視点では自立という点でバイアスも起こりやすく、見守りが疎かになってしまうことも考えられる。そのため、ラウンドから得られた評価をより詳細に分析し、リスクの側面も考慮して現場スタッフへ伝えていく必要性がある。また、(栄養状態リスク)高リスクや(歯科領域)総義歯という結果が得られ、リハ/口腔/栄養の一体的な推進の観点からも今以上の協働と協力体制を構築し利用者に関わる必要性を改めて感じた。