講演情報
[15-P-J001-06]車椅子乗車時の座り直しに対する職員の意識改革
*湯本 英里1、平山 幸子1、岡崎 友香2、山崎 みどり1 (1. 埼玉県 独立行政法人地域医療機能推進機構 埼玉メディカルセンター付属介護老人保健施設、2. 独立行政法人地域医療機能推進機構 埼玉メディカルセンター)
利用者の車椅子上の座り直しについての理解を深め、職員一人ひとりが意識して座り直しが実践できるようになる目的で取り組みを行った。その結果、明らかな意識改革までの効果が得られなかったが、行動変異に繋がったので報告する。方法として座り直し対する教育の前後にその意識についてのアンケートを実施した。今後も安楽な車椅子乗車が出来るように本研究を継続していきたい。
【はじめに】 当施設の多くの利用者は日々の生活の中で車椅子に座って過ごす時間が必ずあり、体の一部として車椅子を使用している。ある利用者に車椅子乗車時間が長く同じ姿勢のままになってしまい体が辛いと訴えを聞いたことがある。介護現場において、車椅子に乗車している利用者の多くは乗車時間が長くかつ自分で座り直すことができない為、苦痛を感じているのではないかと感じた。乗車時間が長い利用者に対して苦痛軽減や転落危険防止の為、座り直しを行う職員がいる一方殿部を持ち上げるのみを座り直しと捉える職員もおり、座り直しに対する行動に個人差があると感じた。そこで、職員一人ひとりがどのように意識して座り直しを行っているのかアンケートを行い把握する。長時間の座位姿勢のリスクやその改善点を明記した資料を配布し座り直しについての理解を深め、意識して実践をすることで利用者がより快適に施設生活をおくれるようにしていきたと考えた
【目的】
座り直しについての理解を深め、職員一人ひとりが意識して座り直しに対する意識改革を行うことができる
【方法】
対象: 2フロア看護師12名介護福祉士18名 計30名
期間:2024年 3月~2024年 7月
方法
1)座り直しに対する意識についての事前アンケートを実施する
2)事前アンケート実施後、長時間の座位姿勢のリスクやその改善点を明記した資料を配布し閲覧後、各フロア内で一ヵ月半程実施する
3)フロア内で実施後、アンケートを実施し前後で比較、職員の意識の変化を分析する
倫理的配慮
本研究では、個人が特定される表記は避け、研究以外の目的で使用することはないこと等をアンケート内に同意欄を設け同意とアンケート回答によって協力する同意が得られたものとする。また、本研究は埼玉メディカルセンター臨床研究倫理委員会の審査を受けた(24-09)
【結果】
研修前アンケート(以下前アンケートとする)配布数30名 回収数30名 回収率100%
実施後アンケート(以下後アンケートとする)配布数30名 回収数27名 回収率90%
座り直しを行う理由として、前アンケートでは「転落・褥瘡の危険性がある為行う」と22人が回答している。その他の理由では「自力で座り直しを行うことが困難」「誤嚥の可能性がある」などの回答があった。これは後アンケートでも、同様の回答であった。
また、座り直しに対する質問結果は以下の通りであった
質問:座り直しを意識して行っているか
研修前 研修後
はい 76.7% 85.2%
いいえ 23.3% 14.8%
質問:フロア職員から見て全体で行えているか
研修前 研修後
はい 23.3% 29.6%
いいえ 76.7% 70.4%
前アンケートでは「職員間で声かけを行うことができている」「他職員が座り直しをしている姿を見る」の意見はあったが少数であった。しかし、後アンケートでは、「職員間での声かけを行うことができている」等、連携している発言が増えた。また、当施設では、皮膚状態が悪い利用者に対して予防策の1つとしてタイマーを設定し定期的に座り直しを行っているが、「タイマーを使用していない利用者に対しては行えていない」の回答もあった。さらに、前後で変わらない回答として「業務の多忙さで意識が向きづらい」等があった
【考察】
今回の取り組みを行ったことで、多くの職員は座り直しの必要性は理解しているが、座り直しに対しての意識が低く、ケア行為の優先順位によって座り直しが後になってしまい十分にできていないことが明らかとなった。従来行っている業務の優先順位付けは、安全が優先ではあるが、利用者が少しでも快適に過ごせるよう座り直しも一緒に考えていく必要がある。また、「業務の多忙さ」に関連した回答などもあり、業務の見直しも検討していく必要がある。
次に「フロア職員から見て全体で行えているか」の問いに対して研修前後の差がなく効果的な研修ではなかったと考える。しかし、アンケートの結果には出なかったが、フロアでは座り直しに対して声を掛け合う姿が多々見受けられるようになった。他者からの声かけにより座り直しのケアが行えているが、自ら気づいてケアをするまでには至っていない。その理由として、座っている利用者の時間に意識がむきづらいのではないかと考えた。そのため、効果的な研修について考えていく必要がある。
研修方法においては、繰り返し研修を継続していくことで意識づけに繋がる。「人の情報入力は視覚から8 割」といわれているため、座り直しの研修だけでなく、座り直しに関連したポスター掲示などを行うことも有効であったのではないかと考える。
そして、「タイマーを使用していない利用者に対しては行えていない」等、看護師のアセスメントから、指示されて座り直しを行っていた。これも、座り直しの意識づけ低いと考える。意識して行うというよりは業務の一環となっているのではないかと考える。
