講演情報
[15-P-J001-03]入院時から食事形態向上と摂取状況改善が見られた一例
*仁木 裕也1、高山 優衣1、遠藤 友紀人1、内村 友紀1 (1. 東京都 介護老人保健施設マイウェイ四谷)
病院に約2ヶ月間入院となり手術をしたことによって以前より食事形態が下がってしまったため、他職種と連携して入院前の食事形態に近づけることができるよう検討した。言語聴覚士を中心に摂食・嚥下評価を行い、食事形態の向上・摂取栄養量の増加・栄養補助食品の中止など摂取状況の改善が見られたことを報告する。
【はじめに】
当施設は東京都新宿区にあるユニット型個室72床(2フロア8ユニット)従来型個室28床の計100床の老健である。住み慣れた地域で、質の高い、優しく、楽しく、快適な、リハビリ・マインドのある介護サービスを提供する事を理念としている。病院から入所してくるご利用者様や、体調の悪化による入院から再入所するご利用者様は、食事形態が入院前に食べていたものより下がってしまうことも少なくない。また、ご利用者様本人やご家族様から、「もっと形のあるものが食べたい」「前に食べていた形態に戻してほしい」などの希望が聞かれることも多い。
【目的】入院したことにより落ちてしまった食事形態を徐々に上げていくことで、摂食・嚥下能力を維持することができ、今後も経口摂取を続けていける状態を保てるようにする。
【方法】
言語聴覚士を中心として多職種で食事の様子を観察して、日々の摂取状況の把握していく。言語聴覚士に食事評価の依頼後、厨房にテスト食の依頼し、ご用者様がテスト食を摂取する様子を言語聴覚士に評価してもらう。
【対象者】
N様 77歳 女性
2023年11月23に発熱。その後、腹部膨満も確認され11月27日に救急搬送。精査した結果、盲腸癌の腹腔内腫瘍が疑われ入院。2024年1月5日に開腹結腸右半切除術を施行し、1月24日に退院し再入所。
(入所時)
要介護:5 食事動作:全介助
体重:35.5kg(入院前:39.8kg) BMI:16.7(入院前:19.2)
既往歴:横紋筋融解症、神経因性膀胱、認知症、高血圧症、頭部打撲症、
パーキンソン症候群、盲腸癌、穿孔性腹腔内腫瘍
食事:一般食(1400kcal)・軟飯・刻み・全体量1/2・メイバランスミニ3本/日
【経過】
・2021年11月25日入所
食事:一般食(1600kcal)・米飯・常菜
体重:38.7kg、BMI:18.7
食事動作:自力摂取
・2023年10月7日
介護士より、通常の食器だとすくいづらく食べこぼしがあるとのことでリハ食器に変更。
・2023年11月23日
38.5℃の発熱があり、抗生剤治療が開始。
・2023年11月24日
自力摂取が難しくなってきている、食事中に傾眠することがある、前日からの体調不良といった状況に伴い、安全のために言語聴覚士に食事評価を依頼。米飯・常菜・水分とろみ無しを提供中であるが、主食:全粥、副食:刻みあんとじ、水分:中間とろみのテスト食を実施。
言語聴覚士の評価…声かけセッティングにて左手でスプーン自力摂取開始するが、動作緩慢でなかなかすくえず。食べる意欲はあるが、途中で止まってしまい、介助摂取となる。介助に開口取り込みみられ、口腔内のため込みなく、送り込み、嚥下は概ねスムーズにみられる。途中で傾眠がちになる場面あり、声かけ促し必要だが、むせなく召し上がる。
言語聴覚士の評価により、夕食~全粥・刻みあんとじ・水分中間とろみ・おやつ常菜対応へ変更。
・2023年11月26日
腹部膨満、最高39.1℃の発熱あり。
・2023年11月27日
熱発、腹部膨満が継続しているため、医師から受診の指示あり。病院より受診可との指示を受け救急車にて搬送。その後、盲腸癌の腹腔内腫瘍が疑われ入院。
・2024年1月24日再入所
食事:一般食(1400kcal)・軟飯・刻み・全体量1/2・メイバランスミニ3本/日
体重:35.5kg BMI:16.7
食事動作:全介助。以前より注意が逸れやすくなった。
摂取量:主食10割、副食10割
病院での食事:軟飯・刻み(2cm角)・全体量1/2・テルミール・リンゴジュースなど
計1000kcal摂取、Na値低いため毎食梅干し提供、水分とろみ無し
