講演情報

[27-O-A002-04]特定行為研修修了者による抗精神病薬投与と客観的評価「眠りSCAN」を用いた客観的評価の実践報告

静岡県 中西 祥子, 宮木 愛子 (西山ウエルケア)
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【はじめに】西山病院グループでは、2018年12月より手順書による特定行為の運用を開始し、現在11の特定行為に対して手順書が整備されている。当法人グループ全体では11名の特定行為研修修了者が在籍しており、その実践を積極的に推進している。西山ウエルケア(老人保健施設)には2025年1月より特定行為研修修了者が配属され、同年4月からは2名の特定行為研修修了者が勤務し、多職種連携の中で質の高いケア提供に貢献している。また、当施設では2025年3月より眠りSCANシステムを導入し、夜間の覚醒状況の可視化と客観的な評価に活用している。眠りSCANは、ベッドに設置したセンサーにより体動(呼吸、心拍など)を測定し、睡眠状態を把握するシステムである。これにより、利用者の生活リズムに合わせた効率的なケアや、体調変化の早期発見が可能となり、利用者と職員、双方の安心につながっている。本報告は、特定行為研修修了者が抗精神病薬の臨時投与を実施し、眠りSCANを用いた客観的評価を行った事例について述べる。
【目的】老人保健施設において、特定行為研修修了者が「抗精神病薬の臨時の投与」を実施し、その効果を眠りSCANシステムを用いて客観的に評価した実践を報告する。これにより、特定行為研修修了者の実践推進と、多職種連携における客観的評価指標の有用性を示すことを目的とする。
【方法】夜間不眠と大声による不穏が著しく、大部屋での生活が困難であった利用者A氏(106歳、女性、認知症あり)の事例を対象とした。2025年1月28日よりデエビゴ2.5mg2錠が処方されたが症状改善が見られなかったため、4月より特定行為研修修了者が介入を開始し、4月3日よりクエチアピン25mg1錠の内服を開始した。本介入の効果は、夜勤者の主観的評価に加え、眠りSCANシステムを用いて夜間の覚醒状況を可視化し、平均睡眠時間の推移を客観的な指標として評価した。
【結果】クエチアピン内服開始後の夜勤者からの主観的評価は「よく寝ていた」「静かな時間が増えた」という意見と、「変わらず大声が出ている」という意見が混在した。しかし、特定行為研修修了者の評価では、日中の覚醒状態に問題はなく、食事も3食摂取できていること、日中の声出しが減少し車椅子乗車中も静かに過ごす時間が増えたことが確認された。特に、眠りSCANデータでは、内服開始前の平均睡眠時間約4時間(3/30~4/5)に対し、内服開始後には約5.5時間(4/6~12)、約6.5時間(4/13~19)と睡眠時間が延長し、夜間の覚醒状況が改善したことが客観的に示された。この客観的データに基づき、クエチアピンの内服は継続となった。
【考察】抗精神病薬の効果評価は、対応職員の主観に大きく依存する傾向がある。特に、医師は夜間の様子や日々の細かなケアに直接関わることが少ないため、薬剤調整において現場職員の主観的報告に頼らざるを得ない。また、現場の看護職員や介護職員は、職種、経験年数、教育課程の違いから、同じ利用者の状態を見ても主観的な評価に差異が生じやすい。本事例では、眠りSCANデータを用いることで、夜間不穏に対する抗精神病薬の臨時投与の効果を客観的な指標で明確に評価することができた。これにより、多職種間での主観的な意見のばらつきがある中でも、特定行為研修修了者が根拠に基づいた判断をすることにより、利用者の睡眠の質向上に貢献できた。この実践は、特定行為研修修了者の専門性と、客観的評価ツールの導入が、多職種連携における共通認識形成と、より質の高いケア提供に繋がることを示唆する。
【結論】老人保健施設において、特定行為研修修了者による抗精神病薬の臨時投与は、夜間不眠の利用者に対して効果的であった。特に、眠りSCANを用いた客観的評価は、多職種の主観的評価の差異を補完し、特定行為の効果を明確にする上で極めて有用であることが示された。