講演情報

[15-P-J001-04]食生活の安定と栄養状態の維持に影響する要因について~当施設の現状と対策~

*内村 友紀1、遠藤 友紀人1、仁木 裕也1、高山 優衣1 (1. 東京都 介護老人保健施設マイウェイ四谷)
PDFダウンロードPDFダウンロード
利用者の安定した食生活と栄養状態の維持を阻害する要因には摂食嚥下機能のみならず、食事に影響を与える複数の問題点が認められる。当施設利用者の傾向を分析した結果、認知機能の低下をはじめとした問題が主な要因としてあげられたが、現状の対策は対症療法的な内容にとどまることがほとんどであった。今後は利用者の生活機能全般を多角的に捉えて分析し、より効果的な対策を検討していく必要があると考える。
【はじめに】
施設生活の中で、利用者の安定した食生活とそれに伴う栄養状態の確保は、生活機能の維持と生活の質の向上において重要といえる。今回、それらの阻害要因となる摂食嚥下および食事に関わる問題点と必要とされる支援について、当施設の傾向を分析し、考察を加えた。
【方法と結果】
当施設に令和6年3月から5月まで在籍していた入所利用者108名を対象に分析を行なった。対象期間の入所利用者108名の内、食形態の調整や水分のトロミの付加、食事の介助など、何らかの介入、支援を必要とした利用者は45名だった。その内、誤嚥・窒息のリスクや栄養状態維持に注意を要する利用者は31名だった。更に食事を進める上で何らかの重点的な個別対応が必要となる利用者は19名だった。個別対応が必要となる主な要因として、(1)認知機能の低下のため食事行為の維持が困難な状態、(2)食思低下や食嗜好の偏向により十分な摂取量が確保できない状態、(3)不穏状態が強く、食事摂取が進まない状態、(4)食事自力摂取のペースが速く、誤嚥・窒息のリスクが高い状態、の4つが認められた。また、重点的な個別対応が必要な利用者19名の内、嚥下機能に何らかの問題がある利用者は8名のみで、常食に近い食形態を自力摂取できる機能自体を持っている利用者が多いことも分かった。
(1)~(4)の要因に応じた対策として、(1)介助者がマンツーマンで付き添い、食事の介助、支援にあたる、(2)多職種で情報共有し、利用者それぞれに合った食事内容をその都度検討して食事提供していく、(3)精神状態、覚醒の状態に合わせた関わり方の工夫、食形態や食事内容を適時調整するなど、多職種で協力しながら対応する、(4)リスクに対応した食形態の調整や、摂取ペースを保てる食事介助や食事提供を行なう、のような個別対応と支援を実施している。
【考察と課題】
摂食嚥下機能に大きな問題がなくても、上記(1)~(4)のような要因があることで、安定した食生活の維持に支障をきたすケースがあり、それぞれに適した個別対応と支援が必要となる。また対策も対症療法的な内容にとどまることが多いため、要因を引き起こす状況が改善して対応の必要性がなくならない限り、安定した食事摂取状況を維持するために個別対応の継続や再検討が求められ、目標達成に至らない。そこに多くのマンパワーを費やす状態が続き、結果他の利用者に対してもケアの質の低下を引き起こす、対応に職員が疲弊する、などの悪循環に陥りやすい。今後は利用者の食事に関わる機能、能力や環境に合わせた対応をするだけでなく、生活状況全般を多角的に捉え、利用者の生活機能や生活の質を向上させることで食事に関わる問題も改善が可能か検討していく必要があると考える。これからの科学的介護の分析結果や成果を踏まえ、利用者の安定した食生活の支援に引き続き取り組んでいきたい。