入院前と比べると、体重は-4.4kgの減少あり。ADL低下に伴い、食事動作は全介助に変更となった。その後、食事は全介助にて全量摂取できている。
・2024年3月9日
体重:36.5kg BMI:17.1
ご本人様の新型コロナウイルス陽性が判明。
症状:熱発あり。現時点では呼吸器症状等は無し。
その後も大きな体調変化はなく、食事もほぼ全量摂取できている。
同フロアにて新型コロナウイルス陽性者が3名となったためフロア閉鎖対応。新型コロナウイルスの拡大により、検討していたテスト食の予定は延期。
・20224年3月18日
新型コロナウイルスによる感染隔離期間が終了。新型コロナウイルス感染による嚥下能力の低下などは無し。
・2024年5月8日
体重:38.5kg BMI:18.1
言語聴覚士に食事評価を依頼し、副食:一口大のテスト食を実施。
言語聴覚士の評価:先行期:食物認知良好、準備期:自己の歯にて咀嚼可能、口腔期:舌にて送り込み可能、咽頭期:ムセなし、食道期:逆流なし
後半も咀嚼動作に疲労感みられず、ムセなく摂取されている。
言語聴覚士の評価にて問題がないため、夕食~副食:一口大に変更。
・2024年5月15日
食事摂取良好であり、介助ではあるが摂取ペースも良好であるため、全体量1/2とメイバランスミニ3本/日を中止、全量提供に変更。
全量提供に変更後も食事は全量摂取できているが、食事時間は長くなった。
【結果】
入院によりADLの低下があったがテスト食を実施し、言語聴覚士の評価のもと、軟飯・刻み・全体量1/2・メイバランスミニ3本/日→軟飯・一口大まで食事形態を上げることができた。入院時の摂取栄養量1000kcalから1400kcal→1600kcalと摂取栄養量を増やすこともでき、体重増加がみられた。
【考察】
術後の経過が良かったこともあり、言語聴覚士を中心として看護師・介護士との連携のもと、食事摂取量を確保することができた。また、入院時に約1ヶ月の禁食期間があったが、摂食・嚥下能力に大きな変化は見られなかったため、適宜言語聴覚士に食事形態についての評価を依頼し、結果を共有したうえで食事形態を上げていくことができた。言語聴覚士より、今後米飯や常菜への食事形態の向上が見込めるとのことであるため、引き続き他職種と連携を取りながら、入院前の食事形態に戻していけるように努めていく。
当施設は東京都新宿区にあるユニット型個室72床(2フロア8ユニット)従来型個室28床の計100床の老健である。住み慣れた地域で、質の高い、優しく、楽しく、快適な、リハビリ・マインドのある介護サービスを提供する事を理念としている。病院から入所してくるご利用者様や、体調の悪化による入院から再入所するご利用者様は、食事形態が入院前に食べていたものより下がってしまうことも少なくない。また、ご利用者様本人やご家族様から、「もっと形のあるものが食べたい」「前に食べていた形態に戻してほしい」などの希望が聞かれることも多い。
【目的】入院したことにより落ちてしまった食事形態を徐々に上げていくことで、摂食・嚥下能力を維持することができ、今後も経口摂取を続けていける状態を保てるようにする。
【方法】
言語聴覚士を中心として多職種で食事の様子を観察して、日々の摂取状況の把握していく。言語聴覚士に食事評価の依頼後、厨房にテスト食の依頼し、ご用者様がテスト食を摂取する様子を言語聴覚士に評価してもらう。
【対象者】
N様 77歳 女性
2023年11月23に発熱。その後、腹部膨満も確認され11月27日に救急搬送。精査した結果、盲腸癌の腹腔内腫瘍が疑われ入院。2024年1月5日に開腹結腸右半切除術を施行し、1月24日に退院し再入所。
(入所時)
要介護:5 食事動作:全介助
体重:35.5kg(入院前:39.8kg) BMI:16.7(入院前:19.2)
既往歴:横紋筋融解症、神経因性膀胱、認知症、高血圧症、頭部打撲症、
パーキンソン症候群、盲腸癌、穿孔性腹腔内腫瘍
食事:一般食(1400kcal)・軟飯・刻み・全体量1/2・メイバランスミニ3本/日
【経過】
・2021年11月25日入所
食事:一般食(1600kcal)・米飯・常菜