しかし、本研究をはじめてから、フロアでのレクリエーションを始める前に座り直しを行うよう利用者に呼び掛けている職員が増えていた。そして、この研究に賛同する声や、褥瘡委員会でもポジショニングの必要性を改めて考え、正しい実践ができるように取り組む計画案が出ている。
今回、この取り組みをおこなったことで、改めて座り直しの重要性を職員と一緒に考える事ができた
【結論】
・今回の研修を受ける前から多くの職員が座り直しを行う理由として「転落・褥瘡の危険性がある為」と考えていたことがわかった
・座り直しについての意識改革を行う上で、今回の方法では意識改革までの効果が得られなかったが行動変容は感じられた
・忙しい理由でケア行為の優先順位によって座り直しが後になっていることがわかった
【今後の課題】
・職員研修は、現場で実践しながら復習を行い継続的に実施する
・褥瘡委員会メンバーと協力しながら継続して取り組む
・正しい座り直しを掲示し視覚の効果で意識を高める
【目的】
座り直しについての理解を深め、職員一人ひとりが意識して座り直しに対する意識改革を行うことができる
【方法】
対象: 2フロア看護師12名介護福祉士18名 計30名
期間:2024年 3月~2024年 7月
方法
1)座り直しに対する意識についての事前アンケートを実施する
2)事前アンケート実施後、長時間の座位姿勢のリスクやその改善点を明記した資料を配布し閲覧後、各フロア内で一ヵ月半程実施する
3)フロア内で実施後、アンケートを実施し前後で比較、職員の意識の変化を分析する
倫理的配慮
本研究では、個人が特定される表記は避け、研究以外の目的で使用することはないこと等をアンケート内に同意欄を設け同意とアンケート回答によって協力する同意が得られたものとする。また、本研究は埼玉メディカルセンター臨床研究倫理委員会の審査を受けた(24-09)
【結果】
研修前アンケート(以下前アンケートとする)配布数30名 回収数30名 回収率100%
実施後アンケート(以下後アンケートとする)配布数30名 回収数27名 回収率90%
座り直しを行う理由として、前アンケートでは「転落・褥瘡の危険性がある為行う」と22人が回答している。その他の理由では「自力で座り直しを行うことが困難」「誤嚥の可能性がある」などの回答があった。これは後アンケートでも、同様の回答であった。
また、座り直しに対する質問結果は以下の通りであった
質問:座り直しを意識して行っているか
研修前 研修後
はい 76.7% 85.2%
いいえ 23.3% 14.8%
質問:フロア職員から見て全体で行えているか
研修前 研修後
はい 23.3% 29.6%
いいえ 76.7% 70.4%
前アンケートでは「職員間で声かけを行うことができている」「他職員が座り直しをしている姿を見る」の意見はあったが少数であった。しかし、後アンケートでは、「職員間での声かけを行うことができている」等、連携している発言が増えた。また、当施設では、皮膚状態が悪い利用者に対して予防策の1つとしてタイマーを設定し定期的に座り直しを行っているが、「タイマーを使用していない利用者に対しては行えていない」の回答もあった。さらに、前後で変わらない回答として「業務の多忙さで意識が向きづらい」等があった
【考察】
今回の取り組みを行ったことで、多くの職員は座り直しの必要性は理解しているが、座り直しに対しての意識が低く、ケア行為の優先順位によって座り直しが後になってしまい十分にできていないことが明らかとなった。従来行っている業務の優先順位付けは、安全が優先ではあるが、利用者が少しでも快適に過ごせるよう座り直しも一緒に考えていく必要がある。また、「業務の多忙さ」に関連した回答などもあり、業務の見直しも検討していく必要がある。
次に「フロア職員から見て全体で行えているか」の問いに対して研修前後の差がなく効果的な研修ではなかったと考える。しかし、アンケートの結果には出なかったが、フロアでは座り直しに対して声を掛け合う姿が多々見受けられるようになった。他者からの声かけにより座り直しのケアが行えているが、自ら気づいてケアをするまでには至っていない。その理由として、座っている利用者の時間に意識がむきづらいのではないかと考えた。そのため、効果的な研修について考えていく必要がある。
研修方法においては、繰り返し研修を継続していくことで意識づけに繋がる。「人の情報入力は視覚から8 割」といわれているため、座り直しの研修だけでなく、座り直しに関連したポスター掲示などを行うことも有効であったのではないかと考える。
そして、「タイマーを使用していない利用者に対しては行えていない」等、看護師のアセスメントから、指示されて座り直しを行っていた。これも、座り直しの意識づけ低いと考える。意識して行うというよりは業務の一環となっているのではないかと考える。
しかし、本研究をはじめてから、フロアでのレクリエーションを始める前に座り直しを行うよう利用者に呼び掛けている職員が増えていた。そして、この研究に賛同する声や、褥瘡委員会でもポジショニングの必要性を改めて考え、正しい実践ができるように取り組む計画案が出ている。
今回、この取り組みをおこなったことで、改めて座り直しの重要性を職員と一緒に考える事ができた
【結論】
・今回の研修を受ける前から多くの職員が座り直しを行う理由として「転落・褥瘡の危険性がある為」と考えていたことがわかった
・座り直しについての意識改革を行う上で、今回の方法では意識改革までの効果が得られなかったが行動変容は感じられた
・忙しい理由でケア行為の優先順位によって座り直しが後になっていることがわかった
【今後の課題】
・職員研修は、現場で実践しながら復習を行い継続的に実施する
・褥瘡委員会メンバーと協力しながら継続して取り組む
・正しい座り直しを掲示し視覚の効果で意識を高める