体重:38.7kg、BMI:18.7
食事動作:自力摂取
・2023年10月7日
介護士より、通常の食器だとすくいづらく食べこぼしがあるとのことでリハ食器に変更。
・2023年11月23日
38.5℃の発熱があり、抗生剤治療が開始。
・2023年11月24日
自力摂取が難しくなってきている、食事中に傾眠することがある、前日からの体調不良といった状況に伴い、安全のために言語聴覚士に食事評価を依頼。米飯・常菜・水分とろみ無しを提供中であるが、主食:全粥、副食:刻みあんとじ、水分:中間とろみのテスト食を実施。
言語聴覚士の評価…声かけセッティングにて左手でスプーン自力摂取開始するが、動作緩慢でなかなかすくえず。食べる意欲はあるが、途中で止まってしまい、介助摂取となる。介助に開口取り込みみられ、口腔内のため込みなく、送り込み、嚥下は概ねスムーズにみられる。途中で傾眠がちになる場面あり、声かけ促し必要だが、むせなく召し上がる。
言語聴覚士の評価により、夕食~全粥・刻みあんとじ・水分中間とろみ・おやつ常菜対応へ変更。
・2023年11月26日
腹部膨満、最高39.1℃の発熱あり。
・2023年11月27日
熱発、腹部膨満が継続しているため、医師から受診の指示あり。病院より受診可との指示を受け救急車にて搬送。その後、盲腸癌の腹腔内腫瘍が疑われ入院。
・2024年1月24日再入所
食事:一般食(1400kcal)・軟飯・刻み・全体量1/2・メイバランスミニ3本/日
体重:35.5kg BMI:16.7
食事動作:全介助。以前より注意が逸れやすくなった。
摂取量:主食10割、副食10割
病院での食事:軟飯・刻み(2cm角)・全体量1/2・テルミール・リンゴジュースなど
計1000kcal摂取、Na値低いため毎食梅干し提供、水分とろみ無し
入院前と比べると、体重は-4.4kgの減少あり。ADL低下に伴い、食事動作は全介助に変更となった。その後、食事は全介助にて全量摂取できている。
・2024年3月9日
体重:36.5kg BMI:17.1
ご本人様の新型コロナウイルス陽性が判明。
症状:熱発あり。現時点では呼吸器症状等は無し。
その後も大きな体調変化はなく、食事もほぼ全量摂取できている。
同フロアにて新型コロナウイルス陽性者が3名となったためフロア閉鎖対応。新型コロナウイルスの拡大により、検討していたテスト食の予定は延期。
・20224年3月18日
新型コロナウイルスによる感染隔離期間が終了。新型コロナウイルス感染による嚥下能力の低下などは無し。
・2024年5月8日
体重:38.5kg BMI:18.1
言語聴覚士に食事評価を依頼し、副食:一口大のテスト食を実施。
言語聴覚士の評価:先行期:食物認知良好、準備期:自己の歯にて咀嚼可能、口腔期:舌にて送り込み可能、咽頭期:ムセなし、食道期:逆流なし
後半も咀嚼動作に疲労感みられず、ムセなく摂取されている。
言語聴覚士の評価にて問題がないため、夕食~副食:一口大に変更。
・2024年5月15日
食事摂取良好であり、介助ではあるが摂取ペースも良好であるため、全体量1/2とメイバランスミニ3本/日を中止、全量提供に変更。
全量提供に変更後も食事は全量摂取できているが、食事時間は長くなった。
【結果】
入院によりADLの低下があったがテスト食を実施し、言語聴覚士の評価のもと、軟飯・刻み・全体量1/2・メイバランスミニ3本/日→軟飯・一口大まで食事形態を上げることができた。入院時の摂取栄養量1000kcalから1400kcal→1600kcalと摂取栄養量を増やすこともでき、体重増加がみられた。
【考察】
術後の経過が良かったこともあり、言語聴覚士を中心として看護師・介護士との連携のもと、食事摂取量を確保することができた。また、入院時に約1ヶ月の禁食期間があったが、摂食・嚥下能力に大きな変化は見られなかったため、適宜言語聴覚士に食事形態についての評価を依頼し、結果を共有したうえで食事形態を上げていくことができた。言語聴覚士より、今後米飯や常菜への食事形態の向上が見込めるとのことであるため、引き続き他職種と連携を取りながら、入院前の食事形態に戻していけるように努めていく。